見出し画像

CES関数、さらに入門!

前回の記事ではCES関数の$${\rho}$$を動かしながら、様々な形の効用関数を得ました。ところでCESとは、Constant elasticity of substitution、つまり代替の弾力性が一定という意味です。

代替の弾力性を求める

代替弾力性とは、財の価格$${p_1, p_2}$$が与えられ、(お馴染みの)効用最大化問題を解いた状態で、

相対価格$${\frac{p_1}{p_2}}$$が1%上がったときに相対消費量$${\frac{x_1}{x_2}}$$が何%下がるか

を示す指標です。これを数式で書けば、

$$
\varepsilon = - \frac{ \frac{d(x_1/x_2)}{x_1/x_2} }{ \frac{d(p_1/p_2)}{p_1/p_2} }
$$

となります。この$${\varepsilon}$$をどんどん変形していくことで、CESにおける$${\varepsilon}$$を求めましょう。まずは分数の多さを何とかしたいところです。そこで相対消費量$${x = x_1/x_2}$$、相対価格$${p = p_1/p_2}$$を定義すれば、

$$
\varepsilon = - \frac{ \frac{dx}{x} }{ \frac{dp}{p} }
$$

と書けます。通常は$${dx/dp<0}$$(モノが高くなれば購入量は減る)なので、あらかじめマイナスをつけて定義することで$${\varepsilon}$$の値をプラスにしています。さて、$${\log}$$の微分を使って、

$$
\begin{align*}
\varepsilon &= - \frac{ \frac{dx}{x} }{ \frac{dp}{p} } \\
&= - \frac{dx}{dp} \cdot \frac{1}{x} \cdot \frac{p}{1} \\
&= -  \frac{dx}{dp} \cdot \frac{d \log x}{dx} \cdot  \frac{dp}{d \log p} \\
&= -  \frac{d \log x}{d \log p} \ \ \ (*) \\
\end{align*}
$$

かなりスッキリしてきましたね。一方、CES関数の微分から以下の式が得られます。

$$
\begin{align*}
\frac{\partial U}{\partial x_1} &= \alpha x_1^{\rho-1} \\
\frac{\partial U}{\partial x_2} &= (1-\alpha) x_2^{\rho-1} \\
\therefore \frac{\frac{\partial U}{\partial x_1}}{\frac{\partial U}{\partial x_2}} &= \frac{\alpha}{1-\alpha}x^{\rho-1}
\end{align*}
$$

経済学の入門で習う「価格比=限界効用の比」に当てはめれば、

$$
\begin{align*}
\frac{p_1}{p_2} &= \frac{\frac{\partial U}{\partial x_1}}{\frac{\partial U}{\partial x_2}} \\
\therefore p &= \frac{\alpha}{1-\alpha}x^{\rho-1}
\end{align*}
$$

となります。さらに$${\log}$$を取れば、

$$
\log p = \log\frac{\alpha}{1-\alpha} + (\rho-1) \log x
$$

が得られました。これを先の$${(*)}$$に当てはめましょう。

$$
\begin{align*}
\varepsilon &= -  \frac{d \log x}{d \log p} \\
&= - \frac{d \log x}{d(\log\frac{\alpha}{1-\alpha} + (\rho-1) \log x)} \\
&= - \frac{1}{\frac{d(\log\frac{\alpha}{1-\alpha} + (\rho-1) \log x)}{d \log x}} \\
&= \frac{1}{1-\rho}
\end{align*}
$$

となり、代替の弾力性が求められました。前回、$${\rho \leq1}$$を仮定したのは、代替の弾力性をプラス(つまり、価格が上がると消費量が下がる)にすることと整合しますね。

コブ・ダグラスの場合

コブ・ダグラスでは、$${\rho = 0}$$なので、代替の弾力性は1、つまり「(相対)価格が1%上がるときに(相対)消費量は1%下がる」ということです。このとき、購入量=消費量×価格は変化の前後で維持されます。

価格が1%上がって消費量は1%下がったら、

$$
(1 + 0.01) \times (1 - 0.01) = 0.9999
$$

なので同じじゃないじゃん!ちょっと少なくなるじゃん!と私はよく思うのですが、ここではテイラー展開による近似を使っています。どういうことかというと、$${x}$$が十分小さければ、

$$
\log (1+x)  = x - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} - \frac{x^4}{4!} + \cdots
$$

の一次近似

$$
\log (1+x)  \approx x
$$

が使えるので、先の$${(1 + 0.01) \times (1 - 0.01)}$$の対数をとれば、

$$
\begin{align*}
\log \{(1 + 0.01) \times (1 - 0.01) \} &= \log (1+0.01) + \log (1-0.01) \\ &\approx \log 0.01 - \log 0.01 \\ &= 0
\end{align*}
$$

より、$${\log}$$の中は$${1}$$になるはずだからです。このような近似計算を、経済学ではよく使います。

また、支出全体に占める$${x_1}$$の購入量の割合は

$$
\frac{p_1 x_1}{p_1 x_1 + p_2 x_2} = \frac{ \frac{p_1}{p_2} \frac{x_1}{x_2} }{ \frac{p_1}{p_2} \frac{x_1}{x_2} + 1 } = \frac{p x}{px + 1}
$$

で、先の議論から$${px}$$が一定なのですから、これも変化しないことになります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?