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小説を書いてみた。

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ガラス瓶のこころ。

ガラス瓶の中に想いを詰め込んだ。 2年くらい前、友達と出かけた旅行先の、小さなアンティーク店にあった、ちょっと不思議なガラス瓶。 「この瓶は“想い”や”思い出”を風化させずに保存することができます」 お店のお兄さんが微笑みながら教えてくれた。どういう意味かわからなかったけど興味が湧いた私は、オルゴールと一緒に買ってみた。 「瓶はおまけにしますね」とお兄さんは意味ありげな顔で笑って言った。 家に帰って、瓶を机に置いた。どうしたらいいのか分からなかったけど、一人暮らしの

月と雨と。⑴〜僕の願い〜

昔読んだ本を思い出した。 結ばれるべき2人が、些細なきっかけですれ違い別々の道を歩むことになる、悲恋の物語。 本好きの君に薦められて僕も読んでみたが、はっきり言って嫌いだった。 どうして想いを伝えない?素直に行動しない? 一歩踏み出せば上手くいくのに「運命のいたずら」なんて言葉で片付けることが気に入らなかった。 でも。 これじゃあの本と同じじゃないか。 君の笑顔が欲しかっただけなのに、プライドに負けて素っ気なくして。 変に気を使って思っていることを言えなくなっ

月と雨と。⑵ 〜私のわがまま〜

昔読んだ本を思い出した。 切ない心理描写が美しくて、片想いの君にも読んでほしくて仲間内の会話の中でさりげなく薦めてみた。 「普段本あまり読まないんだけど」 一週間後、そう言った君の感想は、感傷に浸るどころか酷評だったけど、真っ直ぐな意見が眩しかった。 この人となら、きっとこの先ずっと一緒にいられると思った。 一緒が長くなるほど、君はどんどん素っ気なくなって。 「寂しい」はプライドが邪魔してうまく言えなくて。 静かな雨の夜、積もった思いをぶつけてしまった。 返す