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『ときめきメモリアル30(thirty) あれから10年後…』三十路異聞録(みそじいぶんろく)ペルソナ

詩織「始まりがあれば終わりがあるように、出会いがあればまた、別れもあるのです。
ここ、きらめき高校には、知られざる伝説があります。校庭のはずれにある旧校舎の赤い扉。
その扉の中には、持つ者によって形を変え、大いなる力を授けると言われる無敵の武器「クリムゾン」が眠っているという伝説が…

私、如月 未緒(きさらぎ みお)。
私立「きらめき高校」の卒業生で、今も文学好きの夢見る女の子。
30才独身です。やだぁ、言っちゃった!

私は今、BL同人作家として、夏と冬のコミケだけで稼ぐ生活をしています。
今日は同人誌のネタ探しに、きらめき高校に来てみました。

きらめき高校の知られざる伝説「旧校舎の赤い扉」
当時は怖くて入れなかったのだけど…

如月「あった、これね。よし、せっかくだからこの赤の扉に入ってみるわよ」

扉を開けてみると、中には古ぼけた金属の箱がありました。

如月「何かしら?鍵はかかっていないみたいね…」

私はおそるおそる箱を開けてみました、すると、中には変わった形の銃が入っていました。

如月「これがクリムゾン…?」

その瞬間、頭の中に声が響いて来ました。

越前「クリムゾンに興味があるのか?」
如月「な、なに!?」
越前「フッ、愚かなことだ。この銃に関わると不幸が襲う!」
如月「あなた、誰なの?」
越前「俺の名はコンバット越前。クリムゾンに関わったばかりに、不幸に巻き込まれた男だ」
如月「で、でも、クリムゾンは、持つ者に大いなる力を授けてくれるんじゃなかったの?」
越前「クリムゾンは、あまりに強い力を持ち過ぎている…」
如月「へぇ~、そうなんだ…」

そう言いながら、私はクリムゾンを手に取っていました。

越前「おい、人の話を聞いていたのか?その銃は、使う人間の精神を崩壊させるぞ?」

如月「学生時代ならいざ知らず、そんな脅しで、アラサー女子がビビると思ってんの?
このまま独り身でいたら、孤独死まっしぐらよ。結婚するためには、クリムゾンだろうが何だろうが、使えるものは、何だって使ってやるんだからぁ!」

クリムゾンを手に取った私は、勢いに任せて引き金を引いていました。

如月「う…こ、ここは…?」

気が付くと、私はきらめき高校の校舎の中に倒れていました。
右手には、しっかりとクリムゾンが握られています。

如月「夢じゃなかったみたいね…」

あたりを見回すと、校舎全体に霧がかかっているように見えます。
私は、恐る恐る校舎の中を歩き出しました。

すると、突然、見たこともないような恐ろしい魔物が飛び掛かってきました。

悪魔「ウキャキャー!」
如月「何、何なの!?」

如月「た、助けて…!」
越前「クリムゾンをこめかみに当てて、引き金を引け!」
如月「えっ?」
越前「大丈夫だ、死にはしない!」

言われるがまま、私は引き金を引きました。

越前「よ~し、よくやった。あとは俺に任せろ!」
越前「ボムファイア!」
悪魔「ウギャー!」

越前「大丈夫か?」
如月「ありがとうございます…。えっと、コンバット越前さんでしたっけ…?」

越前「そうだ。お前がクリムゾンの力を発動させたことで、ペルソナとしてこの世界に現れることができた」
如月「ペルソナ…?なんですか、それ?」
越前「分かりやすく言えば、ジョジョのスタンドみたいなものだ」
如月「なるほど、分かりやすいですね~」

如月「それにしても、さっきの魔物みたいなのは何なんですか?」
越前「あれはシャドウだ」
如月「シャドウ?」
越前「人間の負の感情が実体化したもの…と言えば、分かるか?」
如月「分からなくはないですが、なぜそんなものが、きらめき高校に?」

越前「伝説の木だよ」
如月「えっ?」
越前「伝説の木の下で告白して結ばれた恋人たちは、永遠に幸せになれるのだろう?」
如月「そう…ですね」
越前「では、結ばれなかった者たちはどうなる?」
如月「どうなるって、まさか…」
越前「そう、叶わなかった想いは、この学校をさまよい、いつしかシャドウになる」
如月「そんな…」
越前「特にサターン版で、プレイヤーが自分から告白して振られた場合は、かなり強力なシャドウになる」
如月「そうなんですね…ところで、ここって、現実のきらめき高校なんですか?霧がかかっていて、別の世界にいるような…」
越前「察しがいいな。ここは現実世界ではない。シャドウが存在するのは、人間の心の世界。つまり、ここは、お前たち歴代のきらめき高校の生徒たちが作り出した精神世界だ」
如月「元の世界に帰ることは、できないんですか?」
越前「何とも言えないな。だが、先ほどのシャドウからは、強い恨みや憎しみを感じた。もしかすると、その元凶を倒せば、この世界も消滅するかもしれない」

