見出し画像

隠れ家の不良美少女 223 対決

長谷川さんと友里香さん、そして俺はサンライズプロダクションのビルの前に来ていた。既に電話で訪問する事を伝えてある。
三人はそれぞれに緊張した表情でビルの中へ入る。

受付で「SONEレコードの長谷川です、東堂社長にお会いしたいのですが」そういうと、受付は確認を取って社長室へ案内した。

俺はひっそりと深呼吸をした。

「中へ入るとおおきな机の後ろで膝を組んで椅子にもたれている東堂が見える。

「久しぶりだね長谷川ちゃん、まあ座って話そうよ」東堂は太々しく笑った。
油ぎった顔はテカテカと光っている。
業界のドンと言われるだけあって、強烈な圧迫感を感じる。
四人はソファーへ腰を下ろした。

お茶が運ばれてくる。

「東堂社長、お久しぶりです」長谷川さんはゆっくりと話始める。

「私は随分と歳を取りましてキナコちゃんが最後の仕事と思っております、どうか最後の花道を無事に歩かせて頂くわけには行きませんか?」

「そうかい、じゃあ私もその花道を艶やかにしてあげようじゃないか」太々しく笑った。

「やはりそっとしておいてはいただけないようですね」長谷川さんは大きく息をすると徐に言った。

「SONEレコードの社長と協議した結果、もしキナコに何かあった場合、東堂社長の関係している事務所の全ての歌手やアーティストとの契約を今後一切更新しない事に決めました」

「なんだって!それで無事に済むと思ってるのか!」東堂は眉を寄せ不機嫌そうに言った。

「私の最後の仕事です、私はあなたと刺し違えて死ぬつもりで今日伺いました」

「私と戦うという事はSONEレコードも相当な痛打を受けると言う事だがね」さらに不機嫌そうな顔で長谷川さんを睨んだ。

俺は今こそタイミングだと思って長谷川さんを援護する。

「私は東京ドームのイベントをやっています、そしてその主催者は大東新聞です、昨日松川大作氏と会いました。彼はキナコに味方すると約束してくれました。あなたがキナコに手出しをしたら新聞であなたを叩くと言ってます。そしてあなたがウイングに電話したあの会話は録音されてました、あの会話は殆ど恐喝ですよね」俺は東堂を睨む。

東堂はフンと鼻を鳴らした。
「松川大作がお前ごときに力を貸すもんか、笑わせるな」不気味に口角を上げる。

「キナコのスポンサーで株式会社マサキの社長は経済連合会の役員です、彼が松川大作に話してくれました。そして電話の録音も渡すように段取りしてあります」

「なんだって!このクソガキが」東堂は俺を睨みつける。

友里香さんが口を開く。

「東堂社長、私は前総理大臣の渡辺大次郎氏と仕事をさせていただいてました、そして息子である渡辺実氏とも仲が良いんです、彼は今法務大臣です、あなたの身辺をを調査するよう約束してくれましたよ」友里香さんは睨みつけた。

「小娘まで調子に乗りやがって」東堂は不機嫌さを増してテーブルを叩いた。

「東堂社長、私とキナコを引き合わせてくれた親友のお父さんは東京地検特捜の幹部です、そして貴方の事務所を捜査してくれると約束してくれました。貴方の積み上げて来たものは間も無く崩れます、どうか早く対処された方がよろしいかと思われます」

「なに、地検特捜が来るだって!」東堂は焦った。

しばらく考えると徐に言った。
「ここまでコケにされたんじゃあこのまま君らを返すわけには行かないな」不適な笑みを浮かべる。

友里香さんは少しだけ笑った。

「東堂社長、このビルの斜め前をご覧ください、白いワゴン車が2台駐車してるはずです、地検のワゴン車です、ご確認されてはいかがですか?」

慌てた東堂は秘書に確認させてガックリと肩を落とす。

「私たちがここにきて45分経過してます、もし1時間過ぎても私たちが出て来なかったらすぐに捜査に入ってきます、東堂さん貴方の築き上げた物は…………後15分で崩れますね」友里香さんは微笑んだ。

東堂はガックリと椅子に崩れ落ちた。

「分かった、私の負けだ!キナコには今後一歳手を出さない、約束するからすぐに出ていってくれ」

「東堂さん、貴方は突いてはいけない藪を突いたんですよ、その藪にはキナコという大蛇がいたんです、どうかお大事に」友里香さんは最後に一言告げて微笑んだ。

三人はサンライズプロのビルを出た。

それを確認した白いワゴン車は走り出す。

運転席を見るとサングラスをした奏太くんが手を振った。

後ろのワゴン車を運転していたのはやはりサングラスをした匠真くんだった。

「えっ?」俺は間抜けな声を出してしまった。

「保険かけといて良かった〜」友里香さんが笑った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?