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Cさんが担任に脱がされたと話していたレギンスのDNAは未知の第三者!


回 答 書

弁護士 小 松 圭 介 殿

東邦大学医学部 教授 黒 崎 久 仁 彦
(経歴は別紙記載のとおり)

1 鑑定書で 「不詳」 とされていること

  レギンスから採取された付着物の鑑定書 (資料 1)で は、エ レク トロフェロ グラムに数値が記載されているけれども鑑定書では「不詳」とされている座位があります。2回分のエ レク トロフェログラムを対照すると、閾値を150RFU と設定した上で、2回分の検査結果が一致した座位のみ鑑定書にア リル型が記載されているように推測されますが、DNA型鑑定の鑑定実務において一般的に、

(1) 150RFUを下回った数値は、評価が不可能なので しようか。

【回答】
  科警研・科捜研では、フラグメントアナライザーの検出限界を 150RFUとしてお り、それを下回るピークは、仮にエ レク トロフェログラム上にピークが明瞭に現れていても、鑑定上は「型」として判定していない。余裕を持たせた検出限界の設定は、確実かつ安定的なデータが得 られる範囲に認知を絞ることにより、得 られた検出結果の信頼性を高めることになる。検出限界未満の ピークを「型」として判定しない取扱いは、確実を期 した慎重な姿勢ということができる。この点についての詳細は、私が協力研究員を務めた平成 22年度司法研究「科学的証拠 とこれを用いた裁判の在 り方」の 110~ 111頁 を参照されたい。 また、科警研・科捜研は、2回検査をしてそろって同じ型が検出されないときも、型不検出と判定するとい うように、型判定について慎重な運用をしている。

 もっとも、検出限界未満の数値であっても、検体に含まれる DNAによる アリル ピー クであると評価できる場合もある。検出限界未満のピークが DNAによるアリル ピークであるのか、それとも検査上避けられないノイズ やPCRの過程で生じたスタターピーク (アーチファクト)であるのかに関しては、鑑定書のみならずエ レク トロフェログラムをも詳細に検討する必要があり、DNA型鑑定に関する専門家の知見を得 るのが相当である。

(2) 2回分の検査結果が一致しなければ、評価は不可能なのでしょうか。

【回答】
  2回の検査結果が一致しないときも、一律に型不検出と判定する必要はなく、エレク トロフェログラムを個別に検討すべきである。

 例えば、⑥TH01の座位について、1回日の検査で「7・ 8・ 9」 、2回目の検査で「6・ 7・ 9」 となっている場合、1回目の検査で検出された8のアリル、2回 目の検査のみで検出された6のアリルについては、いずれもスタターピークである可能性がある。

 また、1回目の検査で 6のアリルがドロップアウトした可能性と、 2回目の検査で8のアリルがドロップアウトした可能性がある。このような可能性があるので、慎重を期して不詳と評価することにも理由はあるが、2 回とも検出された7と9の アリルについては、数値も十分であれば、鑑定資料から検出されたと評価することは可能である。

2. <担任実名>氏らではない第三者のDNAの検出に関する質問

(1) レ ギンスから採取された付着物に関するDNA型検査について

1回日の検査でも2回目の検査でも、① D8Sl179の座位では15のアリルが検出されています。15のアリルは、<担任実名>氏、Cさん本人、Cさんの両親及びCさんの兄弟の誰からも検出されていません。このことはどのように考え るべきでしょうか。

【回答】
  15のアリルについては、1回目の検査で332RFU、 2回目の検査で294RFU という数値が出てお り、スタターピークの可能性は低い。15のアリルを持つDNAが存在していると考えるのが妥当である。

(2) ④CSFlPOの座位については、鑑定書では「不詳」とされていますが

、1 回日の検査で11のアリルが検出されています。11のアリルは誰からも検出 されていません。このことはどのように考えるべきでしょうか。

【回答】
  11の アリルについては、1回 目の検査で 153RFUという数値が出ている が、2回 目の検査では極めて低いピークしか見られない。1回日の結果はス タターピークである可能性が高い。

(3) ⑥TH01の座位については、鑑定書では「不詳」とされていますが

、1回 目の検査でも2回 目の検査でも9の アリルが検出されています。9のアリル は誰からも検出されていません。このことはどのように考えるべきでしょうか。

【回答】
  ⑥TH01の座位については、 鑑定書で「不詳」とされているのは、1回目の検査と2回日の検査の結果が全く同じではなかったからである。

 1回 目の検査で検出された8のアリル、 2回 目の検査のみで検出された6のアリルについては、いずれもスタターピークである可能性が高い。

 9のアリルについては、1回目の検査で791RFU、2回目の検査で705RFU という数値が出ており、スタターピークの可能性は低い。

 9のアリルを持つDNAが存在していると考えるのが妥当である。

(4) ⑩D19S433の 座位については、鑑定書では「不詳」とされていますが

、 1回 目の検査で 12の アリルが検出されています。12のアリルは誰からも検出されていません。このことはどのように考えるべきでしょうか。

【回答】
  鑑定書で「不詳」とされているのは、1回 目の検査と2回 目の検査の結果 が全く同じではなかったからである。12の アリルについては、1回 目の検査 で 187RFUという数値が出ているが、2回目の検査では極めて低いピーク しか見られない。1回 目の結果はスタターピークである可能性が高い。

