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12億円の調達を完了しさらに拡大するFacilo。不動産業界の変革と展望を代表の市川が語る

先日シリーズAの12億円の資金調達を完了したFacilo(ファシロ)。プロダクトマーケットフィットが見え始め、スタートアップとして次の段階に進もうとしている。前回のインタビューから1年。Faciloをめぐる景色はどのように変化したのか。創業者であり、代表の市川紘さんに話を聞いた。

PROFILE
CEO 市川 紘さん

リクルートからアメリカに渡り、シリコンバレーの不動産テック企業MovotoのCFOとしてM&Aによるイグジットを牽引。日本に帰国後、株式会社Faciloを創業し、不動産コミュニケーションクラウドFaciloを2023年2月にローンチ。休日は公園で走り回る5才と3才の子供を追いかけて奔走し、帰りに自分へのご褒美として趣味の日本酒を買うのが日課。

リリースから1年。Faciloの歩みを支えた不動産会社の生の声

本題に入る前に、あらためて市川さんにとって「不動産」はどのような存在なのかから伺う。

「祖父が不動産会社の経営をしており、自身が立ち上げた会社で都市開発を行っていたので、不動産は身近な存在でした。その後の就職活動に影響を与えたわけではありませんが、私の原風景と不動産は切り離せないものです。リクルートに入社後、住宅情報(SUUMO)を扱う部署に配属されました。実は私の父はコピーライター。不動産広告という仕事は、奇しくも祖父と父の仕事の間のような存在で、不思議な縁を感じます」

リクルートでサービス作りのために行ったインタビューが、その後の市川さんのキャリアのテーマの礎となった。

「たくさんの人の家にまつわるストーリーを聞くうちに、不動産の仕事がひとりひとりの人生の基盤となる商材に関われるやりがいのあるものだと感じるようになりました。この時の感覚が、今のプロダクトづくりにも活きています」

Faciloのリリースから1年。リリースからこれまでにどのような変化があったのだろうか。

「不動産会社さまのお声にプロダクトを育てていただいたと感じます。利用してくださる不動産会社さまが増え、生の声がどんどん届くようになりました。そこには、私たちが気づかなかったリアルな課題やアイディアが詰まっています。会議室で頭を捻って考える仮説よりもずっとリアルで、価値のあるお声を反映することで、プロダクトを進化させることができました」

リリースからこれまでに、不動産会社の声をもとに500件以上の改善を行ってきた。その改善は、UIから、不動産会社の営業の深い課題に直結するものまでさまざまだ。

「例えば、価格が下がった物件をタイムリーにご案内しやすい機能を追加しました。これにより、不動産会社さまの営業であらたな顧客接点を作ることができました。これまで、主に新しい物件が出た時にエンドユーザーにお知らせしていたのが、価格が下がった時にも行うことができるようになったのです」

Faciloの存在が、業務効率化だけでなく不動産会社の営業そのものに影響を与えた好例である。このような本質的なプロダクト作りにより業界にファンが増え、その業績は順調だ。

「ここまで、かなり順調に業績を伸ばしてきました。業界から応援していただけるだけでなく、日本ならではのイノベーションの起こし方に心を砕いた結果だと考えています。アメリカ帰りの私が立ち上げる不動産テックと言うと、“黒船”のような破壊的なイメージを持たれがちですが、日本でそのやり方をしても業界に受け入れていただくのは難しい。国、既存企業、スタートアップの3者の歯車がちょうどよく噛み合うのが日本らしいイノベーションだと思います。Faciloも既存の仲介会社とのコラボーレーションを重視した結果、業界から期待をかけていただいています」

仕事は学びや出会いのための『機会』。それを大切にするFaciloの文化と制度

事業の成長に伴い、これからのFaciloは組織の拡大も行なっていく。まず、現在の組織はどのようなものなのだろうか。

「現在の組織は、経営メンバーの元同僚だけで構成されています。しかもトップパフォーマーかつ、ポジティブな方を選りすぐった少数精鋭のチームです。プロフェッショナルが揃っているので、それぞれが信頼し合い、自律的に働いています」

