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#ja11yc の6時間が有益すぎてかぶりつきで視聴してきた話

Japan Accessibility Conference Vol.2に参加してきた。(当日のTwitterハッシュタグが#ja11ycだったのでタイトルに使わせいただいた)

Japan Accessibility Conference(略してJAC)は2年前にはじめて開催された、日本国内最大級のアクセシビリティにまつわるカンファレンスである。

JAC 公式ページの配色は、白地に黒文字、アクセントのスラッシュは赤(もちろん色覚に配慮した、だいだい色に近い赤!)であるが、私のブラウザは普段からダークモードのため、SSを撮ったら黒文字に白文字だった。反転してもかっこいいデザインなだけでなく「ロービジョンで普段から白黒反転されてブラウザ利用される方のことを考慮されまくってる…!」と気づく人のほうが少ないようなアクセシビリティ配慮に気づいてしまい参加前から興奮気味だった。

Japan Accessibility Conference 当日

当日(2019/07/20)のカンファレンスは土曜日にもかかわらず参加者が300人以上という、さすが国内最大級と謳うだけある規模感。

カンファレンスのタイムテーブルも3つのカンファレンスが同時に開催されるため、フェンリルからはWebエンジニア1名とシニアデザイナー、私と3人で手分けして全カンファレンスを網羅する計画を立てて挑んだ。

すでに他にもまとめがたくさん上がっているが、このnoteは私が聞いたカンファレンスを簡単にご紹介するとともに、私が感じたことや新しく知ったことなどを織り交ぜている。そのため主観が入りまくっているので、カンファレンスの詳細な内容を知りたい方はYoutubeの公式動画を見ていただきたいと思う。

D-1 精神・発達障害者の社会へのアクセシビリティ

グリービジネスソリューションズ 福田社長による、54名中健常者が7名だけという、ぼほ発達障害者(特に精神発達障害)が75%を占める特例子会社をどのように運用し、驚異の離職率13%を実現しているかというお話。

断る仕事を決める

多様性を許容し特性に対する環境の配慮=断る仕事を決める

精神発達障害の人はちょっとしたことがストレスになって継続できなくなるので、断る仕事を先に決めておく。

× 納期短
× 納期必達
× TEL対応

など。

こまめにどのような特性を持っているか1on1など面談をし、発達障害の方のさまざまな多様性に対して、物理的な環境面だけでなく、精神面や成長に配慮した施策をうってらっしゃるのが印象的だった。特に特グリー本社で実施している基礎研修はすべて実施するなど、特例子会社だからと分けるのではなく企業の成長と障害者の雇用促進を同時に実現して雇用問題に立ち向かっていこうという姿勢が見えた。

それでも、特例子会社は悪みたいな風潮はある

SNS で発信していく上で障害者雇用の誤解があるらしく、質問していた聴覚に障害がお持ちの方も「この話を聞くまでグリーに対して悪いイメージしかなかった」と言っていた。しかしながら福田さんは今後も社内の細やかなフォローや設備投資に対してこういうイベントやコンサル、SNSも含め積極的に発信することで、このようなイメージや現状を打破していければとおっしゃっていた。

D-2 色弱の私が色が大事だという話

CUDO 伊賀さんによる色弱のお話。伊賀さんは1型2色覚、色弱、色覚異常と呼ばれる赤と緑色が見分けにくい特性を持っている。ちなみに色覚になんらかの特性を持っている人は日本人男性の20人に一人、全国で320万人。この数字は静岡県の人口とほぼ同じ!

ユニバーサルデザインで対応すべきとなった時に必ず言われる

色が見えない人がいるなら色以外の情報で説明しておこう

は、果たしてそれでいいのか、という投げかけを色覚特性を持っている当該者がエクスキューズする話だったこともあり、食い入るように聞いてしまった。

例えば、3色に色分けしてあって(色覚特性だと2色にしか見えないが)、それが3種類あったすると、色覚特性の人には見えないボタンが発生する。種類が多い場合は文字で補足してくれていても字で判断しなければならず、判断が遅れてしまう。例えば信号機で考えると、青黃赤が文字だと判断が遅れるが、色だと遠くても判断できる。(実際に信号機の色適用にご協力されたらしい)

その他、色覚特性で3色のものが2色しか見えないなどに対して、普通なら不良品としてクレームが出るはずだが出ない。なぜなら色覚異常は自分のせいだと思ってしまう人が多いからという話はなるほどなと思ってしまった。私自身、日々ユニバーサルデザインの活動をしているが、実際には相当な数が存在しているはずなのになかなか色覚特性を持っていても言い出す方が少ないため、デザインでも配慮不足や認識不足が蔓延している現状があるように日々感じている。

