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ここんとこ学会の「医療倫理」の教育講演のテーマが臨床研究規制の話ばかりに偏ってる件

今週末行われる日本医学放射線学会秋季臨床大会のプログラムを見ていたのですが、ここんとこ放射線科関連の大きな学会の「医療倫理」の教育講演のテーマがずっと「人を対象とする研究・臨床研究に関する規制」についてなんですよね。

https://www.congre.co.jp/jrs58/program.html

軽く過去数回の春と秋の大会のプログラムを見てみたところ、ここ最近はやっぱりずっとそうでした。


研究倫理と、規制を遵守することによる手続的正義の確保はもちろん大事ですし、江草もこんなTogetterまとめ(↓)を作るぐらいには倫理指針の規制について興味はあるのですが、さすがにずっと同じテーマを扱うのはいくらなんでも偏りすぎではないかと思います。


当然ながら「医療倫理」というのはもっと多様で幅が広いものです。

目下のパンデミックにおける自粛と社会活動のバランスなんてまさしくとても難しい倫理的議論ですし、スコープを放射線科関係に限定したとしても、甲状腺癌スクリーニングの過剰診断問題とか、「患者希望で」として撮影される画像検査の是非だとか、偉い上司の先生の見落としレポートを見つけたらどうするのかとか、深夜に緊急IVRに呼ばれて寝不足の状態で翌日読影していいのかとか、実質現場にノルマ制を持ち込んだ画像診断管理加算の功罪だとか、倫理的に考えるべきことは多々あるでしょう。

あくまで研究倫理や倫理指針は医療倫理という広大な海のほんの一部にすぎません。


にもかかわらず、大きな学会の「医療倫理」の講演が延々と「研究規制のUPDATE」の話ばかりというのは、「とりあえず倫理なんてみんな興味ないだろうからコレをやっとけばいいだろう」という「やっつけ姿勢」が透けて見えてしまい、それこそ非倫理的な態度でさえあるように思います。

とくに「医療倫理」の講演の受講は専門医更新の共通講習の必須単位としても求められてるものです。
専門医として常にUPDATEすべき「倫理観」が、現場から比較的距離のある「研究倫理規制」の話を聞くだけで育まれると考えるのは、国民からの期待にも背くものではないでしょうか。


(ついでに付け加えると、そもそも朝7時半という早朝からの講演であるのもいくらなんでも非倫理的ではないかと正直思います)

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