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伝説の横断歩道 ロック名盤感想シリーズ①『Abbey Road』/The Beatles

ロックの名盤を聞き漁ることにした

 私はロックが好きだ。正確には、バンドサウンドが好きだ。最近ロックが衰退しているそうじゃないか。音楽シーンが移り変わること自体は結構だが、ロックを昔の音楽と決めつけて聴く機会が減っているとすれば、それはなんとももったいない話である。
 さりとてロックが好きと言いながら、私は全然ロックのことを知らない。Beatles, Rolling Stones, Pink Floyd, Oasisあたりは聴くけれど、本物のロックファンからしたら笑われてしまうだろう。なので文章力を磨くついでに、ロックの名盤を聞き漁ろうかと思う。ジャンル、時代、地域問わず、適当に気になったものを聴いていこうと思う。もしこの文章を見て、自分のベストロック・レコードをお勧めしてくれる方がいたら、ぜひ教えていただきたい。必ず拝聴しよう。
 初聴のアルバムと既聴のアルバムが混ざることになるだろうが、ご了承いただきたい。

『Abbey Road』/The Beatles

 誰もが一度は聞いたことがあるであろう名前、見たことであろうジャケット。音楽史にその名を深々と残した伝説のバンド、The Beatles。私も大好きである。
 この『Abbey Road』はビートルズの解散直前期に作られたもので、ほぼほぼラストアルバムといっても過言ではない。解散の理由については、複数あったりその実分からなかったりするので何とも言えない。しかしある一点で言えば、メンバー四人全員の才能がビートルズという器で収まりきらなくなってきたのだと思う。いわゆる『ホワイトアルバム(The Beatles)』の頃から、ジョンとポールのみならずジョージ、リンゴも己の才能を開花させ、アルバム内のまとまりを欠いてきた(その結果混沌とした名作が生まれはしたのだが)。それぞれが音楽的な発言権を得た結果、彼らは一人でもやっていけると思うようになってしまったのだ。
 しかし、この最後の『Abbey Road』がどうかと言えば、もう究極的な完成度である。有終の美という言葉がこれほど相応しいアルバムがあるだろうか。彼らは最後の最後にして、傑作を生みだし、それぞれ別々の道を歩み出したのである。

1. Come Together

 ジョンのナンバー。何といっても最初のドラム!アルバムの最初を飾るに相応しい素晴らしいものである。歌詞は意味分からないが、口ずさんで楽しいリズミカルなものである。刺激的だけどスルッといけちゃうナンバー。

2. Something

 ジョージのナンバー。超ド級の名曲ですよこれは。ジョージの曲って、いわゆるギタリストであるクラプトンとかジミヘンとかが書く曲と違って、ギターの主張が控えめな気がする。歌いながらリードギター弾くの大変だからすげえ分かるけど。で、待望のソロが最高なのよ!!『Taxman』とか『While My Guitar Gently Weeps』とかも良いんだけど、技巧的すぎたゆえに自分で弾けないという悲しい性を背負っていた分、今回のソロは沁みる…。歌詞もシンプルで良いね!この曲に加えて『Layla』も一心に受けた女性がいるとはにわかに信じがたいね。

3. Maxwell's Silver Hammer

 ポールのナンバー。最初聴いたときは愉快で、カン!カン!って音が何とも楽しげだなと思っていたら、歌詞こわっ…ってなる曲。最後のカン!カン!が、自分を狙っているようで怖ろしいです。この曲のポールの語りみたいな声結構好き。

4. Oh! Darling

 続けてポールのナンバー。『I'll never do you no harm』とか、さっきまで人の頭にハンマー叩き込んでた奴に言われても信用ないですけどね。しかし、この落差が癖になります。情けない感じのギターと狂ったピアノが良い雰囲気を出していますね。熱唱系のポールのナンバーも良いですよねえ。この曲が『Come Together』より短いことに最近気づいた。

5. Octopus's Garden

 リンゴ作。リンゴとジョージが一緒にこの曲作ってるのを『Get Back』で見てから、より一層好きになった曲でもあります。とにかく雰囲気が大好きですね。あと甲高いギターソロが良い。ノエルがやたら曲に挿入したがるのも分かるよ。あのフレーズ口ずさみやすくて最高だもんな。

