見出し画像

【詩】社若(カキツバタ)

沼池に浮かぶ島に咲く白い社若(カキツバタ)
鉄格子の隙間から 囚われ人が眺める
今 彼は新しい女のもと
三度目の夏が来るねと燥いでいたのは昨日の夢 幻

取り上げられた携帯から漏れた彼の声が
お前はもう出てくるな 一生そこにいろと
薬で朦朧とした頭で反芻する
代わりならいくらでもいる 私は昨日までの女

最後にねえあなた 私のそばにいたその理由を
たくさんの女の中からなぜ私を
酷い本音は心の底に押し殺して
どうか空々しい綺麗事を 感情をこめて

虚しさに涙も出やしない
空笑い ギョッとした医者がPCに何か打ち込む
どうせならやがて在る安楽死をお願い
いつ死んでも同じなんて彼の受け売り

薬を打たれていつの間にか眠っていた
夢の中 呪いかけたの 顔も知らぬ次の女に
彼をお願い どうか二人で不幸になってね
瞼の裏 彼が笑ってる 解放の喜び

最後にねえあなた 私のそばにいたその理由を
たくさんの女の中からなぜ私を
酷い本音は心の底に押し殺して
どうか空々しい綺麗事を 感情をこめて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?