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Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第7話 出会い

 それでも日常はダラダラと流れ始めていく。僕のグダグダな高校生活はトボトボと歩き出す。

 満開の桜が舞い散る通学路を歩いているのだが、その桜の花びらでさえも雪国の吹雪に感じられた。

 今日の放課後は図書部員の委員会があるので校内図書館へとやってくる。すでに上級生は来ていて指定された席へとついた。

「ようこそ東栄図書館へ、図書委員長の3年A組雪村奏《ゆきむらかなで》です、これから1年よろしくね」優しそうな黒縁メガネの先輩が挨拶した。

「副委員長の3年B組宮代亜美《みやしろあみ》です、私は生徒会も掛け持ちなので出てこられないこともありますが、よろしくお願いします」ショートカットで頭の良さそうな先輩が挨拶した。

「えっと、2年D組の太田充《おおたみつる》です。忙しくてなかなか出て来れないけど、よろしくお願いします」茶髪の不思議なキャラクターだ。

「同じく2年D組の石崎真凜《いしざきまりん》です、よろしくお願いします」少しロリっぽい可愛い人だ。

「1年C組の樹神星七《こだませな》です、よろしくお願いします」とりあえず頭を下げる。

「1年A組の遊木茉白《ゆうきましろ》です、よろしくお願いします」黒髪の眼鏡っ子で胸も豊かだ。

カワイイ………そして初々しい………どこの誰かさんとは全く違う。よかった図書館は唯一の僕のオアシスになるかもしれない、そう何となく思った。図書部員は各学年から男女1名ずつ選ばれるのだ。

 感傷に浸っていると、2年の太田先輩が立ち上がった、

「ごめんなさい、締め切り間近で………」そう言って帰る準備を始めた。

「真凜ちゃんもいいよ、後は僕がやっておくから」雪村先輩はニコニコと二人を見送る。

「じゃあ私も生徒会があるのでゴメンね」そう言って宮代先輩も慌ただしく出て行く。

 僕と遊木さんは不思議そうにその状況を見守った。

「びっくりしたでしょう?」雪村先輩が微笑む。

 僕と遊木さんは何度も瞬きした。

「太田君は人気ラノベ作家なんだよ、締め切りが近いから大変なんだよ。真凜ちゃんも手伝ってるから帰ったら二人で追い込みなんだと思うよ」

「えっ、ラノベ作家なんですか?」僕は驚いて思わず聞いてしまう。

「ああ、ペンネームは亜斗夢《あとむ》さんで、頑張って書いているよ」

「え〜!あの亜斗夢さんなんですか?」僕は慌ててこの前買ったラノベを2冊カバンから引っ張り出し指差した。

「おっ、樹神くんは亜斗夢のファンだったの?」

「はい、大好きです」

「そう、じゃあその本を見せたらサインしてくれるよ」微笑んだ。

「ほ、本当ですか?」

「うん、でも滅多に出て来れないけどね」雪村先輩は笑った。

 横で見ていた遊木さんもクスクス笑っている。

「えっ、遊木さんは知ってたんですか?」不思議に思って聞いてみる。

「はい、知ってましたよ。私文芸部の先輩に知り合いがいるので亜斗夢さんの事はよく聞いてました」

「そうなんですか………」僕は自分だけが知らないんだと思うと、少し恥ずかしくなった。

 その後は雪村先輩が図書部員はどんな事をするのか丁寧に教えてくれた。僕は何となく理解して今後の状況を何となく想像でき、少しだけ落ち着く。

「今日はこれで帰っていいよ、来週から少しずつ作業を手伝ってくれたら助かるなあ」そう言って手をふってくれた。

 図書館を出ると、遊木さんが僕に声をかけてくれる。

「ねえ樹神君、文芸部に行ってみない?私たち図書部員は文芸部への出入りが自由なのよ、それに文芸部には色んな情報をもらわないといけないし。だから顔を出しておこうよ、私の知り合いもいるし」

「そうですか、わかりました、是非一緒に連れて行ってください」僕は頭を下げる。

 おお、ラッキー!遊木さんから誘われるなんて幸せだなあ………僕は心の中でニヤニヤした。素敵だ、やっぱり誰かさんとはおお違いだ。

 文芸部は僕の入りたかったクラブ活動だ。思えば結果的に上手く行ったのではないだろうか、何となくそう思った。二人は文芸部へとたどり着く。そしてドアをノックしてゆっくりと中へ入る。

「こんにちは、今度図書部員になった1年の遊木茉白です、よろしくお願いします」ペコリと会釈した。

「同じく1年の樹神星七です、よろしくお願いします」僕も横に並んで会釈する。

「「「いらっしゃい!これからよろしくね」」」みんなにこやかに迎えてくれた。

「おっ!茉白じゃん、よろしくね」何処か茉白ちゃんに似ている綺麗なお姉さんは2年の先輩らしい。

「みんな、茉白は私の従姉《いとこ》なんだ、よろしくね」みんなに紹介している。

「私、赤松佳《あかまつけい》、よろしくね樹神くん」手を差し出す。

 僕は恥ずかしそうに握手をする。それから僕と遊木さんはみんなとしばらく雑談した。文芸部を後にすると、学校を出て駅へと向かった。

「樹神君てどこへ帰るの?」歩きながら遊木さんが聞いてくる。

「僕は吉城寺《きちじょうじ》駅に帰ります」

「うそ!私も吉城寺駅だよ」目を大きく開いて驚いている。

「え〜!そうなんですか?僕は南口から全幅寺公園の方です」

「そうなんだ、私は北口の方だよ。もしかしたら毎日会えるかもね」微笑んでくれている。

 え〜!毎日会っても嫌じゃないって事ですか?それって僕のことが嫌な印象ではないって事ですか?そう受け取っていいんでしょうか?僕の心はピコピコとバスケットボールのドリブルのように跳ねている。

 東仲野《ひがしなかの》から電車に乗り吉城寺へと到着する。

「じゃあまた学校で!」そう言って遊木さんは北口へ消えていった。

僕はまたニヤニヤしながら南口を出ると自宅へ向かう。

「なんか、高校生活も悪い事ばっかりじゃないかも」思わず独り言が漏れる。

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