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Phone Call

声が聞きたくなって電話をかけた。初めて押す電話番号。あなたが私に渡したもの。なかなか押せなかった番号。

とうとうかけてしまって、電話を切ったあとに小さなため息がこぼれた。

近づくのが怖くて、離れたところから見てた。近づいたら絡め取られそうだから。寂しい私の全部を持っていかれそうだから。

あなたの声を思い出す。

想像より低い声だった。あなたが私の名前を呼ぶのを初めて聞いた。一瞬の間のあとで私の名前が発せられ、その響きが私のどこかをほんの少し熱くする。だってその声はわずかに甘くてね、耳に残る甘さ。

鏡に自分の顔を映したら、頬がやわらかなピンク色になっていた。手で頬を包み込む。それからそっと耳を撫でると残っていた甘さに指が触れた。

ねぇ、会いたくなったよ。

あなたの声に抱かれたい。

分かってた。声を聞いたら会いたくなるって。だからかけなかったのにな。

「また電話してきて」とあなたが最後に言った。「うん」と答えたけど、たぶんしばらくかけないよ。会いたい気持ちが沈むまで、かけない。

ドキドキして、ちょっと切なくて、好きかもって思わされて、心揺られる。でももう少し時間をちょうだい。まだあなたに飛び込む覚悟が足りないから。

それにね、ふわふわ揺れる恋の始まりをもっと味わっていたいから。



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