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ファミクル「家族ライフサイクルを深める」 第4回 子どもとともに変わっていく家族の形:小さい子どもがいる家族の理解とサポート

「小さい子どもがいる時期」の家族は、どのような支援を必要とするのでしょうか? 

新たな家族と出会い、幸せな気持ちに満たされる一方、さまざまな不安や葛藤を目の当たりにしたことがある方も多いのではないでしょうか。この記事では、この時期の家族が直面する課題と対処法について解説します。

新たな家族を迎えた家族への支援を、一緒に考えてみませんか?

小さい子どもがいる時期に求められる姿勢とは

「小さい子どもがいる時期」というのは、家族にとって新たな章の始まりです。この時期は、今まで二人で作り上げてきた「カップル・システム」の中に新たに「子ども」が加わり、子育てが中心的な課題となります。

子どもの出産という大きな喜びを感じ、お互いの絆を深める機会となります。子どもが家族に加わることで、親やきょうだい、家族は新しい役割を担い、成長につながることもあります。

その一方で、家族として、ときには「家(血の繋がりや家系としてのつながりを重視する文化的な意味合いとしての”家“(例えば、田中家を維持することに重きを置く)」として大きな責任を伴う子育てに対して、それぞれの家族メンバーの間の心理的・物理的距離が近くなる時期でもあり、家族内のさまざまな葛藤、過去の傷つきが現れ、家族にとって大いなる試練の時となることもあります。

支援者として、大きな変化だけでなく、ときには小さく感じるような葛藤や心配事に対して、丁寧に向き合うことが大切です。家族が成長し、子どもの笑顔が家庭を明るく照らすためのサポートを考えていきましょう。

カップル形成期における4つの課題

①子どもを含有するカップル・システムの調節
子どもが家族に加わると、カップルは「パートナー」としてだけでなく、「親」としての新しい役割を担うようになります。家族というのは、月日が経つと自然に「ルール」ができ、言葉にしなくても伝わるようになっていきます。

しかし、新しい時期においても「言葉にしない」やり方を踏襲してしまうため、すれ違いが生じやすくなります。特に小さい子どもがいる時期は、子育てで時間を奪われ、夫婦・パートナーの時間が取れずにすれ違いが生じやすくなります。

だからこそ、「親」としての時間だけでなく、「夫婦・パートナー」の時間を意識的に作り、話し合い、お互いの思いや期待を共有し合うことが、家庭生活を維持するためには不可欠となるのです。

②子育て、家計、家事の協働
「子育て」という大きな課題が加わり、カップル・家族で役割の見直しが必要になります。私たちは、自分が育った家庭の文化や考え方を無意識に「当たり前」としてパートナーに押し付けがちです。特に子どもが生まれると、これまでとは違った役割を担う必要があります。

また、家族・子どもの“将来・未来”を見据えた家計管理が必要となります(今まで通りに自由にお金を使えなくなったりしますよね)。

子育てや家事の役割分担は、家族ごとに異なり、一つの正解があるわけではありません。

この新しいステージでは、日々の小さな不安や葛藤をオープンに話し合い、家事を分担やお金の管理など日常生活のさまざまな側面で役割の見直し、ルールを新たに作り直しながら協働していくことが大切になります。

③親と祖父母の子育て役割を含む拡大家族との関係の再構築
現代家族では、核家族が多いですが、祖父母のサポートを受けながら子育てをする家庭も多いです。祖父母は、今までの豊かな人生経験を通した知恵を持ち、子育てに参加してくれることで、親の手助けになるだけでなく、子どもにさまざまな経験をもたらしてくれます。

その一方で世代によって子育てや家族の考え方が異なるため、家族間の距離が近づくことで、ときにはお節介になってしまって、新たなすれ違いや葛藤が生じることがあります。

例えば、嫁姑問題のように、世代の価値観の違いが原因で葛藤が生じたりします。物理的な距離(同居するのか、別居するならどのくらいの距離に住むのか)も関係性を考える上で、重要です。家族同士で話し合い、お互いの考え方を尊重しつつ、世代間の距離感を意識して調整することが大切です。

