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第7話 伝わる想い

自転車はパトカーに乗せ、海斗は家まで警察官に送ってもらった。

サイレンの音は無いものの、赤いランプは家々に反射して何があったのかと、
出てくる人々もいた。

家のドアが開いて、詳しい事情は何も知らない父母が「ありがとうございました」
と警官に頭を下げていた。

「いえ。彼のおかげで1人は助かるかもしれません。すぐに救急車で運べたのは
彼が居たからです。犯人は捜索中ですが、必ず捕まえます。
ご協力ありがとうございました」

警察官は敬礼を取り、パトカーはすぐに去って行った。

海斗たちも家に入り鍵をかけて、何があったのか知りたい様子を見せていた。
彼はハッと気づいたように、「詳しいことは明日話すから! おやすみ」と言って
さっさと自分の二階の部屋へ戻ると、すぐに清乃に電話をかけた。

テレビでは、起きて間もない通り魔が出たと言う情報しか無く、パトカーのサイレン音が鳴り響き渡り、救急車に一人の重傷者を乗せて、病院に搬送したとだけしかまだ伝えられていなかった。

ニュースで通り魔の事件が起き、一人を病院に搬送中だとテロップが流れ、
アナウンサーは詳しい事情が分かり次第お伝えします。とだけ伝えた。

近くだし、パトカーも何台も出て来ていて、安全だから行かせて! と
清乃は父母に訴えかけたが、彼も心配だけど、
居合わせただけかもしれないと言って、娘を外には行かせなかった。

清乃は二階に上がって、携帯を握り締めた。
色々な事を考えて、もう頭がどうにかなりそうなくらい不安で
握り締めた携帯に爪で削られたような跡さえ残っていた。

その時、携帯が鳴った。彼女はすぐに出た。
「海斗?! 無事なの?!!」
「ごめん! 心配かけて本当にごめん。たまたま通り魔を見かけて
今まで警察の人と話をしていたんだ」

清乃はそのままベッドに横になった。頭がぼーっとして立ち眩《くら》んだように、
「清乃?! 大丈夫?」しばらく返事は無く、落ち着いたような吐息をはいた。

電話越しに、その吐息を聞き、嬉しくもあり、もしも逆の立場だったらと
考えると、激しく身震いした。彼女の想いを考えると謝るしかなかった。

「明日からは清乃の家に迎えに行くから、一緒に学校に行こう」
「……うん……分かった。待ってるね」

彼女の声から涙ぐんでいる事が分かると、激しい罪悪感を覚えた。
「連絡すぐにするべきだった……ごめんな」
「……うん。無事でよかったよー……ずっと心配して泣いてたから
明日、目が腫れちゃう……」
「今日はもう安心して寝て、明日の朝会おう」
「うん。安心したら眠くなっちゃった……おやすみ」
「ああ。おやすみ」

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