うずらを轢いたことはあるか

こんにちは。FUKUです。
もう秋ですね、今日は少し変わった話を。
寝れない夜をさらに惑わせるかも
苦手な方は気をつけてください

過ぎた台風

少し前、大きな台風が日本列島を直撃した
「伊勢湾台風なみだ」と言われていたが、実際にはそれほどではなく、けれど物凄い力を持ってやってきた。

研究の調査でお世話になっている村も、台風がかすっていった。

街では「あれは大きかったね」と台風一過の挨拶を交わす程度で、すぐに日常のレールに乗っていく。

けれど村は土砂崩れに、道路寸断に、床下浸水に、、、日常から程遠い現実が待ち受けていた。

電話で事情を知った僕は、帰省先から急いで新幹線に乗って、車を走らせ、村へ行った。

「ボランティア」なんて言えるものではない。「ただ心配するだけの人間」になりたくなかっただけだった。だから動いた。


道中にて

別府に着いたのは夜。急いで準備して就寝。
翌朝早くに起きて、軽ワゴンを走らせる。

別府からは村までずっと田舎道が続く。

道中も、焦る気持ちを落ち着かせながら運転していた。阿蘇より手前、まだ大分県内だったろうか。片側1車線ずつの、道幅の広い直線。対向車はときどき、どこからともなくやってくる工事車両と地元の軽トラくらい。村のことを思うとBGMなんてかけられず、またラジオも雑音が入るから流せず、ただ仕方なくエンジン音だけが響いている。

そのときだった。

タタタタタタタタ! @@@@!

道の左側から小さな何かが車めがけて走ってきた。気がした。
いや、木の葉かもしれない。茶色っぽかったし。
でも変な音したぞ、もしかして・・・

すぐに車を路肩に停めて降り、走って戻ってみる。
嫌な予感ほどよく当たるというものだ。
そこには横たわる一羽の鳥がいた。
とても小さな、茶色と黄色の間の色の鳥。ヒナに見えなくもない。

狩猟免許の勉強で、何十種類の鳥を勉強していたから、すぐにわかった。
これはうずらだ。

検索したら画像が出てくるはずだ、かわいらいい奴。
ペットにもされたりする。卵は中華丼の定番だ。
その、うずら。

手に拾い上げる。
まだかすかに息がある。
だが次第に弱っていく。
そしてついに僕の手の中で、息絶えた。

ゆっくり瞼を閉じた【それ】はふわふわしていた。
僕はどうすることもできず、草の中に寝かせ、手を合わせた。

車を運転していれば、轢かれた猫やウサギや蛇に出くわす。
けれど、自分で轢いたのだ。

この居心地の悪さ。

そして

僕は人を助けるために車を走らせた。
そしてその車でうずらを殺してしまった。
「悲しみ」と「気分の悪さ」の狭間で、しばらく放心していた。

話に続きはない。
その後、崩れかかった道を通って目的地に着いた。
手伝いに行ったはずが助けられてばかりで自分の無力さと人々の逞しさを垣間見た。
そして再び、別府に帰った。

同情が欲しいでもないし、動物愛護者でもない。
ただの出来事の話。


 *死んだ野生鳥獣をむやみに触るのは控えたほうが良いかと思います。人間に感染する病原菌を持っている可能性があるので。
*また触った場合にはすぐに手を洗うよう。決してその手で粘膜に触れないように。





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