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フランスのアイリッシュパブセッションに参加してみた

音楽学大学院生の週一アウトプット*35

先日、私はフランスで初めてアイリッシュ音楽のセッションに参加してみた。私は渡仏前からアイルランドの伝統音楽が好きで、東京でのセッションは大学学部時代によく行っていた。2019年には、夏に行われるFleadh Cheoilというアイルランド伝統音楽とダンスのフェスティバルのコンペティションにも参加しにいった。毎年開催都市が変わるのだが、2019年はドロヘダ(Drogheda)だった。ボタン・アコーディオンで参加したのだが日本での予選から本国での本選まで結構楽しめた。

アイルランド音楽のセッションというのは、かなり閉じた世界のように感じる。オープンセッションと言って、特に演奏に参加する人を制限したりせずに誰でも参加OKというスタイルをとっている場合が多く、(暗黙のルール、マナーみたいなものはいくつかあるが、)外部の人も参加できる仕組みにはなっている。しかし、そもそもそのセッションの存在を知るには知り合いが必要である。ということで、身内の集まりになりがちなのも事実である。東京でもアイリッシュパブセッションでもいつも同じようなメンバーで、時々新顔が現れるとみんな興味津々に話しかけるなんてことが起こる。

そして、今年は私はフランスのリヨンという都市にいる。到着当時リヨンでの知り合い、しかもアイルランド伝統音楽を演奏するような知り合いは皆無だった。(正直にいうと一人だけ奇跡的にいたのだが、あいにく彼はたまたま今年リヨンを不在にしていた。)

しかし、私はフランスでのアイリッシュ音楽のセッションに非常に興味があったため、Facebookのグループ機能と音楽仲間のツテを駆使してセッション情報を手にいれ、ドキドキしながら初めていくバーに手ぶらで(楽器を持たずに)行ってみた。Jack's Barという店である。食べ物はアイルランド料理はなく、フランスのバーで出すラインナップだが、ビールの種類は豊富に揃っていた。

第一印象は、「懐かしい」である。アイリッシュ音楽のセッションは曲のレパートリーは少し違えど、日本でのそれとベースは同じであると思えた。

とりあえず、バーに入ったら、guinessをハーフパイントで頼み、大人しく近くでセッションを聴いていた。これは半ば私のルーティンでもある。二杯目でグレープフルーツのビールを頼み、久しぶりのアイリッシュに気分よくなりながらしばらく聴いていたら、近くでティンホイッスルを吹いていたフランス人のお兄さんが話しかけてきた。

仏人お兄さん「どこからきたの?」
私「日本です。」
仏人お兄さん「演奏はするの?」
私「はい、ボタン・アコーディオンを少し。」
仏人お兄さん「なんと!みんな、聞いて!この子、アコーディオン弾くらしいよ!」
近くにいた仏人お姉さん「他には何かやるの?」
私「コンサーティーナを少しだけ。」
仏人お姉さん「じゃあ私のコンサーティーナ使っていいよ!」

とまあ、こんな流れで楽器を渡されなんと初めて行ったそのバーで、自分のメインの楽器以外でいきなりセッションデビューしてしまったのだった。ちなみに会話は全てフランス語。中には英語で会話するお客さんもいたが、演奏者の会話はフランス語だった。

2023年10月@Jack’s bar

この会話は少し離れた場所に座っていた演奏者たちには聞こえてなかったようで、いきなりみたことないアジア人が曲を出し始めたので(アイリッシュ音楽のセッションでは一般的に演奏者の誰かが順番にトラッドチューンを演奏し初めて他の人がそれに加わるという形をとる。)みんな演奏しながら戸惑っているのがよくみてとれた。周りを見渡したら、見た目からしてアジア人なのは私しかいなかった。しかも彼らにとっては知らない人。わけわからないという感じだろう。その様子が私にとっては愉快でたまらなかった。(強めのビールをすでに数杯飲んでいたせいもあるかもしれない。)

演奏が終わると、色々と話は盛り上がり、楽器の話をしたり、好きな演奏者の話をしたり、セッションあるあるを喋ったり。連絡先も交換しどうやら歓迎されたようで安心した。その後、アイリッシュのダンスも少し踊ったのだが、いちいちリアクションが大きくて面白かった。

結論、雰囲気としては、フランスでもアイルランドでも日本でもゆるい感じが共通していると感じた。存在する違いは国の違いではなく、演奏者や店、地域の違いだと思う。例えば、おしゃべりをする時間と演奏時間の割合など。今回のセッションはなんと3時間くらいなんだかんだ大きな休憩はなく弾き続けていた。

なんだか元気をチャージできた気がするので、今回もらった情報をもとにさらに色々と参加したいと思っている。このリヨンという都市の中で。

とまあ今回はアウトプットというより、体験記に近いかもしれない。続きがあればまた。

FALL

追記
このバーのホットチョコレートがとても美味しかったのと、カップがすごく可愛かったのでこちらに写真を載せておく。

2023年10月@Jack’s bar



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