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自然のなせるわざに出会う瞬間

冬の夕暮れ時。夜の帳(とばり)が下りる頃、山の稜線に木々のシルエットが浮かび上がる。冬の空気がピーンと張り詰めたような寒い日ほど、美しく見える。

山の中で暮らしていると、様々な条件が重なり合って、その時その場所でしか見られない貴重な瞬間に出会うことがある。

気温がー10℃を下回るくらいの冬の朝、空気中の水分が木に凍り付いてキラキラ光り輝くわずかなひとときがある。これを霧氷と呼ぶらしいことを最近知った。朝日が昇るとあっという間に消えてしまう。

たくさん雪が降り積もった翌朝、快晴の青空に映える白く染まった木々。これも空気が温められる昼頃には姿を消す。

少し標高の高いところでは、木々についた霧氷も雪も凍り付いて樹氷となる。そこにさらに雪が降り積もり成長したものはアイスモンスターと呼ばれる。近くに樹氷やアイスモンスターも見られる山があるので、雪が降り始めたばかりの頃に登ってみたけれど、あいにくのお天気だった。これも快晴の青空に映える姿は本当に美しい。まだ自分の目で見たことがないので、タイミングを見て見に行くつもりだけれど、ひと冬の間に何回チャンスがあるかなぁ...というくらい貴重だ。

雨上がりの朝日に照らされた蜘蛛の巣も美しい。雨のしずくが朝日に反射することで、蜘蛛の巣がそこにあることに気づかされる。

ある冬の夕方、外を歩いていると近くの木の高いところでパチンパチンと音がしている。何かが落ちてくるので、猿か何かが木の上にいるのかと思ってよく見てみると・・・それは藤の実のさやがはじけて種を飛ばす音だった。はじけて割れたさやが種と一緒にたくさん落ちてきていた。こんな場面に出会ったのは初めてで、同じタイミングで一斉にさやがはじけるということも初めて知った。

職場のキャンプ場に、不登校中の息子が時々薪割りの手伝いをしにくる。ある時外で作業をしていると「キツツキがいる」と教えてくれた。耳を澄ませると時折、高い木の上の方でコーンコーンと木をつつく音が聞こえることに気が付いた。それから気にするようにして、音がする度に外に出て探していたら、キツツキの姿を見ることができた!鳥は鳴き声がしても姿を見つけるまでに至らないことが多いので、感動的な瞬間だった。

山の中に暮らしていても、まだまだ知らないことがたくさんあるんだろうなぁ。身近にあるのに、見逃してしまっているであろう瞬間とあとどれだけ出会うことができるのか...。五感を研ぎ澄ませて、外で過ごす時間を大切にしようと思う。

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