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国家総合職教養区分対策のすべて

※情報が古い可能性があるので、最新の情報は公式の情報を参照してください。

1、国家総合職(教養区分)とは?

 国家総合職(教養区分)は国家総合職になるための大卒程度の試験です。国家総合職とは、いわゆるキャリア官僚と呼ばれる職員で、国の政策立案を行う国家の中枢を担う職員です。一般職に比べ、昇進が速く、ゼネラリストとして様々な部署に配置されるのが特徴です。
 総合職になるためには総合職試験に合格する必要があります。様々なバックグラウンドを持った人を幅広く採用するため、様々な試験区分が設けられていますが、教養区分はその1つです。大卒区分を大きく2つに分けると専門区分と教養区分に分かれます(院卒区分は専門区分の他に司法試験合格者枠として法務区分を設置しています)。専門区分は法律や経済など大学の専攻に対応する形で細かく区分が分かれています。一方、教養区分は専門区分で対応しきれない分野を専攻する人や外国の大学の卒業者など既存の専門区分では拾いきれない有為な人材を確保するために平成24年度より新設された区分であり、大学で学ぶ専門知識が要求されないため、幅広い方(というより誰でも)に合格するチャンスが与えられている試験といえます。
 また、他の区分が春に試験を実施するのに対し、この教養区分は秋に試験が実施されます。
 そして、教養区分は19歳(受験年度の4月1日時点)から受験することができるので、(現役生であれば)大学2年生の秋に受験をして、その後は民間就職に専念することができるので、民間との併願を考えている人にもおすすめです。また、これは国家公務員総合職試験・一般職試験(大卒程度)全般に言えることですが、試験に最終合格(後述。民間でいうところの書類通過)から官庁訪問(後述。民間でいうところの採用面接)まで6.5年間待ってくれるので、院に進学予定の人にもおすすめです。
また、これはほぼすべての公務員試験にいえることですが、受験料は無料です。そして、教養区分に落ちたとしても、専門区分でリベンジすることができるので、基本的に受験するデメリットは皆無といってよいでしょう。
 ちなみに教養区分の1次試験で課される基礎能力試験は専門区分の問題を少し簡単にした程度で出題内容は極めて類似しており、2次試験で課される総合論文試験は専門区分の政策課題論文(大卒区分)に類似しており、人物試験と政策課題討議にいたっては全くおなじものが教養区分でも専門区分(政策課題討議は院卒区分のみ)でも課されます。また、企画提案試験は教養区分オリジナルのものですが、実はこれは官庁訪問でも求められるスキルと共通しています。ということで、実は専門区分をメインで考えている人にも、その予行演習として大きな意義があります。※このノートでは、官庁訪問対策については取り扱っていませんのでご注意ください。

2、どの程度対策するか(総論)
 問題は受験をするとして、どの程度受験の準備をすればよいのか、ということです。というのは、国家総合職になる場合、教養区分と専門区分があるわけですから、教養区分の対策に時間を割きすぎると、専門区分に割ける勉強時間が減って専門区分の合格率が下がり、トータルの合格率が下がってしまうからです。
 加えて、教養区分は専門区分と異なり、総合論文試験などなにかボヤっとしてものが配点の多くを占めるため、対策が打ちづらく、努力と合格率が必ずしも比例しないという現実があります(逆に言えば、コツをつかめば、ほとんど勉強しなくても合格する可能性が十分にあります)。
 そのため、ある程度勉強をしたら、勉強を打ち止める勇気が必要になります。そこからの努力は一般にコスパが急激に低下するからです。
 詳しい勉強方法は後に譲ります。

