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#準公務員

 博覧会協会に入って最初に話があったのは「協会職員は準公務員に準ずる立場なので認識して欲しい」という事であった。つまり公人として行動しなければならないし、私的利益の為に公的立場を利用する事は汚職にあたるという事だ。

 それは意外に早い段階で認識する事ができた。万博会場はに出入りできる業者は限られるので、協会として入札や選考審査で指定業者を選んでいた。私はそういった選考プロセスに関与する立場ではまったくなかったが、もともとは食料ビジネスをやっていたので愛知の食品卸などをやっている昔の客先から、「博覧会協会に出向したんだって?会場内に出入りできる指定業者にするよう取り計らってくれない?」というコンタクトが結構あった。そういった業者から「帰国祝い」や「名古屋赴任・協会出向歓迎会」の名目で料亭で一席もうけてくれるというお誘いも頂いた。しかし皆さんには「心遣いは感謝するものの、立場上接待は受けられない」と丁寧にお断りしなくてはならなかった。

 万博から逸れるが昨今の黒川高検検事長のスキャンダルについて、当時まったく指定業者を選ぶ権限もなく協会の役職でも上位でもない私ですら歓迎会名目の接待をも断っていた。賭けマージャンは悪いとは思わないが、法の番人という立場上「賭け事は一切しない」「(新聞社の手配した)車には乗らない」「政治家とは親しい関係にならない・一線を引く」といった自分の職務に対するプライド・矜持・心構えは高検検事長たるもの、持って然るべしと思う。勿論汚職とかのリスクは少ない立場にあったが、万博協会のホストと海外VIPを接遇する以上、それは協会を代表する顔であり、ひいては日本を代表しているという緊張感はずっと持っていた。

 会場ができるまでの間は、協会の東京事務所に勤務しており、当時の飯野ビル、霞が関・経済産業省の目の前にあった。主に通う必要があるのは経済産業省、外務省と各国大使館だったので場所は便利だったし、ずっと「民」だった私にとっては「官」の霞が関の空気は初めてで新鮮だった。ただ決定⇒実行のプロセスが民と官では相当違うので、いろいろ戸惑う事も多かった。民はまず未完成でも発進して、走りながら修正を加えていく感じだが、官は実行に移す前の準備が長く、走り出したら決めた事は変えないという感じ。それとフラットとは程遠い階層=ヒエラルキーのしっかりした組織なので、そこには神経を使う必要があった。

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建設中でもVIP受入れ。パプアニューギニアの初代首相、建国の父と言われるマイケル・ソマレ首相が建設中の会場を訪問、アテンド。すぐ後ろは豊田章一郎会長。

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チュニジア大使をご案内

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出展参加国への説明会で説明をしている私

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