見出し画像

『トゥナイト・アイム・ユアーズ』 ロッド・スチュアート

 ロッドが来日公演をしたようだ。友人が見に行ってきたと報告があった。
声も出ないし、なんか歳取ったなあーと嘆いていたが、それでもここ一発の声はスーパーヴォーカリストだった、と。

2011年に書いたエッセイだが、辛辣な表現もあるが、リスペクトしているつもり。
2024年3月




 ロッド好きの芸能人ってけっこう多いと聞く。ビートたけしも歌手として歌を歌っていた頃があったが、まるっきりロッドだった。あんまりイメージ湧かない?

 ブロンドのロングヘアーをなびかせ、いつも両手にいい女がいるプレイボーイ。
男が憧れる世界を地でいっているシンガー。
ハスキーボイスもセクシーだから、女もメロメロ(死語)になっちゃうわけ。
でも、よーくロッドの顔を見るとたいして美男子(イケメン)でもない。体の割りに頭がでかくて個性的な顔をしているだけ。多分、あのハスキーな声が女性にはたまらなくセクシーに聞こえるのだろうな。
 1970年代の若者はああいったわかりやすいロックスターに憧れていた。見るからにスーパースター。ロングヘアーにサングラス。女をはべらせ、いい車に乗っていて、ま、所謂ロックスターのアイコンだな。ステージも華やかだし。でもって、私生活を含めて、それはそれですばらしいエンターテイメントの演出なんだよな。
 例えば、ロッドはスーパースターだからど派手なステージングを行なう。どんなに跳ねたり飛んだりしても平常心を保ったヴォーカルがスピーカーから流れてくる。・・・ま、あれが口パクと気づくのにそんなに時間はかからなかったけれど。大枚はたいて武道館まで見に行ってロッドが口パクだった時は、正直ずっこけたが、それでもロッドだからってんで許しちゃったしね・・・。

 何年か前、矢沢の永ちゃんが日本人で初めてロンドンのウェンブリーアリーナに立った時、ロッドも一緒だったな。あん時のロッドは、腹は出てるは顔はむくんでいるわ・・・ちょっとひどかった記憶がある。やっぱり、人前に出るなら鍛錬をしなければね。さすがにあん時は口パクではなかったようだがね。

 なんだか悪口っぽいことが続いているが、実は私、結構ロッドの事が好きなのである。スーパースターを地でいっているところに憧れを感じるし、そういう世間からかけ離れている人って魅力的なのだよね。ちょっと古い話だけどF1界でいったら間違いなくネルソン・ピケだよ。世界中の美女と浮名を流し、大型高級クルーザーで暮らし、七つの海を渡りながらF1サーカスを転戦していた。勝手に一夫多妻制を取り入れて何人子供を認知したかも分からんし・・・。それでもみんな幸せなんだからすごいことだわ。
つまり、ロッドもそういう人なわけですよ、私の中では・・・。
でも、ロッドにしろ、ネルソンにしろただの「女ったらし」じゃないわけで、甲斐性があって、仕事も一流なわけですよ。そうでなければスーパースターにはならんもんね。
 そんなロッドも最近ではめっきりお歳を召しまして、ここ数年はアメリカのスタンダードばっかり歌うAOR歌手に鞍替えしちまってるね。『ザ・グレイト・アメリカン・ソングブック』はなんと第5集まで出ている。
古いスタンダードをカバーしていて・・・そりゃあんな上手いヴォーカルでスタンダードなんて歌おうもんなら、単純なアメリカ人は即買いだわな。しかもダイアナ・ロスやチャカ・カーンとのデュエットといった鉄板のネタもあるし。
・・・でも、私は嫌いだね。
 ロッドはストーンズまではいかなくても、常に女に対して強いビートに乗りながら挑発的であってほしいし、スタンダードを歌うにはまだ早いって!
グダグダの女ったらしを死ぬまで続けてほしいわ。
そういう意味で、私の一押しはロック不遇の1980年代の初頭に発表した『Tonight I’m Yours』(1981)である。

 もちろん、1970年代の名盤『Atlantic Crossing』(1975)、『Foot Loose & Fancy Free』・・・邦題「明日へのキックオフ」(1977)とかあるんだけど1960年代後半からジェフ・ベックと喧嘩しながら走ってきて、1970年代でヴォーカリストの地位を築き上げ、一気に昇華した作品が『Tonight I’m Yours』なわけですよ。

これ、もうこのタイトルだけで買いでしょ!
あーた、こんなこと言ったことありますか?
こういう台詞をさらっと言ってしまうロッドってやっぱり格好良いわけですよ。

 スーパースターなんて音楽やヴォーカルがいいに決まってるんだから、あとはどれだけ格好をつけることができるかなんです。最近、そういうスターっていなくなったね。



2011年10月26日 
花形

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?