こうして私は、ペルソナとして召喚したコンバット越前と一緒に、精神世界のきらめき高校を探索することになったのでした。

私は越前と学校内を探索し、校庭のはずれにあるプールに向かいました。

如月「そういえば、学生時代は、結局25m泳げなかったのよね~」
越前「油断するな!シャドウが出て来たぞ!」

如月「キャーッ!」

清川「如月さん、上手く避けてね!これでも喰らえ!」

シャドウ「グオォォー!」

清川「さすがにボーリングの玉くらいじゃ、やられないか」

如月「え、あなた、清川さん…?」

清川「そうだよ。久しぶりだね、如月さん」

清川さん、全然変わってないな~。
いきなりボーリングの玉をぶん投げるパワーも全然衰えてない。

清川「シャドウがダウンしたから、一気に片付けるよ!はぁぁぁ~、ペルソナー!」
如月「清川さんもペルソナ使い!?」
清川「来い、マイク・ハガー!」
如月「えっ、ペルソナ、ハガー市長なの!?」
清川「ダブルラリアット!」

シャドウ「グオォォー!」

如月「清川さん、すごい…」
清川「私のペルソナはパワータイプなんだ」

越前「さぁ、先を急ごう」

清川さんを仲間に加えた私たちは、学校内の探索を続けました。

如月「ところで、清川さんはどうやってこの世界に来たんですか?」
清川「うーん、気づいたらここにいたってかんじかな」
如月「そうなんですか」
越前「なぜペルソナが使えるのかは、気になるところだけどな」

そうこうしているうちに、
強力なシャドウが、私たちの前に立ち塞がりました。

如月「清川さん、お願い!」
清川「オッケー、ペルソナー!」

清川「ダブルラリアット!」

清川「ぐわーっ!」
越前「物理反射か!」
如月「清川さん!」
越前「だから、クリムゾンに関わると不幸になると言っただろう?」
如月「なんでちょっと得意げなんですか!」

館林「えーい!」

シャドウ「グオォォー!」

如月「え、あなた、誰…?」

館林「通常キャラの如月さんが知らないのも無理ないよね。私は館林見晴。藤崎詩織を攻略しているつもりが、伝説の木の下に私が出て来て、驚いた人も多いんじゃないかな?」
越前「あるわ~」
如月「越前さん、詳しいですね…って、戦闘中ですから!」
館林「ここは、私に任せて!はぁぁぁ~、ペルソナー!」
越前「物理反射だから、体当たりはダメだぞ!」
館林「大丈夫。来て!獣王記3面のクマさん!」
越前「キター!石化するガスのやつだ!」
館林「ペトリフブレス!」

シャドウ「グオォォー!」

如月「すごい、シャドウが石になって粉々に…」
館林「伊達にコアラみたいな髪型してないよ!」

如月「館林さん…だっけ?あなたもペルソナ使いなの?」
館林「うん、そうだよ。そして、あなたたちが探している人のこと、教えてあげよっか?」
如月「探している人って、このシャドウの元凶のこと?」
館林「そう。私ね、好きな人に体当たりするために、ストーキング能力を磨いて来たから、ペルソナの探知能力も優れているの」
如月「へ、へぇ~、そうなんだ…」
越前「スーファミ版だと、必ず5回は体当たりしてくるよね」
如月「アンタ、ホント、詳しいな!」
館林「じゃあ、探してみるよ~」

館林さんのペルソナ能力で、シャドウの元凶を探り当てた私たちは、生徒会室に向かいました。

そして、扉を開けるとそこには…

詩織「あら、ここまで来ちゃったのね?」
如月「何となく予想はしてたけど、藤崎さん。やっぱり元凶はあなただったのね?」
詩織「ひどいな~、元凶だなんて。パラメータが足りずに告白して来た男たちを振っただけじゃない。それが勝手にシャドウになっちゃって」
越前「うわ~、出た出た」
清川「こいつだけは、全力で叩き潰す!」
館林「私だって、藤崎さんさえいなければ、彼を射止めることだってできたのに!」

詩織「清川さん、それに館林さん。何を言ってるの。あなたたちは自分が何者なのか分かってる?」
清川「なに…?」
詩織「普通の人間がペルソナなんか使えるわけないでしょ。あなたたちがペルソナを使えるのはね~、あなたたちが…シャドウだからよ」
館林「う、ウソ…!」
詩織「ウソなもんですか。清川さん、あなた、エンディングで髪型が違うバージョンがあるでしょ?ショートのと、ちょっと伸ばしてるやつと。今ここにいるあなたは、エンディングに出なかった方…つまり、彼と結ばれなかった方がシャドウとして具現化したものなのよ」
清川「バ、バカな…」
詩織「それからねぇ、舘林さん。あなたは隠しキャラという設定上、どうしても表に出て来ることが出来ない。通常キャラのように彼からデートに誘うこともできない。通常キャラと同じように振る舞えたらいいのに…その想いが、清川さんと同じようにシャドウになったものなのよ」
館林「そ、そんな…」

