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太陽の力で大陸を制覇!World Solar Challengeに行ってきた

皆さん、こんにちは。アデレード大学に留学中のイブキです!


世界で最も歴史があるソーラーカーレース

突然ですが皆さんは、オーストラリア大陸を縦に車で横断すると、どれくらいの距離になるかご存じでしょうか?


1000km?


1500km?


いえいえ、そんなものではありません。

答えはなんと3000km!

距離にして、日本の最北端(択捉島)から最南端(沖ノ鳥島)までを結んだもの(3020km)と同じくらいの長さです。

ということで、オーストラリアでは先日、北部のダーウィンから南部のアデレードまで延べ3021kmもの距離を横断するWorld Solar Challengeという大会が行われていました。

日本ではあまり知られていない大会かもしれませんが、World Solar Challengeとは太陽光を動力源として大陸を横断する世界最高峰のソーラーカーレースです。

2013年からはBridge Stoneがスポンサー契約を結んでいたり、過去には日本のチーム(ホンダ、東海大学など)が何度か優勝した経験があったり、何かと我々日本人にとってもゆかりのある大会です。

参加する国も様々で、欧州・北米・アジア・オセアニアなど文字通り世界中から多くのチームがこの大会の為にはるばるオーストラリアまでやってきます。

World Solar Challengeで競われるカテゴリーは大きく3つ(速さを競うChallenger Class、エネルギーの効率を競うCruisor Class、3021km制覇を目的としたAdventure Class)。

中でも大会期間中、一番の盛り上がりを見せるのはChallenger Classです。

同種目で今年1位に輝いたのは、ベルギーから参加したINNOPTUS SOLAR TEAM。大会期間中に記録した平均時速はなんと88.2kmだったそう!(JR在来線の普通・快速列車と同じくらいの速さ)

2-3位まではオランダのチームが独占。4位はアメリカのUniversity of Michigan。5位は日本から参加した東海大学という結果でした。

Cruisor Classの部ではオーストラリアのUNSW(ニューサウスウェールズ大学)が2位のUniversity of Minnesotaに大差をつけて優勝しています。革新的なデザインや環境への影響、運転のしやすさ(運転と充電)などが評価の理由となっているようです。

Cruisor Class部門で優勝を果たしたUNSW Sunswift 7のチーム
https://newsroom.unsw.edu.au/news/science-tech/unsw-sunswift-racing-claims-bridgestone-world-solar-challenge-victory-after-wind

World Soar Challengeが輩出したエンジニア達

そんな熱狂のうちに幕を閉じたWorld Soar Challengeですが、オーストラリアの広大な砂漠でここまで長い距離走れるような車をデザイン・開発することは一朝一夕にできるものではありません。

Bridge Stoneの公式サイトによれば、ソーラーカーを開発する上では空気力学、電気工学、電子工学など様々な科学分野の知識が求められるとのこと。

その為、World Soar Challengeは異分野的に活動することが出来るエンジニア育成の場として世界から注目されているそうです。

会場には、熱心に他チームの車を観察する他校のエンジニアや来場客の方たちが多くいらっしゃっていました。

中にはこの大会を通して自身のキャリアに結び付けたケースも。

有名なのはZipline(世界最大の無人ドローン宅配会社)にて働くCoco Wongさん。2015年にアデレード大学でチームを結成した彼女は、この大会をきっかけにテスラの採用担当者の方と知り合ってその後、テスラのエンジニア職に就職。

https://worldsolarchallenge.org/blogs/2023/10/21/why_solar_challenges_theyre_in_the_dna_of_tesla_google_for_starters

「大学の講義室で学んだスキルを使って現実世界の問題を解決する機会をエンジニアの卵である学生に与えてくれるのがWorld Soar Challenge。自分たちがデザインしたとっても小さな車が、道路を走る列車に追い越されようとしているなんて、とてもクールなことだ。」と彼女は話します。

資源供給地としてのオーストラリアとEV車

こうしたイベントの裏側で、会場では電気自動車(EV車)の展示会も行われていました。

MG Motor AustraliaやStillwell Fordなど豪州(アデレード)を拠点に強い販売力を持つ企業の数々。

1903年に創業し、南オーストラリア州を拠点に各種保険サービスとロードサービスを提供するRAA(Royal Automobile Association)の姿もありました。みなさん、電気で車を充電できる最新のテクノロジーに興味津々です。

こちらは、EV(Electric Video-Game)の力でエネルギーを充電中かな?

オーストラリアでは最近、EV車の普及率が高まってきていることも事実で2023年に入ってからはこの傾向が加速。

バッテリー式電気自動車(BEV)のシェアは過去1年程度の間に2倍以上に拡大していると見られ、中でもテスラのBEVが6月に5,560台を売り上げるなどトヨタのハイラックス(6,142台)に迫る勢いで販売台数を伸ばしているそう(日豪プレス)。

たしかに、肌感覚的にもオーストラリア国内ででテスラを見かける機会は多くなってきています。

今年の7月に出されたレポートによれば、オーストラリアでは2023年にEV車の販売台数が46,624台に達しているそうで、これは新しく売れた自動車のうち8.4%を占めるとのこと(Electric Vehicle Council)。

日本におけるEV車の販売台数も2023年上半期時点では2万2857台と全体の1.67%に留まっていますが、2022年通しての販売台数が約3万1600台だったことを考えると年々、かなり売れ行きは伸びていると言えると思います(東京電力エナジーパートナー)。

ですが、電気自動車の普及率をただ増やせば良いと言えるほど単純な課題ではないことも事実。特に資源小国の日本は電気自動車を製造する過程で他国の資源に大きく依存しなければなりません。

一方で資源がオーストラリアはEV普及においてとても重要な役割を担っている国の1つ。電気自動車を作るためには電池が、そして電池を作るためにはリチウムという鉱物が必要になるのですが、このリチウムを産出できるのは今のところ世界を見てもオーストラリアのみ(東洋経済Online)。

https://globalroadtechnology.com/lithium-mining-australia-history-top-locations-companies/

ボリビアのウユニ塩湖の下には世界の70%のリチウムが眠っているとされていますが、これは同地の景観を破壊することにも繫がることが予測されるので同地で採掘された資源を使おうとする自動車企業は少ないです。

また、電気自動車の開発にはコバルトの供給が欠かせませんが、今年に入ってから世界のコバルト産出量70%を占めるコンゴ民主共和国における人権問題が報じられています。

現在も状況があまり進展していないことを考えると今後数年間でオーストラリア(産出量は世界の8%)が果たすEV車普及への影響は大きいと言えそうです。

普段、生活をしていると忘れてしまいがちですが、私が住んでいるオーストラリアの土地の大半は砂漠。日本とはけた違いに大きな島(大陸)です。

World Solar Challengeに参加したい!
オーストラリアの広大な土地を見てみたい!

という方。

今後も留学ブログでは日々の生活の中で発見したオーストラリアの情報について発信していきます。

もし具体的なリクエストなどがありましたら是非教えてください。


今回のブログは以上になります!

大学のウェブサイトにおいてもブログを更新しておりますので、ご興味がある方は下記のリンクからご一読いただければと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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