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ジジの宅急便

魔女の宅急便に出てくるかわいい黒猫のジジではなく、爺のジジの宅急便である。

父は家庭菜園で野菜を作っている。
母とふたりでは食べきれないので、ご近所さんや親戚の家に持って行く。
高齢家庭ばかりで、野菜のお届けがお互いの生存確認にもなっているとか。

我が家にも父からの宅急便が届く。
今回は大きな大根とブロッコリーが入っていた。
それからこれは買ってきたと思しき淡路の玉ねぎ。
おもち。梅酒。
農協のお米も入っている。
めちゃ重い。

あと毎回必ず入っているのが、
伊藤ハムポールウインナー。

埼玉のスーパーでは見かけない。
ビール片手にそのまま食べたり、
斜めうす切りにして、ピーマンの細切りと炒めて、手軽なお弁当のおかずの一品にしていた。
父は欠かさず買い置きしている。
我が家ではギョニソ(魚肉ソーセージ)より親しみがある。

それにしても料理サイトや料理雑誌、上手に略すよね。
ギョニソ、ホケミ。
ホケミちゃんて誰?
と思ったら、ホットケーキミックスだった。

届いたよと実家の家電に電話。
2〜3回のコールで出ることはもうない。
鳴らし続けたら母が出た。
父は入浴中とのこと。
野菜のお礼を言ったら、

「食べてちょうだい。
 お父さんの心尽くしの野菜やから。」

心尽くしか。
お母さんいいこと言う。
ひとり暮らしの長男がたまたま我が家にいて、電話を代わっておばあちゃんと話す。
孫たちは母の認知障害はあまりわからないと言っている。
そういう目で見たらそうかもしれないけど、くらいの認識だ。
近況を喋っている。
父にお礼の伝言を頼んで電話を切る。

母に伝言。伝わらないかもしれない。もう一度、父に電話しようと思っていたら、父から電話がかかってきた。
母は電話があったことをちゃんと伝えてくれたようだ。

長男が電話に出た。
「おじいちゃん?
いつものウィンナーありがとね。これ美味いよね。ビール?
もういただいてますよ。」

野菜より米よりポールウインナー。
おばあちゃんからの宅急便が届いて
「あたし、このパイ嫌いなのよね」
      (映画魔女の宅急便より)
と言ってキキとジジを
もやっとさせる孫じゃなくてよかったよ。
もう立派な大人なので当たり前ではあるが。
手軽なつまみでビールを1杯。
長男も酒好きに育ってしまい、これまた酒好きのじいちゃんとは気が合う。

休日に、大人家族4人でビールを飲んだら空き缶の数が多い。
先日、我が家から出勤した長男に、
出がけに空き缶のゴミ出しをお願いしたら、バスに乗り遅れたようだ。
それでもバスが2ヶ所で信号待ち
をしている間に、次のバス停に猛ダッシュして、夫が乗っているバスに乗ってきたそう。

「やっぱり若さやな。めっちゃ走ってきよったわ。」と大笑いしていた。
聞いただけで息切れするわ。

到着した父の宅急便は運ぶのに一苦労。こんな重さの荷物を集荷も頼まずによく持っていくもんだ。
体力自慢の老人である。

若者と老人の狭間でひときわ歳を感じる中年の私。
春一番の強風に吹かれて、今日はノンアルにしようと誓っている。











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