詩織「そして、如月さん。あなたはクリムゾンの力を使って、ここまで来てくれたのね。私のために」
如月「あなたのためって、どういうこと…?」
詩織「悲しいな~、覚えてないのかな~。卒業式の日に、お別れの握手、したでしょ」

その瞬間、私は強烈なめまいを感じて、地面に倒れ込んだ。

詩織「思い出したぁ?毎回忘れちゃうから、毎回同じこと言わなきゃいけないんだよね。あの時にね、私があなたにペルソナ能力を授けたんだよ~」
如月「えっ…??」

私は強烈な既視感に襲われた。
毎回忘れちゃう…?
毎回同じこと言わなきゃいけない…?
なんだろう、このセリフ、前にも聞いたことがあるような…?

詩織「卒業式の日に私がペルソナ能力を授けるでしょ?そうして、30才の時にあなたはクリムゾンの力を使ってここへ来る。
そして、あなたの力を吸収して進化したクリムゾンの力を使って、私は過去に飛ぶ。そして、卒業式の日にあなたにペルソナ能力を授ける…。
これを何度も何度も繰り返して、私は自分のスペックをどんどん上げて来たの。そして、永遠にきらめき高校のアイドルであり続ける。これ、毎回説明してることだけどね」

越前「初代ファイナルファンタジーの、ガーランドとカオスの関係と同じか!」
如月「この状況だけど、知ってる人には分かりやすいね!」

詩織「さて…タネあかしも済んだところで、毎度のことだけど、全員をぶっ殺して、クリムゾンで過去に戻るとしようかしら」

清川「く、こいつ、許せん…!」
館林「こんなことを繰り返しているって言うのなら、ここで時の鎖を断ち切る!」

詩織「あらあら、私と戦うつもり?いいわよ、相手になってあげる。はぁぁぁ、ペルソナー!」
如月「まさか、藤崎さんもペルソナを…!?」
詩織「出でよ、マガツ・フジサキ!」

清川・館林「ぐわーっ!」

如月「清川さん、舘林さん!」
越前「一撃で…」

詩織「他人の心配してる余裕あるのぉ?そら、死になさい!」

如月「ぐっ…」

悔しいな、やっぱり藤崎さんには勝てないのかな…

越前「おい、生きてるか、おい!」
如月「越前さん…」
越前「今気付いたんだけど、俺って愚か者じゃん?」
如月「はい…?」
越前「タロットカードのアルカナで言うと愚者。歴代ペルソナシリーズの主人公の初期ペルソナなんだよね」
如月「だから…?」
越前「ということは、お前、ペルソナの付け替えができるんだよ!ペルソナの主人公みたいに」
如月「つまり…?」
越前「あの倒れてる二人と、俺とお前と4人の精神力でペルソナ召喚したら、スゲーの呼べるんじゃない?」

ダメだ、こいつが何を言っているか、分からない。
でも、このままだと、また藤崎さんに過去に逃げられてしまう。
何より、クリムゾンの力で、あの女のスペックが、さらに上ってしまうのがシャクだ。

よし、イチかバチか、やってみよう!

如月「清川さん、館林さん、それから越前!みんな力を貸して!ペルソナー、はぁぁぁー!!」

その瞬間、私に大いなる力が舞い降りた。
藤崎詩織に振られた女々しい野郎どもたちも、力を貸してくれているのが分かる。

如月「これならやれる!目覚めよ、そして悪しき力を払いたまえ!キサラギノオオカミ!」
詩織「くっ、これは…!」
如月「藤崎さん、多くの者の無念、思い知りなさい!」
詩織「バカな、私のマガツ・フジサキが押されているというの!」
如月「消えなさい!藤崎詩織!」

詩織「こんなやられ方、友達に噂されたら、恥ずかしいし~!」

そして、私は意識を失っていた。

如月「うーん…」

気が付くと、私は伝説の木の下に倒れていた。
右手には、しっかりとクリムゾンが握られている。

如月「夢じゃなかったんだ…」

時の鎖を断ち切って、藤崎さんはどうなったんだろう?

藤崎「ねぇ、あなた、如月さんじゃない?」

振り向くと、そこには30才相応の藤崎詩織が立っていた。

如月「藤崎さん!時の鎖がなくなって、現代に戻って来たの?ペルソナは?」
藤崎「何言ってるの?新しい小説のアイデア?相変わらず、想像力が豊かなのね。学生時代から、ちっとも変わってないんだから」

良かった。どうやら、普通の人間に戻ったみたいだ。

藤崎「久々にきらめき高校に来てみたら、あなたに会えるなんてね。ねぇ、せっかくだからお茶でもしない?」

藤崎さんと並んで歩きながら、お互いそれなりに年を取ったなと思った。
そして、それも悪くない。
きらめき高校を覆っていた霧は、もうすっかり晴れていた。

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