6. I Want You (She's So Heavy)

 一曲目ぶりのジョンのナンバ―。ジョンがようやく2曲目ってことも初期からすれば考えられないですよね。でも最高にヘビーでクールな曲です。百万回擦られてるだろうけどベースが超セクシー。実は私はスラップとかやたら自己主張するベースは好きじゃないんだけど、これは最高。ギターも良いけどね。渋くて。ジョンのボーカルも良いよねえ…。芸術の域よこんなん。ビートルズが最後に四人そろって収録した曲らしいです。終わり方がプツン!って感じで怖くなる。

7. Here Comes The Sun

 前の曲の、底へ底へと沈み込んでいくようなアウトロから救い出してくれるようなジョージのナンバー。もうこのアルバムはジョージのもんよ。どろどろしたジョン・ポールの曲と、純粋なジョージ・リンゴの曲で交互に殴られて情緒がかき乱されるのに、どこか心地よいのがこのアルバムの魅力なんですよね。今までにあるようでなかったビートルズの曲、新たな生命の息吹を感じさせるような、希望の曲です。

8. Because

 ジョンの曲。急に哲学を始めるんじゃないよ。というのはさておき、コーラスがこの上なく美しい。初期のアイドル的なコーラスから、『Here, There and Everywhere』みたいな美しいハーモニーを経て、至上の領域にたどり着きました。このアルバムの一つの終わりでもありますよね。

9. The Long One 前半(You Never Give Me Your Money, Sun King, Mean Mr Mustard, Polythene Pam, She Came In Through The Bathroom Window)

 主にポールが中心となって作られたメドレー、それが『The Long One』です。最初に私がこれを聴いたときは衝撃を受けました。いわゆるコンセプトアルバムというのはMr.childrenの『深海』で触れていたのですが、この『The Long One』の特に後半部を聴いて、衝撃に打ちひしがれました。シングル主義的な日本の楽曲にはない発想です。
 とはいえプログレに見られるようなテーマの一貫性はありませんが、ビートルズの終作だと思うと何割増しで良いものに思えます。

10. Golden Slumbers

 ポール作。これから3曲がもう本当に素晴らしい。伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』をもともと読んでいて、この曲の存在自体は知っていました。名前の通り子守唄のようで、でも結構声を張り上げる部分もあるので寝れないだろとか思いながら、でも静→騒→静みたいな感じで曲が進むから、結局落ち着く。あと意外に歌いやすいんですよね。お風呂でよく歌ってた。

11. Carry That Weight

 こちらもポール作。リンゴも歌ってます。重荷を背負っていくんだ!というテーマが、私たち一人ひとりに言われているような気がするし、ビートルズという殻を破りそれぞれの道を歩んでいくことの決意表明にも思える。全曲の静かなる盛り上がりをそのままぶち上げて、雄大な雰囲気を醸し出してます。『You Never Give Me Your Money』のギターフレーズが入ってくるのがニクい!けど最高。

12. The End

 ポール作。メドレーの最後を、そしてビートルズの最後を締めくくるまさに『The End』な曲。前の曲の盛り上がりを引き継ぎ、やけくそとも言える感じで昇華しています。
 この曲はメンバー全員のソロがあるんですよね。リンゴの初のドラムソロから入って、その他三人のギターソロがセッション的に繰り広げられる。そして繰り返される「love you」。
 そして最後のフレーズ。

And in the end
The love you take
Is equal to the love you made.

The End/Lennon McCartny

 最後の最後でこんな「愛」について語れちゃうとこが恐ろしい。私だったら恥ずかしくてできない。でも許されますよね。宗教やサイケデリックな方面にも果敢に取り組んだビートルズからの最後のメッセージ、胸に刻まずにいられようか。

13. Her Majesty

ポール作。大団円を迎えたかと思いきや、最後最後でいたずらを仕込むと言う、『A Day in the Life』の時と同じようなこざかしさを感じます。でもこのジョークが挟まることによってふっと肩の力が抜けるような感じがします。メロディは綺麗ですし。でもどこか切なさというか、季節の終わりを惜しむような、そんな気持ちにさせてくれます。

総評

 わりと書くのに時間がかかって、今度からは全曲感想はやめようかなとか思っているわけですが、『Abbey Road』を振り返っていきました。文句なしの名盤でした。音楽好きな人はぜひ聴いてほしいですね。でも、Beatlesのキャリアを最初から聴いてほしいという気持ちもあるので、最初の一枚として進めたくないという葛藤もあるのですが。
 次のアルバムは初見のものにしようかな。候補としてはAC/DCの『Back In Black』とか、Yesの『Close to the Edge』とか。まあ気分によって適当に。それではまたいつか。ここまで読んでくださった方の音楽人生にロックの加護があらんことを。

 


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