強い「ベネフィット」は「満たされないニーズ」に応える

「強いベネフィット」とはどんなものか?という話です。

「強いベネフィット」は「本能」に根差している、というのが一つ。

もう一つは、何らかの「今満たされていないニーズ」を満たす、ということです。消費者に「これが欲しい!」と思わせるには、「今満たされていないこんな事が、この商品なら解決できますよ」という提案が有効です。しかし、モノがあふれている現代では「満たされていないニーズ」は消費者自身も気づいておらず、商品やサービスを見て初めて気づく、という場合も多いのです。逆に言うと、ヒットしている商品はそういった「消費者自身も気づかなかった、未充足のニーズ」を満たすように作られています。

「満たされていないニーズ」の重要性の例を考えてみましょう。最近みたCMの話です。ひとつはTVのCM。「映像を立体で捉えて、それを再現できます」という訴求をしていました。おそらく、技術としてはすごいのだと思います。ただ、「言われてみれば、映像を立体的に見れれば嬉しい」と思う人がどのくらいいるかが問題です。もうひとつも同じTVの広告ですが、こちらは「事前に録画予約をしていなくても、1週間分の録画データはすべて録ってあるので、話題になった番組も後から見れます」という訴求をしていました。こちらは「言われてみれば、後からTV番組が見れれば嬉しい」という未充足のニーズがある気がします(あくまで主観です)。大事なのは消費者目線で考えた時に、「言われてみれば、これが解決できたらよさそうだな」と思ってもらうことだと思います。言い換えれば、消費者自身も気づかない生活上の「不」を解決する、ということでしょうか。

ヒットした商品は、このような「消費者自身も気づかない、でも言われれば満たされていないニーズ」を満たしている場合が多いです。そういった「未充足のニーズ」を満たすベネフィットは強いベネフィットと言えるでしょう。ただし多くはコミュニケーションだけで解決できる話ではなく、新商品・新サービスという形で出現します。

例を挙げてみましょう。

①オフィスグリコ

僕も良く使っています。無い時は特に不都合を感じませんでしたが、自分自身でも気づかなかった「わざわざ買いに出ることなく、仕事場でお菓子を食べたい」という未充足のニーズがあったと言えます。

②コンビニのコーヒー

こちらも同様です。無い時代は特に不都合を感じませんでした。未充足ニーズは「わざわざ喫茶店やコーヒーショップで買わなくても、ひきたてのコーヒーを手軽に買いたい」です。ちなみに、コンビニがやる前にマクドナルドが似たようなニーズを捉えてコーヒーを販売しています。

③クラフトボス

こちらも同様です。未充足ニーズは「喉が渇いたときは、お茶と同じようにコーヒーもごくごく飲みたい」でしょうか。これも、これまで無くてもそこまで不都合を感じることはなかった気がします。

④Wii

古いですが、これも同様です。未充足ニーズは「(今までゲームをやらなかった人も一緒に)みんなで、ゲームを楽しみたい」です。ゲーム市場を拡大した良い例だと思います。ちなみにWiiが出た時にプレステ3も出たと思いますが、その訴求は「画質」「ブルーレイ」など、あくまで機能中心だった印象があります。(未充足ニーズの話とは少しずれますが、この2つは「消費目線で便益を売る」任天堂と「企業目線で機能を売る」SONYのちがいが出ていて面白いです)

ここで、「ん?」と思われた方もいるかもしれません。「不都合が無かった」と書いてあるとも関連するのですが、「そんなことニーズを持っていた人が本当に存在していたのか?」という疑問です。クラフトボスなんかはそう思っていた人もいそうですが、コンビニのコーヒーなんかは少なかった気がします。この感覚はおそらく正しく、僕の理解では「未充足ニーズ」は「発見する」と「作り出す」の中間あたりにあるのではないでしょうか。では、このような未充足ニーズを発見したり、作り出すにはどうしたらよいでしょう。

梅澤伸嘉氏の著作にあり、体系化されていて分かりやすいのは「キーニーズ法」です。内容は下記です。①消費者がやりたくないが、やっている行動を発見する②その根本にあるニーズを把握する③行動の問題を裏返す。強いニーズは行動に現れます。

例えば、オフィスでお菓子を食べる、という行動に注目します。この時の行動とその大元のニーズは

■行動:コンビニに行ってお菓子を買っている。

■ニーズ:仕事中、小腹を満たしたい。

になります。その一方で、「その行動」の問題を考えます。

■行動の問題:わざわざコンビニに行くのは面倒。

この問題を裏返し、大元のニーズとつなげると「コンビニに行くことなく、仕事中にお菓子を食べたい」という未充足ニーズが出てきます。それはそのまま「コンビニに出かけることなく、仕事中小腹が満たせる」というベネフィットになります。このベネフィットは、オフィスグリコだけでなく、例えば自販機でお菓子を売る、といった手段でも満たせるでしょう。(そういうサービスはあるはずです)

こういった「未充足ニーズ」を捉えた商品やサービスは、いわゆる「市場を作る」商品も少なくありません。身近にある商品はどんな未充足のニーズを満たしている/いたのか、を考えても面白いかもしれません。

機会があれば、このような考え方を基に、実際に商品やサービスコンセプトを妄想してみる、という記事を書いてみようと思います。

参考:梅澤伸嘉「消費者ニーズ・ハンドブック」同文館出版



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