今後は、この組織をさらに拡大していくつもりだ。

「2024年末までに全部で約70名になるように採用を行う予定です。2025年の4月末には100名を目指し、その後も倍々で規模を拡大していくつもりです。Faciloを導入する不動産会社さまをどんどん増やすためにはセールスが、その方達にプロダクトを使いこなしていただくにはCSが、そして、拡大するニーズに合わせて開発するのでエンジニアが必要です。全てのポジションで採用を行なっていくつもりです」

その組織を支える文化には、市川さんの経験に基づく「仕事観」が溢れている。

「『働く機会を最大化する』ことを大切にしています。起きている時間のおよそ半分を仕事に充てると考えると、それが稼ぐための義務だと感じていては虚しいばかりです。働くことは、学びや新しい出会い、やりたいことを叶える『機会』であってほしい。私が会社をやるからには、労働を提供して賃金を払うだけでなく、従業員に対してたくさんの『機会』を提供したいと考えています」

この信条から、さまざまなFaciloらしい制度が生まれた。その一部を紹介していただく。

「働くことを『機会』だと捉えると、その『機会』の制約になり得るものが見えてきます。例えば、場所や時間。Faciloでは、完全リモートワークかつ、コアタイムなしのフレックス制を導入しているため、場所や時間の制約を受けることなく働くことができます。また、子育てに代表される、家族やパートナー、自分自身のケアには、給与ありの特別休暇を有給休暇と別に設けました。これにより、有休の残り日数を気にすることなく大切な人をケアしながら働くことができます」

この他にも、全社員への人間ドックの提供など、仕事という「機会」を全力で使うためのFaciloの制度を挙げればきりがない。これからもそのための文化と制度が充実していくだろう。

シリーズA、12億円の大型資金調達。これからのFaciloが目指すもの

周知の通り、Faciloは12億円の第三者割当増資によるシリーズAの資金調達を完了した。リード投資家にはグロービス・キャピタル・パートナーズを迎え、Coral Capital、Angel Bridgeが名を連ねる。市川さんはこの資金調達をこう振り返る。

「プロダクト、チーム、事業の成長スピードだけでなく、不動産DXというテーマへの期待が表れる大型の資金調達となりました。また、不動産会社さまへのインタビューなどを通し、定量的な売上だけでなく、定性的な品質を汲み取り評価していただいたことも嬉しかったです」

この資金調達により、Faciloの経営基盤はさらに盤石なものになった。

「前回の資金調達から現在までは『あと何年サバイブできるか』を考えながら経営や採用を行ってきました。今回の資金調達を終え『いかに成長していくか』を考える次のフェーズを迎えられました。現在のFaciloは、スタートアップならではのワクワク感と、安定した資金のあるベストな状態だと言えるでしょう」

日本の不動産業界に変革の兆し。売却仲介向けプロダクトでさらに強度を増す

「次のフェーズを迎えた」という言葉どおり、市川さんはFaciloによる日本の不動産業界に変革の兆しをすでに感じていると言う。

「Faciloを利用している不動産会社さまからは、その存在が売上やビジネスを後押ししたという喜びの声をいただいています。例えば、ひとりで会社を立ち上げた方が、Faciloを使うことで売上を伸ばし、従業員を採用したというお声。大手不動産フランチャイズの加盟店様が、Faciloによる売上促進で加盟店内で全国一位に輝いたというお声。大手不動産会社さまの導入はもちろん、中小の不動産会社さまのビジネスのありかたが変化しているのを目の当たりにすると、私たちのプロダクトの力を感じることができます」

Faciloを立ち上げた時に見据えたゴールに対し、「現在一合目までたどり着いた」と語る市川さん。今後の展望についてこのように語ってくれた。

「現在のFaciloは不動産購入者向けのプロダクトですが、今後は売却者向けのプロダクトを準備しています。不動産購入時と同じく煩雑な売却時のコミュニケーションをクラウドで整理することで、その体験を変えていくつもりです。不動産テックのプロダクトは数多くあっても、仲介会社の社員の8割を占める営業担当者さまがほぼ毎営業日使うプロダクトはFaciloだけではないでしょうか。さらに、これからは購入と売却の両面をカバーしていく。この競争優位性を活かして、これからの事業展開を考えていくつもりです」

業界を牽引するFaciloには「こんな機能を作ってほしい」と現場からの期待の声が絶えず届くのだそうだ。業界からのラブコールに応え、Faciloがこれからどんな進化を遂げていくのか目が離せない。

(写真・文:出川 光)

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