伊賀さんによると、実際には色が見分けられなくても、いろいろな状況で色によって「楽しい」「美しい」「わかりやすい」を判断しているので、色は大事だと伝えていきたいとのこと。私自身も、デザインでわかりやすさに配慮する場合、つい色以外の情報だけで伝えようと考えてしまいがちだが、色も含めて総合的に設計することが大事だと改めて思った。

色の名前がわからない

これだけは止めてほしいことの一つとして、マニュアルで「赤い部分を押す」など表記は、色の名前がわからない人たちにとって困るのとのこと。それ以外にも、白・黒・赤(濃いめ)の配色も多いが本当に真っ黒に見えるので、危険色に赤は使わずだいだい色に変えてほしいとのこと。

先日JIS規格の安全色や安全標識もロービジョンや色覚特性に合わせてリニューアルされているが、改定後の赤は確かにだいだい色に見える。

その他、欧米の方のほうが色覚特性を持っている割合が高いのだが、サッカーのユニフォームが緑と赤で、色で見分けられなくてテレビで苦情が殺到した話やパズルゲームでの色覚に配慮したモードの話などを、とてもわかりやすいだけでなく、時には面白おかしく伝えてくださったことが印象的だった。

D-3 障害者専門のクラウドソーシングサービス「サニーバンク」の取り組み

株式会社メジャメイツ上濱さんが創業され、株式会社カクテルズ 伊敷さん(ロービジョンのエンジニア)がアドバイザーとして参画している、障害者専門のクラウドソーシングサービスのお話。

このお話のパワーワードは間違いなくこれ。

障害者が稼ぐ=日本が潤う(税収とか)

障害者の仕事=一般事務などの誰でもできる仕事と思われがちだがそうではない。障害者だからわかること、障害者だからできることを仕事にすることで付加価値をつける。それは特殊技能なので、一般の人よりお給料が高くなるはず。あと、全国にいる障害者が働けば税収がアップして少子高齢化にも対応できるからいいとこ取り!という、理論に膝を打った。

特殊技能の例えで出てたエピソードも面白い。今治タオルの品質を指先で確認するお仕事の人で、全盲で点字を読んだりと指先の感覚が鋭敏になり、タオルの織りを触っただけで肌触りの品質チェックが出来るらしい。なんという特殊技能!

D-1のグリーさんのお話の中で、最近はゲームのQAみたいな仕事が増えてきているらしく、それも誰も気づかないような細かい違いを瞬時に嗅ぎ分けるような人が精神発達障害には多いからとか。なるほど、これも特殊技能。

もうひとつ面白いなと思ったのは、

障害者が思わず手に取るお酒=氷結!

言わずもがな、氷結は缶を触ったら氷結だって形状でわかるから。こういう当事者目線ニッチな需要のアドバイザーとして、障害者という専門性が十分に雇用があるだろうとのこと。

こういった視点で、雇用問題を考えたことがなかったので、この驚きの連続だった。

サニーバンク アクセシビリティ診断

ここから伊敷さんにバトンタッチ。クローラーで企業サイトのソースコードを解析してアクセシブルかどうかチェックする方法などがあるが、実際に障害者の方々にチェックしてもらえるほうが企業は喜ぶため、アクセシビリティ診断サービスをサニーバンクとして提供することに。

これにより、アクセシビリティにかかわる障害当事者を増やすだけでなく、例えば20年努めているけれど一向に給料が上がらない、外資系企業にいったがやることがないというような障害者あるあるのようなものを減らしたいという。

アクセシビリティにかかわる障害者を増やすための施策として、2019年3月、5月に視覚障害者を対象に座学とワークショップ 合計3時間を開催(受講者合計:8名)実際に、サニーバンクのサイトを診断を実施したりと、実地研修を行っているとのこと。

今後の計画として、全国各地で講習会を開催(したい)、現在は持ち出しなのでクラウドファンディングなども検討したり、e-ラーニング機能の追加していきたいなど、具体的に実現できるものを模索しているようだった。

他にも、開業freee、会計freeeと連携したり、クラウドサインと連携と新たな動きもあるとのことで、我社でもアクセシビリティのチェックを外注できるのではと感じるなど、とても興味深いセッションだった。

B-4 シビックテックとアクセシビリティ

UDトークの製作者である、シャムロックレコード株式会社 青木さんによる

テクノロジーを活用してインクルーシブな世界を!

がテーマのセッション。

ちなみにUDトークとは、iOS/Androidアプリで、マイクを通してリアルタイムに字幕に表示したりと会話を見える化してくれるコミュニケーション支援アプリ。導入件数:400団体、DL数:43万本で、同時通訳機能もあり、今回のJapan Accessibility Conferenceでも、すべてのセッションで導入されている、アクセシビリティ業界ではもはやスタンダードとなりつつアプリだ。

テクノロジーはコミュニケーションの課題を解決できる!