3、試験内容
 一次試験と二次試験に分かれています。
一次試験は「基礎能力試験Ⅰ部」「基礎能力試験Ⅱ部」「総合論文試験」
二次試験は「企画提案試験」「政策課題討議試験」「人物試験」
から成ります。
 配点は「基礎能力試験Ⅰ部」が28分の3、「基礎能力試験Ⅱ部」が28分の2、「総合論文試験」が28分の8、「企画提案試験」28分の5、「政策課題討議試験」が28分の4「人物試験」が28分の6です。ただし、すべての科目に基準点(最低評価)が設定されていて、それを1科目でも下回ると足切りになります(もっとも、2次試験の足切りはほとんど意識する必要はありませんが…)。ちなみに、科目ごとに満点が決まっているわけではなく、相対評価で点数が算出されます(詳しい算出方法は受験案内を確認してください)。
 一次試験に合格しなければ二次試験に進むことができませんが、総合論文試験は一次試験の合否判定に用いられず、合否判定は基礎能力試験Ⅰ部とⅡ部の得点のみで行われます。
 つまり、総合論文試験の得点は、二次試験に進んで初めて合否判定に用いられることになります。そのため、基礎能力試験Ⅰ部とⅡ部の得点で足切りが行われ(約4倍)、総合論文を含めた4つの試験(+外部英語試験。後述)でさらに2倍まで絞り込まれるというイメージを持っておけばよいでしょう。なお、これらの試験とは別に、TOEICやTOEFLなど外部英語試験の結果に応じて別途15点or 25点の加点を受け、合否判定に用いることができます。全体としての倍率は8倍程度です。ただし、倍率は近年減少傾向にあります。試験の内容は、変更される可能性があるので、最新情報は、必ず公式の情報を参照してくさい。

⑴一次試験
 一次試験の倍率(足切り)は約4倍です。基礎能力試験Ⅰ部とⅡ部は、どちらのマークシート式の試験です。
 Ⅰ部では「文章理解」分野から8題、「判断・数的推理(資料解釈を含む。)」分野から16題を、試験時間2時間で解きます。
 Ⅱ部では「自然科学」「人文科学」「社会科学(時事を含む。)」の分野から各10題の計30題を、試験時間1時間30分で解きます。
 総合論文試験は、与えられた課題に沿い試験時間4時間で小論文(2題)を作成する試験です。課題は2問出題され、1つは「政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの」、もう1つは「具体的な政策課題に関するもの」となります。

⑵二次試験
 一次試験合格者が受験できる二次試験の倍率は約2倍です。
 企画提案試験は、小論文作成とプレゼンテーション・質疑応答を組み合わせた試験です。
 まず、与えられた課題と資料に基づき、課題の解決策となる政策を企画し、2時間で小論文にします。その後、個室で試験官に対し企画した政策をプレゼン(5分)し、試験官と質疑応答(約20分)を行います。
 政策課題討議試験は、グループディスカッションが中心となる試験です。まず、与えられた政策課題について、自身の考えをまとめたレジュメを20分で作成します。その後、6人がそれぞれ、自分の考え方について発表を行います(1人2分)。その後、6人ほどのグループでレジュメに基づきグループディスカッションを行います(30分)。5段階評価で最低のE評価は足切りになります。
 人物試験は、面接試験です。事前に「面接カード」というエントリーシートのようなものを作成しておき、当日は面接カードに基づき20分程度の面接を行います。5段階評価で最低のEは足切りになります。

4、対策をはじめる前に
 試験勉強を始める前にやっておいてほしいことが2点あります。
 1点目に過去問を入手することです。試験の形式が独特なので、過去問を徹底的に研究する必要があります(特に一次試験の基礎能力試験)。市販ではなかなか売っていないので、ネットで探すか、もしくは問題だけなら人事院に請求するという方法もあります(詳しい請求方法はネットで検索してください)。ただ、この場合には、問題しか手に入らないこと、入手するまでに1か月ほどかかることに留意してください。そのため、早めに動き始めることが重要です。
 2点目に英語資格をそろえておくことです。資格を持っていない人は確実に用意することをお勧めします。というのは、求められているスコアがそれほど高くなく(例えば15点加算はTOEIC600点、25点加算はTOEIC730点・英検準1級合格など)、逆にスコアを持っていないと差をつけられてしまうからです。なお、どの試験が使えるのか、いつまでの資格が有効か、内部試験は認められるかなど細かい決まりが色々あるので、詳細は募集要項を確認してください。申込みから結果が届くまで、時間が相当かかるので早めに日程を組んでおきましょう。ちなみにこだわりがなければTOEICがおすすめです。対策としては『完全改訂版TOEIC(R)テスト 直前の技術』を読んで、公式の過去問集を何回かやれば十分でしょう。英語資格は国家総合職の他の試験区分にも使えます。

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