日記2024/03/10 江の島

 江の島に行った。空が広かった。海がすぐそこなのにぜんぜん磯臭くないのはどういうことだろう。

 さる御方の格言(スマホで写真を撮ってると浅ましい現代人に見えるが、一眼レフを担いでおれば立派な文化人に見える)を胸に、さいきん買った望遠レンズをひっつかんで家を出たが、本体にメモリーカードを挿し忘れていたのでスマホを使った。かれこれ五年くらい使って型落ちに型落ちを重ねたiPhoneXSである。すぐ充電が切れる。同じだけ使ったスマホケースもボロボロになり、端の方では糸がほつれ、写真を撮ろうとするとレンズの前に垂れ下がって邪魔になる。切らねばと思っているがいつも忘れる。なので今から切る。
 切った。

ザンギリ頭を叩いてみれば、文明開化の音がする

 江の島大橋から富士山が見えた。あれが富士山であると言われたときは冗談だと本気で思った。担がれているのだと疑った。まさかこんなところから、あんなに大きくはっきりと富士山が見えるわけなかろうが! 県境をまたいでるんだぜ。おい、俺は天才だぞ。そのくらいわかるって。

 しかしながら富士山であった。

 富士山は実は存在しない。我々がみておるのは空間に投影されたホログラムだ。とかなんとか主張する陰謀論未満の妄言は一時期話題になっていたが、そう信じてしまうのも無理のないことだと思った。あまりにも現実味がない。東海道新幹線に乗ってすぐそばを高速移動しているときより、よほど大きく見えるではないか。どういうことだ。ムチャクチャだ。

 江の島は思ったより楽しかった。『ぼっち・ざ・ろっく』にも登場した例のバカデカいタコせんも食べた。ソースが欲しくなる味だった。

 サムエル・コッキングなる人物が作ったとかいう温室の跡にも入った。レンガ造りで、いい感じに暗かった。明治・大正辺りに来日したよくわからん西洋人のよくわからん遺物は、この世で一番おもしろいものの一つだ。地元にはそういうのが山ほどあったから、それを思い出すこともある。

 さらにその近くに「マイアミビーチ広場」なる場所を見つけ、何言ってんだお前と思って行ってみたところ、小さな展望台があるだけで、マイアミっぽいものは何もなかった。藤沢市とマイアミビーチ市が姉妹都市になったことから作られたらしい。ラジカセ担いだグラサンの男とか置いとけよ。

 とかなんとか文句を垂れつつ、ソフトクリームを食ったり、「江の島シーキャンドル」に登ってみたりしてまあまあ楽しんだ後、帰りがけ、再び富士山の方をみてみると、ちょうど富士山のある辺りだけが雲に覆われ、山体が隠れてしまっていた。

 やっぱりホログラムなんじゃないのか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?