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34歳で末期癌になった話#2

転院した先の医師から進行癌は根治しません、と、はっきりと冷静に告げられ、5年生存率が10%であることももれなくついてきた。
どうやら遺伝子異常による事が原因で、エクソン19という部分の欠失であった。
5年後、39歳、40歳を迎えられずに死ぬのかと漠然と想像するも全く実感のない想像に到底理解などできずに言葉だけが残った。
3年前に結婚し、2年前に家を買い、仕事も充実してきたこのタイミングで、数年後に人生が終わるかもという理不尽な現実。とてつもない虚無感にかられ、何のために今まで生きてきたのかということまで考えだしてしまう。

この圧倒的に理不尽な現実に屈すると、
何をしてもどうせ数年で死ぬのだなどと思ってしまうし本当に生きる気力が無くなってしまう。
しかしながらこの理不尽さをそのまま受け入れられる訳もなくだんだんと腹が立ってきた。
ふざけるな、死んでたまるかという気持ちと生きることへの執念が徐々に湧き上がってきた。
標準治療と治験という選択肢を提示されるものの、イマイチ詳細の説明が分かりづらく不親切な態度の医師に先に妻が苛立ちを露わにして少しヒヤッとした。
ステージ4たいう進行具合では、手術を受ける事が出来ないらしく、内服薬による通院治療が一般的とのこと。分子標的薬という、抗がん剤とは異なり異常を起こしている細胞だけを狙い撃ちする薬らしい。しかし治験の内容もよくわからないままだったので
仕方なく友人に実に4年ぶりのLINEを送り、久しぶりという挨拶の後に信じられないくらい重い相談を持ち掛ける事となった。
小中の友人は放射線科医となっていたので早速病院から貰った画像のCD-Rをそのまま渡して相談に乗ってもらった。久しぶりの連絡がこんな話でさぞ驚かせてしまったが忙しい中呼吸器の医師にも意見を聞いてくれて治験を勧められた。
どのようにデザインされた治験で、どういう効果を検証しようとしてるか、主治医より丁寧に説明してくれたお陰で迷わず治験を選択できた。
とはいえ、新薬の組み合わせに当たるかどうかは2/5の確率である。まぁ仮にそこに当たらずとも標準治療が無償で受けられるので自分の引きに賭けてみた。
結局は新薬の組み合わせのA群には当たらず、標準治療の経口内服薬で治療がスタートした。
副作用という恐怖はすくなからず頭にこびり付いていたがやってみなくては分からないし、分子標的薬は抗がん剤より副作用が少ないということも聞いていたのであまり考えずにおくことにした。

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