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1999年から2003年までの阪神タイガース その㊴

大晦日。
23:00 八坂神社に集合せよ。

知ってるかい?
シーズンオフ。試合の無い日に二次会。
この年が最初で最後。
あったんだよ。

2001年。
今年も毎度の如く最下位で終わった。
どん底のタイガース。

しかし、僕らのホームでの二次会のボルテージは過去最高だった。

とにかく面白かった。
とにかく笑った。
何を隠そう「アイパーの全盛期」だ。

アイパーのキレキレの二次会。
今のファンは知らないだろう。
彼が数々の名言を残したのもこの年だ。
長嶋さんが可哀想になる位スリーコールのネタにした。

沢村賞は松坂大輔では無い。
毎試合300人以上参加する二次会の指揮を執ったアイパーは年俸の上がらない低額所得者代表代表、真の沢村賞だ。

この時代。
僕らのボルテージはシーズンオフも醒める事は無かった。

二次会だ。
とにかく二次会がやりたい。

開幕が待ち遠しかった。
開幕を待てなかった。

そしてオフに軍団の誰かが言い出したんだ。

「年越しに八坂神社で二次会をやろう」

直ぐにアイパーに連絡し、即決断。
軍団に年末の予定など無い。
軍団は普段暗い。
こいつらからタイガースを取ったらただの廃棄物。可愛くない多摩川のタマちゃん。用のない置き石だ。

当日は24人のメンバーが集まった。
全員二次会常連「玄人」だ。

人でごった返す京都の街。
八坂神社に到着。
参拝客を横目にロングハッピやユニに袖を通した。

自然と背筋が伸びた。
僕も感じた。
あの頃のファンならきっと分かるだろう。この感覚。
やはりこれだ。
これでないとな。
僕らは会話をせずとも分かり合えた。


「何か、阪神ファンがおるで」


ぞろぞろと歩く僕らに視線が注がれた。
異様な光景だと思う。
神社へ到着。
そして、カウンドダウンが始まった。

3、2、1、
ハッピーニューイヤー!!!

「阪神タイガース〜!!!!!!」

喧騒の中、
八阪神社、いや、京都の街並みに六甲おろしが響き渡る。

この瞬間、
視界に映る軍団と京都の街並みがスローモーションになった。

今でも忘れる事は無い。

皆、笑顔だ。
皆笑っている。

やはり僕たちにはタイガースしか無かった。

通行人が笑う。
通行人とハイタッチを繰り返す。

来年はいけるか?!
いけるいける!!

兄ちゃんら!頼むで!!
ありがとう、おばちゃん!!

おれも歌ってええか?
もちろん!どうぞどうぞ!!

テキ屋のおっちゃんが唐揚げをくれた。
沢山の人と乾杯をした。
カメラやスマホで撮られる事なく、
僕らは思う存分二次会を謳歌した。

話題は1-9、各々のヒッティングマーチ。
そして巨人の悪口・スリーコールへ。
あらゆる下ネタが飛び交った。
もはや初詣ではない。

笑った。
過呼吸になる位笑った。

賽銭を投げ、僕らは来年のタイガースの
「最下位脱出」を祈願した。
二次会中の阪神ファンが24人一気に横に並んで祈願だよ?
異様な光景だった。

八阪神社から河原町へ。
僕らの声は京都の街を黄色と黒に染めた。
始発まで鳴り止む事は無かった。

アイパーには魅力があった。
その空間を纏め上げ、タイガース一色にする魅力だ。
甲子園だけでなく、京都でもそれは通用した。


二次会のリーダー。
やはりこうでないとね。


「おれ、あいつ甲子園で見た事ある!!!」

この日、通行人の一人が言い放った名言。
その瞬間確定した。


アイパーはやはり『僕たちのリーダー』だった。


続く

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