緑豊かな環境や景観で価値を創り出す
こんにちは!早くも週末ですね。
今回は、今年、オランダで開催されていた国際園芸博覧会についてお伝えします!4月14日~10月9日の約半年間、オランダのアルメレで国際園芸博覧会が開催されました。私たちも7月頃に現地を訪れましたので、感じたこと、2027年にも取り入れたいことなどをお伝えできればと思います!
博覧会のテーマは”Growing Green Cities”。「2050 年までに、世界人口の約68% が、地球の表面積のわずか 2% の都市に住むことになる」というメッセージを踏まえ、都市生活に着目し、「都市」をキーワードに、緑化・食料生産・健康・エネルギー源という視点で4つのサブテーマを設定しています。
オランダで最も新しく誕生した都市 ‐ Almere
アルメレは、アムステルダムの東約30kmの位置にあります。
第二次世界大戦後の人口爆発を受けて、1968年にランスタット*の住宅供給のために干拓されてできた都市です。
*ランスタット:アムステルダムやデン・ハーグ、ロッテルダムなどのオランダ国内の主要都市を含む、西部に位置する政治・経済の中心となっている地帯。オランダの総人口の約45%を擁する。
「オランダで最も新しく誕生した都市のひとつ」とも言われ、1970年代に人が住みはじめ、それ以降はアムステルダムの近郊住宅都市として成長を続け、現在では約20万人が暮らす都市になっています。
アムステルダム中央駅から電車で約30分、赤い点線で囲まれたところがアルメレです。
「新しい都市」と言われるだけあり、アムステルダム市内の建物とは全然違う雰囲気でした。残念ながら、街中をぶらぶら歩く時間はありませんでしたが、駅前から博覧会会場に行くまでの街並みは、緑も豊かで、人も多すぎずゆったりした街、という印象でした。
Almere 2.0: From Garden City to Green City
アルメレに人が住み始めてから約30年、2006年に、再び、アルメレは、ランスタットの人口増加に伴う問題に向き合うこととなり、オランダ政府は「2030年までにアルメレの人口を2倍にする」という目標をたてます。
その際に「アルメレは、4大都市(アムステルダム・ハーグ・ユトレヒト・ロッテルダム)に囲まれた都市。それらの中でアルメレを際立たせていくためには戦略的な都市計画が必要だ。」ということで、様々に議論がなされました。
最終的に、「アルメレの豊かな景観づくりは、都市に住む多くの人が切望する、自然と接するための機会やスペースをたくさん提供してきた。そのような都市開発のやり方が、アルメレの成長にとって重要な資産になっていた。」ということがわかり、2009年にアルメレ成長のビジョンを”Almere 2.0: From Garden City to Green City”として発表しました。
ビジョンの中では、「施設では太刀打ちできないが、緑豊かな環境では太刀打ちできる」ということを強調しており、例えば、同じオペラ劇場でも、アルメレのオペラ劇場は、海と森に囲まれた屋外の劇場なので、とても独特な雰囲気がある”オペラ劇場”として価値がある、という考え方です。
正方形のグリッドで区画割された会場
実は、アルメレは、このビジョンを一緒に創り上げたパートナーの建築会社MVRDVと協力し、国際園芸博覧会を主催する提案をオランダ園芸評議会(NTR)に行ったところ、2012年に見事、採択され、国際園芸博覧会の開催を実現させました。
博覧会会場のマップをみると、正方形の区画がいくつも見えます。この会場のマスタープランはMVRDVが設計しましたが、なんと、この1つ1つの区画も含め、博覧会の後は、会場が「Hortus」と呼ばれる 660 戸の住宅街に変わります。一番下に「Hortus Avenue」とあり、将来の街を見越した設計であることがわかりますね。
マップ中央にあるビル(90と記載のある場所)は、博覧会後に集合住宅になる予定です。会場で唯一の高層ビルでした。博覧会期間中は、1階が博覧会の事務所とカフェとして利用されており、2階より上の一部住宅は、国内外から参加する出展事業者に貸し出していたそうです。
また、マップ左側にある「98」が大学、「100」が高齢者用施設となっていますが、こちらは博覧会期間中から開業しており、博覧会後も同じ用途で利用される予定です。
このように、MVRDVが設計したマスタープランは、一時的な博覧会会場ではなく、「博覧会が開催される場所から開発されていくアルメレにおける、既存の市内中心部にある緑を拡張するための青写真」と一連のものでした。
博覧会後がスタート
2027年の開催地である「旧上瀬谷通信施設」も、会場予定地を含めた約242haが、将来的には1つの「まち」になります。
開催自治体の横浜市では、2020年3月に「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画」を策定し、郊外部の新たな活性化拠点の形成を図ることとしています。
博覧会会場は、上瀬谷地区の自然特性を生かすとともに、将来のまちづくりや公園整備と連携することを前提としていますので、アルメレも参考にしつつ、「博覧会は終わりではなく、スタート」という気持ちで博覧会に取り組んでいきたいと思います!
ゆったり楽しむ空間づくりのために
さて、話が長くなりましたが、最後に、2027年の国際園芸博覧会でも参考にしたいと思った見どころをいくつか紹介します!
ちょっとした休憩スペース+イベント+飲食=憩いの空間
会場には至る所に、休憩スペースがあり、そこに飲食とイベントスペースがくっついている、という構造が多かったように思います。結果として、人が集まって賑わっている雰囲気は出しやすかったのではないか、と思います。
賑わい演出が素敵だったドイツ政府出展
一番の賑わいだったのではないかと思ったのはドイツ政府出展です。会場入り口近くにあるのもありますが、展示だけでなく、レストラン(イートイン+テイクアウト)と小さなイベントスペースを併設した空間だったのが良かったのではないかと思っています!
子ども向けスクール、子ども庭園・農園
残念ながら、視察時には実際に子供たちの様子は見られなかったのですが、子ども向けのスクールと庭園・農園がとても素敵だったので、これはぜひ横浜でもやりたい、と思っています!
番外編 ~視察の合間に訪れた場所~
せっかくのオランダ出張でしたので、博覧会会場だけでなく、周辺にも足を延ばしてみました!観光で行っても楽しめますので、ご予定がある方は是非、参考にしてみてください。
Het Park@ロッテルダム
前回の記事で触れましたが、1960年に初めて国際園芸博覧会がオランダのロッテルダムで開催されました。その会場跡地が、現在はHet Parkという公園になっており、ロッテルダムで最も古い公園として親しまれています。トリップアドバイザーでも高い評価でした!
Wester Park@アムステルダム
ガス工場の跡地が公園になった場所です。いくつかは当時の施設もそのまま活用しながら、レストランや映画館、ギャラリー、イベントスペース、ビール醸造所、ライブハウスなど、様々な文化施設が公園内に点在しています。街の文化的原動力の 1 つになっていて、自然とエンターテイメントが合わさった、1日を通して楽しめるスポットです。広すぎて半分しか観れなかったのがとても残念でした!!