ママも可愛くなっていいよ
「ママ。だいじょぶだょ。だいじょぶだょ。かわいいから行かないで。カミ切らなくてかわいいょ。
行かなくていいよ」
私が「美容室に行く」と言うと、年長の息子と2歳の娘はこんな風に言って泣いて出掛ける事を必死に阻止しようとした。
泣いている子どもを置いてまで綺麗になったり、可愛くなる必要なんかない気がしてしまって、私は自分を癒す時間を持つ事に後ろめたさを感じるようになっていた。
実際、子どもが生まれてから自分に割く時間がほぼ無くなってしまったのは事実だ。
「美容」という言葉が異国の言葉に感じるほど遠くなってしまった。
毎日必死でいつのまにか髪は伸び、肌は荒れ…
「子育て中は仕方ない」なんて世間様の視線も勝手に誇張して感じたりしていた。
以前だと、「髪なんて切りに行く暇ないよね。忙しいし、化粧なんて出来ない」という「子育て世代女性同士あるある雑談」に共感したりして、居心地の良さを感じていた。
しかし、最近はそれにも飽きた。
美容室に行けないのも身なりを整えられないのも子どものせいにしているようで悲しくなってきたからだ。
美容室に行って髪を手入れする。
ゆっくり鏡を見て肌のSOSに気づく。
好きなデザインの心地よい衣服を着る。
そんな風に自分を労る時間は子育てにこそ必須だ。
自分にベクトルを向けて子どもに時間を割かないのではない。
子どもは親を良く見てくれている。
だから、
「見かけだけが大切ではないけど、きっと心の中のものは見かけに表れる。身だしなみは大事だよ」
という事も少しだけ伝わって欲しい。
「忙しい」は心を亡くすとは良く言ったもの。
忙しい時は、少し癒しの時間を。
今日は雨が降っているから公園にも行けないなと思っていた。夫もやる事がなく暇そうだ。
「よし。」と、私は美容室に行く予約をした。
「ママ可愛くなって来てもいい?」と子ども達に尋ねた。
娘は「いいよ。可愛くなってきていいよ。帰って来たらみーちゃんの事も可愛くしてね。早く帰って来てね」
息子は「すぐ帰って来るんでしょ?」
少し寂しそうに。でも我慢して。でも前を向いた。
そんな風に聞こえた。
2人とも大きくなったんだね。
ママも少し成長したよ。
ママも可愛なっていいよね。
美容室で…
「毛先かなり硬くなってますね。あっ。円形脱毛あります」
…まじか。可愛いはもう少し先だ。
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