「インクルーシブな環境で隣の人と会話できますか?」という問いに、「テクノロジーがあれば解決できます!」と力強くおっしゃっていた。これは青木さん自身が初めて耳が聞こえない人と出会った時に、

・言ってることはわかる、でも言いたいことが伝わらない。
・伝わらないのは自分が十分にコミュニケーションできる手段をもっていないから

と気づき、これがUDトークを開発しようというきっかけになったとのこと。

障害者かどうかは数で決められていて、健常者の自分(青木さん)が色弱者や全盲の人たちだけに囲まれた瞬間「俺がマイノリティ!」ってなりましたと言ってらっしゃったのが印象的だった。

UDトーク は同時通訳機能の中に大阪弁変換機能があり、大阪弁変換時のアイコンはたこ焼きになっていたりと見た目でわかるような工夫もあり、遊びココロも満載。私も普段から愛用しており、こういうカンファレンスやセミナーの場合、字幕がそのままログになったりととても便利なので、興味があるかたはぜひダウンロードしてみてください。

D-5 Webアクセシビリティのスキルがビジネスへと繋がる時代

株式会社ミツエーリンクス アクセシビリティ部マネージャー 中村きよちかさんと株式会社コンセント インクルーシブデザインチーム 秋山さんによる、Webアクセシビリティをビジネス化するためのノウハウなんかを教えてくれた話。

アクセシビリティができる環境にしていく

中村さんは最近WAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)の委員長になったとのことで、今はご本人の知名度を上げていくのを頑張ってらっしゃる様子。

もともとミツエーリンクスさんは、アクセシビリティが出来る環境にして頑張った会社でアクセシビリティに特化したサービスをリリースして、ブランド強化のためにBlogやセミナーなど情報発信をし続けている。最初はコストが合わないけど、現在は認知向上とニーズの拡大によって、ミツエーリンクス自体の認知度はあがったとのこと。

Webアクセシビリティをビジネスに変えていくにあたって、今からの参入は遅くないどころか参入障壁が下がっている上、案件は多数あるためビジネス化しやすい状況がある。ビジネスに繋げていくには、まず仕事場(会社)をアクセシビリティができる環境にしていく。どう頑張ってもダメならそういう人材を必要としている会社に行く!と割り切るのが大事らしい。

アクセシビリティをビジネスに繋げていく最短の道

ここからは、コンセント秋山さんのセッション。アクセシビリティをビジネスに繋げていく最短は「制作」以外の人のコミュニケーション。最初のほうから経営者層が入っていることが重要と強調されてた。あと直取引じゃないとなかなか大変とのこと。さらに、アクセシビリティを活かすにはビジネススキルも必要で、会社の方向性や売りたいものを明確にして、経営層が自ら参加してくれるようにならないとなかなか社外にも伝わらないとのことで、理解を得た上で上流から巻き込んでいくのが重要だと再確認した。

できる案件を「つかむ!」 or 「ひきよせる」ことが大事

キーワードは
知る、組む、言う、つかむ。

アクセシビリティは理解してもらうことや最初の一歩が難しいと感じられるかもしれないが、この4つをきちんと続けていくことがビジネスにつながるとのこと。これはアクセシビリティに限らずどのビジネスでも一緒だろう。

最後にお二人から語られたパワーワードとしては、

なによりも、
自分自身が、
(アクセシビリティに価値があると)「信じろ!」

と、最後に力強く訴えてらっしゃった。

私も現在ユニバーサルデザインやアクセシビリティを社内に浸透させてビジネスに繋がるように日々取り組みをはじめた立場となっているが、いま自分が舵取りしている方向が間違ってなかったと信じられて、自信を得ることができたセッションだった。

最後に

どのセッションも面白く6時間があっという間だった。おさらいも兼ねて仕事中にYoutubeで音声だけ聞いたりしたのだが、メモを取り切れていない新たな発見もあり、また見れなかった他のセッションもエンジニアが今から使えるWebアクセシビリティのTIPSやノウハウも詰まっていたりと大充実だった。

特にWebアクセシビリティを取り入れる側の苦労と、実際に導入のために手を動かす側の苦労が同時に聞けたり、さまざまな障害を持った当事者の方々に一度に同じ質問に答えてもらうようなものが成り立つのは、このJapan Accessibility Conferenceだけかもしれない。

今後もVol.3、Vol.4と続くことを願うと同時に、この先、我が社がセッションスピーカーとして立てるぐらいWebアクセシビリティを熱心に取り組める会社にできればと思う。




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