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【感想】クワイエットルームにようこそ

2007年 日本
監督 松尾スズキ
出演 内田有紀
   宮藤官九郎
   蒼井優

あらすじ

目を覚ませば、知らない天井。通称「クワイエットルーム」と呼ばれる、隔離病室だ。フリーライターの明日香は睡眠薬の過剰摂取により昏睡し、自殺を図ったものとされて閉鎖病棟に強制入院させられていた。
自分は精神病なんかじゃない! と抗議するものの、許可が降りるまでは退院することはできないと一蹴される。しぶしぶ入院することになった明日香は、個性豊かな看護婦・患者たちとの交流を重ねるうちに、ゆっくりと自分の過去を思い返していく……。
今の時代では絶対できないブラックコメディ映画。

感想

ようこそシリーズ3作目は15年前の邦画から。

本当にギリギリのタイミングで滑り込んできた映画だったと思う。あと数年遅かったら「精神病棟を笑いにするだなんて不謹慎だ!」と非難され、そもそも公開すら出来ていないような気がします。今よりも世間が笑いに対して寛容だった最後の時代に生まれた作品です。

その肝心なコメディはどんな感じなの、って話なんだけど相当面白い! シュールな笑いって一つ間違えればめっちゃ寒いんだけど、本作では非常に上手く使いこなしていたと思います。恥ずかしながら、何ヶ所かは声を出して笑ってしまったシーンもありました。自然な感じで病院から脱走を図ろうとする着物のおばさんとか、めっちゃツボ。

あとは、台詞回しのセンスの高さ。2000年以降の邦画でもピカイチです。短くスッキリしたセリフが多いんだけど、どれも相当練られてるなと感じました。一番好きなフレーズは「俺生まれて初めてマトリョーシカがマトリョーシカであることに感謝しちゃったよ」です。

ストーリーも、私の好きなタイプの邦画って感じのじっとり感。くすくす笑える映画なのに、メインストーリーはめっちゃ重い。シリアスな部分はコメディとはきっちりシーン分けしているので、感情の底まで没入することができました。何もかも解決してハッピーエンドにするわけではなく、マイナス100がマイナス90くらいになる、みたいな終わり方も好み。

ただまぁ、こんだけ豪華なキャストをぶち込んでおきながらスレスレのラインを攻めている映画なので邦画界隈でも扱いが難しい作品だと思います。間違っても地上波で流せるような内容ではないので。評価と中身が良い意味で釣り合ってない映画。

そうそう、キャストについてはあまりに有名どころすぎるので、メインについては語りませんが、ピックアップするなら大竹しのぶさんと高橋真唯(現在は岩井堂聖子)さん。

大竹さんはやっぱイヤなババア役がよく似合います。覚醒剤で逮捕歴のある元AV女優で、趣味は新人いびり。字面だけで大御所にさせる役どころではないと分かるんですが、それでもしっかり熱演していて、すげえなこの人と思いました。高橋真唯さんは、単純に全盛期だと思うので見てほしいってだけです。ずば抜けてくっそ可愛い。透明感のある美少女とはまさにこのこと。

それではまとめです。キャスト・ストーリーともにハイレベルにも関わらず、時代に埋もれてしまった隠れた名作コメディ。ただ、コメディ映画だからと落ち込んでる時に見ると悪影響を受ける可能性もあるので、ご利用は計画的に。

以上、ようこそシリーズ3作目です、お疲れ様でした。

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