モーセは、モアブの草原から、ピスガの頂きに登った。
神は彼に見渡す限りの土地を見せ、こう言った。
「私が、アブラハム、イサク、ヤコブに『あなたの子孫に与える』と誓った土地はこれである。
　私はこれをお前に見せたが、お前がこの地を渡っていくことはできない。」
こうして、モーセは神の導きによりこの地モアブで死んだ。
そしてモアブの谷に葬られた。
イスラエルの民は彼のために、30日間嘆き悲しんだ。

モーセの死後、神はモーセの従者、ヨシュアに告げた。
「私のしもべモーセは死んだ。
　今、お前の民はみな、このヨルダン川を渡り、約束の土地へ行け。
　おまえの一生の間、誰一人としてお前の前に立ちはだかる者はいない。
　私はお前とともにいる。
　見放すこともなく、見捨てることもない。
　強くあれ、雄々しくあれ。
　私が誓ったあの土地を民に受け継がせなければならない。
　恐れてはならない。おののいてはならない。
　おまえが行くところどこでも、お前の神はお前とともにある。」

ヨシュアは民たちの長に伝えた。
「民に命じなさい。
　『食糧を準備しろ、と。
　　3日のうちに、あなたたちはヨルダン川を渡るからだ。
　　あなたがたは神が約束したあの土地を占領するために進むのだ。』」

ヨシュアは、二人の者を偵察として遣わした。
「さぁ、エリコの土地を見てきなさい。」
彼らは、ラハブという遊女の家に入り、そこへ泊まった。
すると、エリコの王の下にイスラエル人がこの土地を探ろうとして入ったと
密告する者が現れた。
王は、ラハブの下へ使いをだし、男たちを差し出せ、と言った。
しかし、ラハブは二人を匿ってこう述べた。
「その人たちは確かに私のところへ来ました。
　しかし、どこから来たのかは私は知りません。
　暗くなり門が閉じられる時、その人たちは出ていきました。
　どこへいったのかはわかりません。
　急げば彼らに追いつくことができるかもしれません。」
彼女は、二人を屋上の亜麻の茎の中に隠していた。
追手は、ヨルダン川を渡り、すぐに門は閉じられた。
彼女は二人に告げた。
「この地の者はあなたたちに対する恐怖に満ちています。
　なぜなら、あなたがたがエジプトから下ってきてからしてきたこと全てを
　皆が知っているからです。
　今、神にかけて誓ってください。
　私が誠意を尽くしたことをお分かりのはずです。
　あなたがたも、誠意を尽くし、私の家族またはこれに属する者を
　全て生かして、この命を救い出す、と誓ってください。」
二人は言った。
「私たちは命にかけて誓う。
　あなたがたが私たちのことを誰にも告げないのなら、
　神がこの地をくださるときに、あなたに誠意と真実を尽くそう。」
これを聞いて、ラハブは、彼らを綱を使って窓から吊り降ろした。
「山の方へ行ってください。
　追手と出くわすことのないように。
　彼らが引き揚げるまで、3日間そこに身を隠しておいてください。」
そこで、二人は彼女に伝えた。
「見なさい。私たちはこの土地にいづれ入ることとなるでしょう。
　私たちを吊り下ろした窓に、この赤いヒモを結び付けて置きなさい。
　そして、一族全員をあなたの家に集めておくように。
　あなたの家の中にあってはその人間はその身を護ることができるでしょう。」
二人は、ラハブの言葉どおりにし、無事帰途に着いた。
そして、全てをヨシュアに話した。