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理想のホームステイ

今回は小娘が教員として生徒を引率した、ある修学旅行での出来事。

小娘が働く学校では、2年生の秋に修学旅行があった。行き先はオーストラリアのブリスベン・ゴールドコースト。

この学校の特徴は英語教育だった。
モットーは「受験英語の先の使える実践英語を身につける英語教育」だったこともあり、生徒は対話型の授業で英語に慣れ親しんでいた。

1年生の入学当時から、オーストラリアの修学旅行に向けて英語を頑張ってきた彼らにとって、この行事は一大イベントだった。

期間は10日間。
そのうちの8日間はホームステイ、残りの2日間はホテル滞在となった。

1週間もの間ホームステイをする。
生徒は2人1組となり、ある家庭で一緒に生活をするのだ。果たしてこれを本当に修学旅行と呼んで良いのかは謎であるが、生徒も教員も満喫した修学旅行となった。

小娘のホームステイ

実は小娘もちょうど高校生の時に、高校の海外短期派遣制度に応募して、オーストラリアのアデレードという場所で2週間ホームステイをした経験がある。

日本からのお土産をいくつか持っていき、ホストマザーへプレゼントしたことをよく覚えている。

小娘のホストファミリー構成は、なんとホストマザーのみ。ホストマザーと言っても、当時の小娘の祖母と同じくらいの年齢で、おばあちゃんとの2人暮らし生活をした。

おばあちゃんと2人だったからか、本当にゆったりとした生活で、1日の流れはいつも一緒だった。学校まで送り迎えをしてもらい、放課後は2人で裏庭のガーデンテーブルでティーとスコーンを味わいながら、お互い静かに読書する。夜はマザーお手製のとても気合いの入ったご飯を一緒に食べて、一緒にお皿などのお片付けをする。そんな感じだった。

日本では、毎日時間があれば勉強して、部活して、忙しなく生活していた小娘にとって、とてもリラックスできる非現実的な空間だった。

ホストマザーはお料理が得意で、毎回手の凝った料理を出してくれた。オージー料理だけでなく、インディアンやタイなどアジア料理も作ることができ、毎回とても美味しくて、本当に恵まれていた。

言葉の壁を感じる日々だったが、そんなホストマザーのおもてなしにぬくぬくとしてしまうような温かい日々を過ごした。

理想のホームステイ

今回生徒たちのホームステイも、家庭環境や家族構成はそれぞれだった。ペットがいるところもあれば、子どもがいる家庭もあり、生徒たちはそれぞれ振り分けられた家庭で、楽しい日々を過ごしていた。

教員である小娘と生徒たちが会えるのは、生徒たちが通うローカルの学校だった。毎朝点呼をとり、生徒たちがしっかり学校に来ているかチェックをする。車で送り迎えをしてくれる家庭もあれば、ホストファミリーの子どもと一緒にバスで通うパターンもある。

朝、中庭で点呼をとっていると、ある女子生徒が浮かばない顔をしていた。今にも泣き出しそうな顔をしている。

彼女は仲の良い友達たちが次々と幸せそうに登校する姿を見て、抑えていた涙を堪えられなくなっていた。

どうやら、自分が思い描いていたホームステイと現実の家族像がかけ離れていたらしく、そのギャップに耐えきれなかったんだとか。

別にホストファミリーに何をされた訳でもないのだが、ただただ自分の『理想のホームステイ』とは違っていたらしい。

確か彼女のホストファミリーは、小学校入学前のお子さんがいる家庭だったようで、迎え入れる生徒へおもてなしをするような余裕がなく、生徒側はどちらかといえば『放置されている』ように受け取ってしまったらしい。

「私が描いていたのはこんなんじゃない!」

そんな心の叫びが、彼女の涙には溢れていた。

あの時のホームステイ

確かに自分も当時同じようなことをどこかに思っていた気がした。

『子どもがいる家庭が良かったな。』
『あの家庭のホストマザーは、校長先生と仲良くて、他の人たちとパーティしたんだ。いいな。』
『〇〇ちゃんの家庭と〇〇ちゃんの家庭は一緒にバーベキューやったんだ。』

自分と他人の家族を比べて、自分は他の人たちよりも充実していない。と勝手に決めつける。
高校生ってそういう時期なんだろうか。

今振り返ると、
私はあのホストマザーのもとでゆったりとした生活をして、一緒に2人で時を過ごすのが心地良かったし、本当に良かったと今思える。

いつか彼女も振り返った時に、
なんだかんだであの家庭で過ごすことができて良かったなと思えると嬉しい。


写真はオーストラリアのブリスベン🇦🇺
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