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1999年から2003年までの阪神タイガース その㊱

抜け殻のようになった。
もう動けない。

9月15日の喧騒が終わる。
僕らは翌日、始発で自宅へ帰る。
泥のように眠った。

始発の御堂筋線。霞んだ目で携帯電話を見た。
沢山のメールが届いていた。

やんやん、やっと優勝したな。おめでとう!
観に行ってるの?どうだった?
おれもテレビで観てた〜!

殆どが
『阪神をそんなに知らないニワカ』
からのメールだ。

バイト先、地元の友達、遠い親戚。
そんなに仲良くない奴。

フィーバーだったこの年。
長年連絡を取っていなかった友人からも連絡が来た。

彼らからすると
タイガース=やんやん
とイメージだったのだろう。

タイガースへの想いは僕の方が深い。
当時10代だった僕はそう思っていた。
全てのメールを無視したのは若気の至りだ。

9月15日のなんば。
喧騒は物凄かった。

黄色いメガホンが揺れる。
地響きのような大歓声が大阪の街を呑み込む。
道頓堀から2000人以上のファンが川に飛び込んだ。
何人とハグしたか分からない。
僕の和田ユニはビールでびしょびしょだ。

それだけではない。
プロが現れ、特攻服を着た青年がリードを取る。本物の応援歌が流れる。
トランペットにドラム。
キレキレの踊り。

プロはファンの心を掴み、
その場を見事に仕切った。
喧騒は一瞬で歓声に変わった。
見事だ。涙が出た。

僕が「プロ」を目の前で観たのはこの日が最後となった。


自宅へ着いた。
泥のように眠る。
所々で夢をみた。

万年最下位だったタイガース。
駅を降り、ダフ屋の誘いを避け球場へ向かう。
僕は21号門前にいた。

今日は試合がある。人はまばらだ。
沢山の友人とすれ違った。

「おう、やんやん!
今日席どの辺?」

「今日も来てるな〜!!」

「おうおう!カレー食うか??」

こだまがのしのしと巨体を揺らしながら近付いてきた。
言語障害の為何を話しているか分からないが、きっと今日は勝つよ。やんやんも来てるし。
という事だろう。

タイガーが軍団を引き連れやってくる。
今日も電車、やるからな!
絶対来いよ〜!

そしてアイパーだ。
前回のnoteにも書いたが、
アイパーは優勝する一月前。
2003年8月にクーデターに遭い病室で苦しんでいた。

僕のもとにやってきた9月15日のチケット。
これはアイパーのチケットだ。

「やんやん、ありがとな〜」
一言だけ言い残しアイパーは去っていった。

夢はここで終わった。


「頼んだで。やんやん」
胴上げ前、病室で苦しむアイパーは僕にそう言い残しチケットを僕に手渡した。

アイパーの想いを胸にしこの日甲子園に向かった。
甲子園では誰よりも大きな声で叫び、
満員の阪神電車での二次会を決行。
真弓ダンスで宗右衛門町を駆け巡った。
スリーコールで大きな笑いを取った。

アイパーの期待に応える事が出来たかどうかは分からない。

でも。
「ああ、もう大丈夫や」
と思えるくらいの経験をした。


きっとアイパーも
分かってくれるだろう。



続く

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