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フランスのラップ le rap、日本のラップ

音楽学大学院生の週一アウトプット*31

今週は、フランスのラップ音楽について少し綴っておこうと思う。最近、ネット上でとても興味深い記事を見つけた。この記事の中では、アメリカのヒップホップとの違いがわかりやすく説明されている。

「フランスのヒップホップ/ラップは、如何に「移民」というアイデンティティと向き合ってきたのか? その30年以上の歴史を俯瞰する」© mediagene Inc.

フランスは移民の国。人種のサラダボウルと呼ばれるアメリカに引けを取らない程にたくさんの人種が混在している。音楽文化の発展においても、移民の存在は主要な要素となる。

ヒップホップの文化は1970年代のアメリカのストリートで生まれその後グローバルに普及した。その内容には移民のアイデンティティを盛り込んだものが多い。そのことを踏まえると、早いうちからフランスではこのジャンルが人気を博していたのは不思議ではないだろう。

そのうち、ラップは、リズムや音程などの音楽的な要素よりもその激しい主張のための言語表現(=歌詞)がその主要な要素となる。人種差別に対する思いを表現する手段として、ラップが用いられてきたと言える。

ところで、日本でラップというと、比較的早口で韻を踏みながらリズムに乗せて歌っていくようなものを想像する。私もそのスピード感を自動的になんとなく想像してしまう。しかし、先日フランス人の友達に勧められたフランスのラップを聞いてみてそのゆったりさに驚いた。もちろんものによっては軽快なビートのものもあるが、全体的にそんなにスピード感はフレンチ・ラップにはない。

ここで、私が感じたことは、日本語のラップが比較的ビートと音重視の独自の特徴を持っているのではないかということである。もちろん、内容を考えて韻を踏んで主張を盛り込んでいくものではあるが、このような対差別の主張を欲する精神は日本にはこのジャンルのオリジンと比べて強く根付いていないため、程度の差はあれど音楽的な要素がより重視されるようになったのではないかと思ったのだ。

音楽のフィージョンが観測されることは世界的に少なくないが、このように別の場所で元の音楽的要素が強調されることで微妙な認識の変化を生む状況はとても面白いと私は思う。

FALL

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