見出し画像

進撃の巨人 エルヴィン・スミス

エルヴィンを語る上で最も優れている点は英断と即断が出来る事だ。

そこでまず英断を理解していない人は多数いる。そして英断出来る人は更に少ない。

彼を理解したいのであれば、まずは英断を理解するべきなのだが、現実的に英断できる人間は実際には殆どいない。

英断とは並みの人に出来る事では決して無い。歴史上でそれが出来た日本人を上げると、織田信長の比叡山焼き討ちも英断でしかない。その行為を非難または悪の所業だと誤解している人が多すぎる為、織田信長は現代や過去においても悪魔や魔王などとして登場する漫画やアニメが多いのは、英断を理解出来てない証拠でもある。

当時、比叡山は非常に厄介な存在であった。昼は農民、夜は夜襲をかけてきて、どうする事も出来なかった。実際、止めようとしたのは明智光秀だけであった。秀吉は黙殺を決め込んだ。戦国時代で比叡山焼き討ちをしなければ徳川幕府も無かった。誰もが出来ない上に、避難も浴び、殺される可能性も秘めた上も承知して英断を即断出来る人こそが、真の英雄と言える。信長は一身を捧げる覚悟で焼き討ちを決行した。英断が理解出来ていない人は、そういった誤解をしてしまう。

理解するには経験が必要ではあるが、経験すれば精神的なダメージも多く、その為、許容範囲を超えてしまい精神が破壊されてしまう。

私も英断は出来るようになったが、それは私が壮絶な環境で育った為に、生まれた産物でしかない。まだ幼かった私が生きるには、そういった力を身に着ける必要があった。そして当然、ただで身につけた訳では無い。それなりの犠牲は払った。

当然、人格が壊れた親友や、あまりに無茶な教育をした為に狂暴化した弟、兄弟で首吊り自殺をした塾仲間等、多くの犠牲が身近にあったからこそ非常に良く分かる。

エルヴィンは決して冷徹では無い。賢いが生死の世界では、一秒でも早く即断するしかない。通常の人が決断する場合、仮に時間が1分あったとしよう。恐らくは迷ってギリギリで選ぶはずだ。

しかし、即断出来る人間は日常からそれは身についているもので、空気を吸うように一瞬で即断できる。喋りながら常に脳の回転をする感じだ。

私はその為、自分の事であっても、まるでロボットのように淡々と話すと言われた事がある。元々、他の友人たちからも相談などもよくされた。的確で尚且つすぐに判断できるからだ。

その観点からエルヴィンを見ると、彼は善人であるが故、苦しみも多かったと言える。これも現実であることだが、普段から失敗している仕事仲間が失敗をしても対して気にもしないが、完璧に近い仕事をする人がミスをすれば目立つのと同様であるように、彼はリーダーである以上、ミスは許されなかった。ミスが無いからこそ、皆は命を投げ出して戦えた。

しかし、どんな人間でも苦悩はあるのだ。彼の精神は半ば崩壊していたとも言える。その心を理解できたのはリヴァイだけだった。彼の苦しみは尋常では無いことを理解したからこそ、死を与えた。その点で言えば、どちらもが理解はしているが、エルヴィンのほうが遥かに優れていたと言える。リヴァイが彼に全幅の信頼を寄せていたのは、リヴァイよりも強く、即断英断もできたからだ。

エルヴィンの精神は計り知れないほど、許容量はあったが人間である以上、必ず限界はある。その姿を見せるのもリヴァイの前でしか見せてはいない事から彼とリヴァイには特別な絆のような、お互いを理解し合い唯一本音を言える相手だったと言えるだろう。

私は五年以上前に一度、精神の限界がきた。誰からも私の精神力は一番だと言われていたが、無理だった。どの道も見たが、全ての道を閉ざされた。
弟を殺せと父親に言われ、奴が一体何故そんな凶行を私に押し付けようとしたのか、犯人にする為にか、陪審員制度になり、父の兄弟たちは皆、その地では名士と呼ばれ、権力も強い。私が仮に真実を言っても勝ち目は無い。それらを一瞬のうちに考えるように出来たら即断が出来ると言える。

私は当然断ったが、奴は癌になり、私が100%父母を信用していない事を見抜き、私の良心に、針の穴程度のほんの僅かな穴をあけて、世間一般で言われているような、『死を前にしたら、善良になる』と言う根拠も無い事を私は信じてしまった。奴は死ぬ前でも私を利用しようとした。私の一族は元財閥だ。今でも数千億程度なら持っている者もいる。何でも自由になる世界で生きて来た父親は、銀行にも一度も行った事が無かった。

祖父の頃には現金だけで1兆円ほどはあったらしいが、人間の本性は恐ろしいものだ。強欲で腐った人間ばかりだ。私はそんな世界で生きて来た。

弟を私が殺していたら、恐らく私を刑務所に入れる為の布石だったのだと今は思う。医者でもあり癌になった父親と政財界にも顏が聞く叔父や、医者の叔父に金持ちの叔母を相手に、陪審員は普通の人達だ。普通じゃない世界を知らない人が100人集まっても意味は無い。結論が変わる事は無く、私は刑務所にいれられていただろう。

その根拠もある。まず全ての財産は母に譲るとの遺言書、そして医者なら絶対に入っている医師会の保険も母にも秘密裏に掛け捨てであるのに解約した。恐らくそんな真似をした医者は父が最初で最後だろう。借金をしてでも払うと言われている保険だからだ。

漫画やアニメではこのような裏事情が無いから楽しんで見れる。しかし、現実に起こればそう簡単にはいかない。医者であった父は、晩年、賢さでは敵わないと気づき、私を利用し尽くした。その結果、争いが生まれ、善である私が負け、悪である一族が勝った。

日常がバッドエンディングだったから、私はハッピーエンドで終わる映画しか見ないようにしている。

私はエルヴィンに好感が持てる。その苦しみが分かるからだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?