(5) ⑬D18S51の座位については、鑑定書では「不詳」とされていますが

、1 回目の検査でも 2回 目の検査でも13のアリルが検出されています。13は誰からも検出されていません。このことはどのように考えるべきでしようか。

【回答】 鑑定書で「不詳」とされているのは、1回日の検査と2回目の検査の結果が全く同じではなかったからである。13のアリルについては、1回目の検査で259RFU、 2回日の検査で423RFUという数値が出ており、スタターピ ークの可能性は低い。

 13の アリルを持つ DNAが存在していると考えるの が妥当である。

(6) 以上の検討結果から、<担任>氏、Cさん本人、Cさんの両親及びCさんの兄弟以外の第三者の DNAがCさん本人のレギンスに付着していた鑑定資料中に存在したと評価することはできますか。

【回答】 ① D8Sl179の座位では「15」 のアリル、⑥ TH01の 座位では「9」 のアリ ル、⑩ D19S433の 座位では「12」 のアリル、⑬ D18S51の座位では「13」 のアリルがそれぞれ検出されている。

それらの型を持つ第二者 (<担任>氏、Cさん本人、Cさんの両親及びCさんの兄弟ではない者の DNAが鑑定資料中に存在したと考えるのが妥当である。

3 <担任実名>氏のDNAの検出に関する質問

  レギンスから採取された付着物に関するDNA型検査結果について、鑑定資料中に<担任実名>氏のDNAが存在したと評価することはできますか。

【回答】 (他 の関係者にはなく)<担任>氏だけが有しているアリルに着目すると、

①D8Sl179の座位について、1回目の検査でも2回目の検査でも11のアリル が検出されていない。
⑩D19S433の座位について、1回目の検査でも2回目の検査でも16のアリルが検出されていない。
⑪vWAの座位について、1回目の検査でも2回目の検査でも14のアリルも18のアリルも検出されていない。
⑬D18S51の座位について、1回目の検査でも2回目の検査でも16のアリルが検出されていない。
⑭D5S818の座位について、1回目の検査でも2回日の検査でも13のアリルが検出されていない。

以上を総合すると、<担任実名>氏のDNAが 存在したことを積極的に示す所見はない。

以 上

別紙 経歴等

氏 名 : 黒崎 久仁彦 昭和 36年9月7日 生 (58歳)
略 歴 : 昭和 62年 3月 筑波大学医学専門学群 卒業
昭和 62年 6月 医師免許取得
平成 3年 3月 筑波大学大学院医学研究科博士課程 修了
医学博士学位取得
平成 3年 4月 東京都医員 (非 常勤監察医) (~現在)
平成 3年10月 千葉大学医学部法医学講座 助手
平成 5年 4月 同 講師 平成 12年 7月 東京医科大学法医学講座 助教授
平成13年 4月 筑波大学非常勤講師 (~ 平成 14年 3月 )
平成13年 4月 北里大学非常勤講師 (~ 平成 17年 3月 )
平成16年 4月 東邦大学医学部法医学講座 教授 (現職)
平成16年 4月 東京医科大学兼任講師 (~ 平成 27年 3月 )
平成24年 4月 東京大学大学院客員教授 (~現在)
平成25年 4月 上智大学非常勤講師 (~現在)
平成27年 4月 山形大学非常勤講師 (~ 現在)
(*は非常勤の職)

その他 :
関東管区警察学校検視専科講師 (平成 17年 7月 ~平成 28年 11月 )
横浜医療専門学校非常勤講師 (平成 18年 4月 ~平成 27年 3月 )
国立保健医療科学院死体検案研修講師 (平成 22年 10月 ~平成 25年 10月 )
日本医師会死体検案研修会(上級)講 師 (平成 26年 10月 ~平成 28年 10月 )
学会活動等 :
日 本法医学学会評議員、同学会法医認定医、
日本DNA多 型学会代議員、 日本人類学会評議員
社会的活動 :
解剖数 2, 020体、死体検案数 10, 110体
(平成 29年7月現在)
研究テーマ :DNA多型に基づ く個人識別
古代遺跡出土人骨の集団遺伝学的系統解析
感染法医学
内因性急死に関する法医病理学的研究

留意事項:担任実名、Cさんの表記は原本では実名で記載されている。

用語などの補足資料

DNA 鑑定についての指針(2012年)
http://dnapol-web.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/dnapol/pdf/guideline-2012.pdf


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