見出し画像

『くさや』

ユニークで魅力のある干物「くさや」について、ご紹介します


「くさや」は伊豆諸島でのみ製造されています。

その独特な香りと旨みは、好きな人にとってはくせになる美味しさです。

ただ、なれない人にとってはなかなか馴染めない個性あふれる食材です。


〈目次〉
1. 「くさや」とは
2. 「くさや」の歴史
3. 「くさや」の製造方法
4. 「くさや」の食べ方  

1.「くさや」とは
くさやは、その昔、離島の厳しい日々の暮らしの中から生まれました。

大切な食料であった魚をより長く保存するために、桶の中の塩水に漬け込んで干し、干物にしていました。

塩や水はとても貴重であったため、一度使った塩水に塩を足しつつ何度も漬け込みを繰り返すうち、魚の成分から微生物が発生・作用し、塩水が発酵、ついに独特な香りと味をもった「くさや液」が出来上がります。

この「くさや液」の手入れは、主に女性が日々培ってきた感覚で維持・保存されてきました。まさに、「ぬかみそ」の手入れに近いと言えます。

「ぬかみそ」の味がその家の嫁さんの腕で決まるように、かつて、「くさや液」は島の嫁入り道具のひとつになったほどでした。

また、「くさや液」は古いものほど良いとされ、二百年以上前から手入れ保存されているものも存在します。

くさやは、良質のたんぱく質、カルシウム、アミノ酸などが一般的な干物に比べて豊富です。

特にカルシウムはあじの開きの20倍以上あり、骨や歯の形成、皮膚炎にも良いとされています。

発酵菌の効果もありビタミンB群も豊富で、疲労回復や体を若返らせる効果が期待できます。

2.「くさや」の歴史
江戸中期以降、塩は特に高価で、大島は古来、水にも乏しかったので、幕府への献上品であった塩干魚は一回漬の塩水を使ったものが献上されていました。


一方、何度も漬けた塩水、いわゆる「くさや液」を使った干物「くさや」は自家用や島内供給用として食されていたそうです。それでも、一部の「くさや」が江戸に運ばれることもあり、江戸っ子の中にもファンがいたようです。

3.「くさや」の製造方法
くさやを製造している業者は、伊豆大島の南部、波浮港地区に集中しています。


波浮港の「とび魚」や、三宅島近海であがった「アオムロアジ」を、女性たちが手際よくさばきます。くさやづくりには新鮮な魚が不可欠なのです。

さばいた後は井戸水で魚をよく洗い、いよいよ秘伝のくさや液に漬込みます。

「くさや液」に漬けるのは、男性の仕事です。魚が重ならないようにと確認しながら、手で一枚一枚液に漬けこみます。

漬け込んだ後は、水洗いをし、乾燥させて完成します。特に十月から春先にかけての天日干しは最高です。

くさや液は、毎日継ぎ足して使っていきます。魚を漬けすぎても液はダメになるし、その逆でもダメなのだそう。ぬか漬けと一緒で、毎日いい塩梅で手を入れていく必要があり、手間がかかります。



4.「くさや」の食べ方 
独特な香りと芳醇な旨味溢れる「くさや」は、島焼酎はもちろん、白ワインとの相性も抜群です。

貴重な「くさや」はコアなファンを中心に、今後も愛され続けていくことでしょう。


以上



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?