Web小説発掘記 その265 Le Jardin de la sorciere ~魔女の庭~ 作者 平中なごん様

本編URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894402374

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。

あらすじ


〈あらすじ〉
 「庭」の名を持つ女子修道院で起きた悪魔憑き事件……それは院内に潜む修道女に化けた魔女の仕業なのだという……。
 はたして魔女は本当にいるのか? いるのならそれは誰なのか?
 五人もの修道女が悪魔により自害に追い込まれる中、教会から仕事を押し付けられた新任の騎士団長と副団長が事件解決に挑む!

ストーリーと見所

こちらは同作者さんの別作品の、所謂スピンオフ作品となっている。そちらの方も以前にレビューを書かせていただいているのでそれはこちら↓

こちらの物語の主役となっているのが、上のレビューした作品……多分それが本編なのかな?の敵役として登場するキャラクター。

スピンオフではあるのだが、本編を知らなければわからない言葉は殆ど出てこないのでこちらの作品から読む、もしくはこちらの作品だけを取り敢えず楽しんでみるでも大丈夫という親切設計。

とはいえ一応は、本編と共通した世界観で同じ用語も使われているので知っていた方がより楽しめるのは確かではある。

元々敵役とはいえ、高潔な紳士として書かれていた主人公。そんな彼が腹心である少女と出会う物語となっている。

舞台は修道院。シスター達が次々と自身を悪魔の生贄へと捧げるという怪事件が勃発し、主人公がそれを止めにくる……というのが主な流れ。

作品としての最大の特徴は、やはりスピンオフを作るだけあってかなり精巧且つ重厚に作られた世界観だろう。
国家や部族、魔法の原理や宗教に至るまで精緻に作り込まれており、それらが矛盾なく一つの世界を構築している。

その様には最早、芸術性すら感じさせるほどでもある。

またそれらを語る文章も見事なもの。
世界観に即した丁寧で読みやすい文章は、作品世界とそこで活躍するキャラクター達の色をより鮮明に際立たせている。

ストーリーとしてはミステリー風味のファンタジーといったところだろうか。
修道院のシスター達が次々と悪魔憑きになってしまう事件を調査するのだが、所謂本格的なミステリーのように謎やらトリック、アリバイがあるものではない。
あくまでもフレーバーのようなものとなっている。(悪魔だけにね)

キャラクター

ドン・ハーソン・デ・テッサリオ

物語の主人公。
高潔な性格の聖騎士であり、顔が良くて頭が回る。しかも腕っぷしも強くてなんか凄い剣まで持っている。

殆ど隙が無い人物として、物語の中心でしっかりと立ち回ってくれる安定感のある主人公。
台詞回しも魅力的で、かなりヒーローしている。

メデイア

物語のヒロイン。
悪魔憑きの第一発見者、他の修道女達とは違った経歴持ち。

当然ここまで怪しければ真っ先に犯人候補からは外れていく。
後半は意外な活躍と立ち回りを見せてくれたりもする。

総評

評価点

作り込まれた世界観と、それを表す素晴らしい文章力。

ここまで綺麗に整った世界は、なかなか見れるものではない。

物語の構成力やキャラクター同士のやり取りなども細かなところで作者さんの実力が如何なく発揮されており、全体を通して高いクオリティの小説となっている。

序盤のちょっと不気味なミステリー風味から始まり、最後は格好良くバトルで占めるのも爽快感があり、見事な構成をしている。

問題点

問題というほどでもないが、後半のバトルシーンは些か長めの説明が目立った。
そういった事情もあってか、ミステリーとしてもファンタジーとしてもやや中途半端感は否めない。

最終評価 58点(Web小説としては充分な良作)

これだけでも楽しめるし、ここから同作者さんの別作品の派生してもいい見事なスピンオフ小説。

本編では敵役だったキャラクターもしっかりと魅力的に書かれていて、どちらから読んでも両方をより楽しめるような仕掛けになっているのは実にお見事。

重厚な世界観を綺麗に纏め上げる文章や、後半の真面目だが何処か笑いを誘う展開など、王道と意外性を含んだ物語も実に魅力的。

所要時間は凡そ40分ほど。

極めて個人的な感想

前の作品から思っていたけど、世界観の作り込みが尋常じゃないぐらいに凄い。
余程の知識と熱量があるのだろうと、ただただ脱帽するばかり……。

『自分の世界やキャラクターを丁寧に描く』ことを徹底することで、しっかりとファンを獲得しているのも凄い。


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