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経営の神様は情熱にしか微笑まない

私はEXIDEAというグロースハックカンパニーを10年間経営している。
経営は本当に難解だと、つくづく実感する。

経営には絶対的な正解はない。必ずこれをすればうまくいくという確証もない。

ただ10年の中で気づいた、経営や事業を行う上で外してはならないポイントはある。
それは「社長が本気で情熱を注げる方向へ進む」ということだ。

このnoteではEXIDEAの10年間を私自身の失敗も含めて紐解きながら、
このポイントついて詳しく書こうと思う。

1 成功のイメージにあふれる創業期。

2013年、株式会社EXIDEAは京橋のマンションの一室からスタートした。
メンバーは、私と兄、父、友人の4人だ。

独立採算部門の長を務めた経験のある父がバックオフィスで守りを固め、
私と兄が、前線で手を動かしながらWEBメディア事業を立ち上げる。
そんな無駄のない精鋭部隊で、とにかく利益を出すことができた。

新しい仕事で売上がどんどん上がり、楽しくて仕方がない。
成功のイメージしかない。

それがEXIDEAの創業期だった。

2 事業も組織も右肩上がり。

創業期に立ち上げた4つのWEBメディア事業、
法人カード・実印・プロバイダ・HDDは
全て順調に立ち上がった。
創業1年目、メディアだけで月500万の売上が立ち、
後に4年目で2.1億円、5年目6億
までに成長していく。

2年目の時点でメンバーは10名ほど。
優秀なインターン生によって仕事がまわり、
そこから社員になってくれるメンバーも現れる。
事業も組織もいいことずくめだった。

この当時の私は、不遜ながら
「自分のやる事業は全てうまくいく」
と思い込んでいた。

外れる事業もあるとか、事業の種類によって成長の速度が違うとか、
事実としては知っていても、自分に当てはまるとは全く考えていなかった。

3 成長の中での心残り。世界を変える新規事業を。

順風満帆な経営の一方、当時の私は心のどこかで引っかかりを覚えていた。
当時の経営の状況と創業時の想いにずれを感じていたのだ。

EXIDEAという社名はもともと、「Excellent Idea」から来ている。
当時Googleを含めたシリコンバレーのスタートアップたちが、
独自のExellent Idea(卓越したアイデア)を元に、
世界を変革するような事業をしていた。
「私もExcellent Ideaで世界を変えるような仕事がしたい。」
そう思って創業したのがEXIDEAだ。

「メディア事業に加えて、さらに新規事業を立ち上げ幅を広げることで、
世界を変えられる可能性をもっと広げていきたい」
そう考えた私は、事業の多角化を進めていった。

事業の一つは、EmmaTools(エマツールズ)という自社開発のSEOコンテンツマーケティングSaaS。SEOマーケティングがどんな会社でも行えるように民主化し、グローバルなWebメディアを日本でも生み出せるようになることを狙ったものだ。

もう一つは、B2BとSaaS向けの総合型マーケティングコンサルティング。
この事業によって、大手企業の新規事業部門や、資金調達を実施したスタートアップ、IPO後のベンチャー企業などをクライアントとして支援することになった。

WEBメディア事業を柱に、SaaSプロダクトとB2Bという
かなり領域を広げた経営に踏み出したのだ。

4 不調の足音。薄れる手触り。

しかし、WEBメディア以外にも事業領域が広がったことをきっかけに、
少しずつ何かがおかしくなっていった。

何がおかしくなったのか、今ならわかる。
私がおかしくなっていたのだ。

創業時からEXIDEAは「メディアで一位をとる」というメッセージを発信してきた。
私自身そのメッセージから心が離れず、
事業を多角化することに心の底では折り合いがついていなかった。

だからこそ「メディアで一位をとる」に共感して入社を決めてくれた社員に対して、
・なぜメディアではない新規事業をスタートするのか
・EXIDEAはこれからどこに向かっていくのか
十分に説明できていなかったように思う。

また当時の私は、事業に直接携わる割合を減らしていた。
インターン時代から会社を支えてくれた仲間や心から信頼できる幹部に対して、最高の成長環境を提供したいと考えていたからだ。

ただ同時に、事業に関わらなくなったことで、
経営の手触り感はどうしても薄れていってしまった。

5 自分を守るための逃げ。

2020年度、EXIDEAは初めてのマイナス成長を経験した。
悔しいことに、マザーズへの上場準備を開始した直後のことだった。

表面的な原因はコロナによる不景気。

だが裏には、社長の私自身の問題があった。

当時の私は、挑戦をすることから逃げていたのだと思う。
失敗して「過去の成功で積みあがった自分の価値」が毀損されることが怖かったからだ。

だからこの時期の私は、事業に対して積極的に意見を言うことをしなかった。
社員たちに任せっきりになってしまったのだ。

「ロジカルに考えられる社員は私よりもすごい。彼らに任せよう。」
という思考で任せていたつもりだった。

しかし無意識下では、別の感情があったのではないかと思う。

自分よりすごい社員に「権限移譲を行い、任せる」という経営者として正しい判断をしているフリを自分に対してしていたのだと、今ならわかる。

そうすることで、本当は失敗から自分を守っていたのだ。

そのせいでEXIDEAの事業は落ち込むことになる。

6 放棄した社長の役割。

その当時社長としてやるべきだったのは、
ロジックを超えてやりたいと思えることを社員に提示することだった。

優秀な社員がロジカルに考える役割を担ってくれた。
対して私が本来負うべきだった役割は、
どの方向に向かって進めばよいか・考えればよいかの指針を示すことだ。

でも私はその役割を放棄してしまった。

その結果、指針を失ったEXIDEAの事業は、
市場が伸びているときは想定通り成長できたものの、
コロナによる市場の冷え込みとともに落ち込むことになる。

7 情熱を注げる方へ。これからのEXIDEA。

これまでの失敗経験から、「本気で情熱を注げる方向に進むこと」が大切だと学んだ。

社長が本当に進みたいと思っている方向と事業の方向が一致していないと、
必ずどこかで失速してしまうからだ。
そうならないために、まずは社長自身が自分の進みたい方向を自覚している必要がある。

私は今、改めて本気で進みたい方向を考え直している。

実現したいのは、
「EXIDEAのグロースハックで、世の中にとって必要なサービスが、
それを求めるユーザーの元にちゃんと届くようにすること」

そのために、メディアをはじめとした様々な領域の専門家が集まり、
また社外のパートナーとも連携した
グロースハックのエコシステムとも呼べるような組織をつくりたい。

そして支援するのは、本当に価値があるとEXIDEAが認めたサービスだ。
そのために思い切って支援する領域もしぼりたい。
人の欲望をかきたてるサービスではなく、本質的に人や企業にとって必要な、「温かみのあるサービス」のみを支援したいと考えている。

例えば現在みているのは、
・生活インフラ
・ライフイベント
・健康
・BtoBサービス
・日本が世界に誇る製造業
・グリーンテック
などの領域である。

今度こそ本当に、情熱の注げる方向へ進み続ける。

   

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