見出し画像

断崖絶壁の絶景を歩く。黒部峡谷下ノ廊下を歩いてきた【完】2018年開通前

前回は、半月峡~仙人谷ダムまで共有しました。
今回は、
仙人谷ダム→阿曽原温泉
までの区間を紹介します。これで下ノ廊下編は完結です。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・

関西電力仙人谷ダム管理所に入ると、目の前に親切なルートの案内があります。

右手のドアを進みます。

ダム管理所が左にありましたが、今回関電の方に遭遇することはありませんでした。

細いトンネルのような道を進みます。

トンネル内は明かりがあるのでヘッドライトは不要でした。

明かりがあるとはいえトンネル内で突然人間か何かが出てきたらびっくりしそうです。

温泉のような硫黄臭がしてきます。それに蒸し暑いです。

唐突に目の前に線路が現れました。と同時にものすごい熱気です。

ここが黒部ルートの上部軌道、いわゆる「高熱隧道」です。
温度計をみると、さっき外にいたときは15度前後だったのに、この場所は30度を超えてます。トンネル内は外から空気が入るようになってるのにこの温度です。

仙人谷ダムのトンネル開発で最初に掘り進めたときは通気口もないでしょうから、相当厳しい労働環境であったことが想像できます。この隧道工事で300名もの作業員の命が奪われたことを思い出しました。

「電車に注意」の看板と非常灯があります。黒部ルートの見学会もあるし、定期的にトロッコが通ってるんだと思われます。

前方に進むと外の空気がたくさん入ってきて少し涼しい。

ちょっと寄り道して線路の奥のほうに行ってみたらトロッコが置いてありました。トンネルはおそらく掘られた岩がそのまま露出していて、硫黄の析出物やコケやサビで他で見たことない複雑な模様になってました。

外の明かりが入るしトンネル内は広いので恐怖は感じませんでしたが、閉所恐怖症に人は怖いと思うかもしれません。

正しいルートに進みます。登山者向けの案内看板がしょっちゅう出てるので迷うことはありませんでした。

暗いトンネルを進みます。

硫黄の析出物らしきものが天井のヒビに沿って下に流れるようにこびりついてました。この様子だと鉄の構造物はすぐに硫化して使い物にならないだろうと思われます。(設置してあるパイプも塩ビ系の素材っぽかった)

鉄格子のドアをあけて外に出ます。このあたりも落石があるらしく野営禁止とありました。黒部峡谷の中でこんな平らなところは珍しいのにそれでも落石があるんですね。このルートで落石がない場所なんて存在しないのかもしれません。

広い場所に出ます。

左に関電宿舎があり人がいる気配がありました。こんな場所で住み込みでダムや発電所などの保守をしてくれてる人がいるんですね・・

ふたたび山に入っていきます。道の脇に大きな岩が寄せ集められてました。宿舎まわりに落ちてきた石をよけて置いたのかもしれないと思いました。

ここから登り。下ノ廊下で歩いた道のような滑落の心配がないのでリラックスして進めます。

リラックスして・・・

リラックスするどころか息の上がる急登が続きます。

ここを過ぎたらすぐに阿曽原温泉小屋に着くだろうと思ってナメてました。

登りきったところで矢印通りに右に巻いていきます。

権現峠のトンネルを通ります。照明はなく暗いけど長くないので、ヘッドライトがなくても問題なかったです。

ここから最後のトドメの急降下が始まります。ここでは太もも・ひざへの負担を考えると、ストックを使ったほうがよかったかもしれない。

ジグザグしながら下っていきます。岩が大きく足がかりしにくくて一歩一歩が大きくなります。

ヤブの中から青い屋根が見えてきました。とうとう阿曽原温泉小屋に到着です。

阿曽原温泉小屋では、美味しいカレーと源泉かけ流しの素晴らしい温泉を楽しむことができます。温泉は小屋から5分くらい下ったところにあります。温泉の写真は撮れなかったんで代わりに図解を載せておきます。

男女入れ替え制で1つの湯船を使います。屋根も囲いもない大自然のなかオープン脱衣をして、スノコに置いてある桶をお借りして体を洗って温泉に入ります。湯船は石でできてて少し深め。湯船の中で座ると肩まですっぽり湯につかる具合がちょうどよい。ドバドバ供給される熱めの温泉にひんやりした風の組み合わせが気持ち良い。目の前に黒部峡谷の絶景。
温泉は今まで色々なところに行きましたがここまで見渡しのいい開放的な露天風呂はなかなかないです。(女性用の露天風呂はたいてい囲われていて展望が少ない)風呂上がりのビールが最高でした。

・・・・・・・・

さて下ノ廊下はこれにて完結です。
翌日は阿曽原温泉小屋から欅平に向けて水平歩道という道を行くんですが、こちらは下ノ廊下に比べて通れる期間も長いし世の中にそれなりに情報があるので割愛します。
▼写真の中央に山を横に切った線のようなものが、水平歩道です。中央右あたりに粒みたいなの見えますか?それが人間です。

下ノ廊下、行きたくなってきたんじゃないでしょうか?長距離歩き続ける体力と登山の筋力と集中力が必要ですが、歩いてしか見られない景色がそこにあります。

※これらの記事はあくまで2018年9月の状況で、毎年、雪崩や豪雨で丸太でできた桟道やはしごが壊れたり流されたりして道の状況が変わるし、いつ開通するかも分からないので、阿曽原温泉小屋の登山情報を調べたほうがいいです。
質問あれば分かる範囲で受けるのでどうぞ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?