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KIKIAU KOTONO ENERUGII #27

       脳出血後の世界


予想もしなかったことが起きてしまいました。

娘の叫び声に、ただ事ではないことを察知した私は
ナースコールを押しました。

看護師さんが到着した時には
娘は何事もなかったように戻っていましたが
私の呼びかけに、全く反応しませんでした。

娘の意識はありましたが
娘には何も見えていないかのようでした。

検査の結果は脳出血でした。
娘は酸素テントに入り
一日の大半を眠っている状態でした。

時折、目を開けて私を見た時の表情が
何故かよそよそしく
違和感を感じていましたが
意識が戻っていないせいなのだろうと思っていました。

娘が好きだった、ポケモンのCDを部屋に流してみたり
娘の横に添い寝をしたり
手足をマッサージしたりして
3日ほど経った頃に
娘は意識がはっきりして来た様子でした。

「誰かわかる?」
「リスだ!」そう言って私を指さしました。
ふざけているのではないことが
娘の表情でわかりました。

「シロクマだ!ライオンもいる、怖い!」
そう言って布団に潜ってしまいました。

脳の混乱により
娘の記憶は全て失われていたのでした。
そして、娘には動物の世界に映っているようでした。

親がいることも、病気で入院していることも
自分の名前も何もかも思い出せませんでした。

それでも私は娘が生きていることに
感謝の気持ちが湧きました。
私を思い出さなかったとしても
娘が寂しがらなければ、苦しまなければ
私はそれで十分でした。

娘の記憶が戻らなかったとしても
私は覚えているから。
あなたを妊娠した日
生まれた日
初めて歩いた日
ママと呼んでくれた日
病気になった日のことを。

そして、何があっても
ずっと一緒、ずっと忘れない。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。またの訪問をお待ちしています : )