④新たな家族構造と関係を包含するためにコミュニティと社会システムの関係の再構築
新たな家族構造となるため、職場での働き方の調整や友人との交流の方法の見直しなど、既存のコミュニティとの関わり方を再構築する必要があります。

また、地域社会や教育機関、保健サービスなど新たなコミュニティとのネットワークを築くことも大切になります。

小さい子どもがいる時期を迎えた家族を支援する

小さい子どもがいる時期における家族にどのように支援したらよいでしょうか?以下にいくつかを紹介します。

育児のサポート
この時期の育児は負担が大きく、親はさまざまな不安を抱えがちです。日々の小さな悩みに対しては、傾聴と共感を持って接し、具体的な子育てのアドバイスを提供しましょう。

自分では答えられない場合は、地域の子育て相談窓口(保健師がいる公的機関など)への案内も重要です。また、支援センターで開催されるペアレント・トレーニングや家族向けイベントに参加を促すことも、家族にとって有益でしょう。

夫婦・パートナーの関係性を良くする
お互いに感謝の気持ちを伝え合い、共感し合うことの大切さを伝えましょう。

家族内の役割を尋ねてみましょう。この際、お互いへの“期待”や、家族背景の影響も意識してみるとすれ違いの背景が見えるかもしれません。それぞれの努力や不安などに共感を示しながら、オープンに話し合いができるように促すことが関係性を良くする鍵になります。

また、役割分担は固定したものではなく、体調や仕事の忙しさに配慮し、状況に応じて柔軟に役割を調整することの大切さも伝えるとよいでしょう。

子育てで忙しい中でも、お互いに意識して二人の時間を確保することの大切さを伝えましょう。例えば、子どもが寝た後の短い時間でも、話すことで関係が深まります。可能であれば、祖父母などに子どもを預けて、二人だけで外食するなど二人の時間を確保するのも良い方法です。さらに、パートナーとの性的な関係も大切にし、身体と心の安定を図りましょう。

祖父母などの拡大家族との関係性の構築
祖父母や拡大家族との間の関係性を良好に保つため、家族メンバーのキャラクターなどに応じた適切な“距離”となっているのか意識して話を聞いてみましょう。

もし家族内が近すぎると思うなら、心理的距離を調整する方法として、嫁姑の間に夫が入って、お互いの考え方や気持ちを受け止めるなどの方法を提案することもできます。

同居するのかなど物理的な距離は調整できないことが多いですが、家族内の距離を意識しながら、拡大家族の”知恵”のような良い面を積極的に見出し、共有することで各世代の価値観を認め合えるように、それぞれの知恵を活かす形を模索することが大切です。

経済的支援
家族が経済的な問題に直面している場合、さまざまな公的支援が利用できるため、積極的に紹介を検討しましょう。

また、最近はインターネット上で、個別の家計管理について相談に乗ってくれるサービスもあるため、家計管理の見直しなどについて悩みがある場合には、紹介するのも良いでしょう。

ライフサイクルの重なりに伴うストレス
一般的に、ライフサイクルの複数の時期が同時に起こると、家族には多大なストレスがかかります。

例えば、「授かり婚」ではカップル形成期と小さい子どもがいる時期が重なり、「年の離れたきょうだい」の場合は、思春期の子どもがいる時期と小さい子どもがいる時期が同時に訪れるなどです。これらの状況では、複数のライフサイクルの課題に同時に対処する必要があり、ストレスが生じやすくなります。

ライフサイクルの重なりが見られる場合は、家族支援が特に必要となることを認識し、積極的な支援を検討しましょう。

さいごに

「小さい子どもがいる時期」は、家族にとって多くの喜びとともに、大きな挑戦が待ち構える時期でもあります。この記事を通して、その時期の家族が直面する課題について理解を深め、家族支援を行っている皆様のお役に立てるきっかけになれば大変嬉しく思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回

「家族ライフサイクル理論:思春期の子どもがいる時期」お楽しみに!

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執筆:田中道徳(岡山家庭医療センター)
編集:宮本侑達(ひまわりクリニック)


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