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隠れ家の不良美少女 210 希和の部屋

奏太くんと未来ちゃんが希和の家へやって来た、ドキュメンタリーで希和の生活を撮るためだ。

「「お疲れ様です」」
「お疲れ様で〜す」希和が恥ずかしそうに微笑んだ。

「早速希和ちゃんのお部屋でインタビュー撮影いいですか?」
「いいけど…………恥ずかしいなあ………」
「結構くるものがあるよ……」俺は奏太くんに心の準備を促す。
「大丈夫ですよ」奏太くんは未来ちゃんと希和の部屋に入る。

「「…………………………」」奏太くんと未来ちゃんは言葉を失って立ち尽くした。

「どうしたの?」希和は不思議そうな顔で見ている。

「マジですか?…………」奏太くんは次の言葉が出て来ない。
「希和ちゃん!」未来ちゃんは目を潤ませた。

6畳の和室に古い小さな本棚とこたつがあるだけだ。
壁も時代感を醸し出している。
半開きになった色褪せた襖は更に哀愁を感じさせた。
押入れの中にはハンガーが吊り下げられ地味目の服が掛かっている。
下の段にはプラスチックの箱でシャツや下着などがうっすらと見えている。

「これが今話題のキナコちゃんの部屋なの?」未来ちゃんは涙ぐんだ。

壁に制服が掛かっている。
希和がよく着ている制服は退学した高校の物だ、しかし普段着として大切に着られている。
その事を理解した未来ちゃんは希和に抱きついた。
「希和ちゃん、いろんな事に耐えて大変だったのね……」
「えっ?」希和はキョトンとしている。
「そんな事ないよ、お母さんに大切に育てられたし幸せだったよ」
「そうなの?」
「それに、今はお小遣いも上がって月に5万円だよ」自慢げに言った。
「キナコちゃ〜ん……うっ……うわ〜……」未来ちゃんの涙腺は崩壊した。

「友希さん、もしこれが演出なら僕はやり過ぎだって怒りますよ、でもこれが真実なんですよね」眉を寄せた。

「だから言っただろう」俺は二人に微笑んだ。

キナコは部屋で子供の頃から学校を辞めるまでの事を淡々と話した。
奏太くんと未来ちゃんは涙を堪えながら撮影している。

やがて話は最近の音楽の事になった。
別の部屋に移動するとピアノとギターがある。
キナコの練習風景が撮影された。

無事に日頃の希和が撮影されると、次にK Kステージへと向かった。

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