雨のウェンズデイ

つめたい雨が降りしきる向こう側を
しりめにホットココアをひとつ

無造作に積み重ねられた冒険小説のジェンガは
まるでピサの斜塔、いいや、むしろサグラダ・ファミリアか

あれ、何だか様子がおかしい
塔のいちばん底にあるものに違和感
本にしては厚みがない、何かもっと薄いもの、そうか、あれはCD
ああ、たしかずっと昔、知り合いに借りたままそのままになってしまったんだっけ

あの娘は魔法使いって誰かが言ってた
またその娘に会えたのなら
きっと返そうと思う

そういや、CDではメイン曲をA面、カップリング曲をB面というらしい

ふと雨の路地に人影が横切る

わたしにとってはA面でも
あなたは他の娘に夢中
Mr. ボンドは器用だった

友よ 濡れた丘の上で笑い合う幻を笑えばいい
友よ そうね、あなたは悲しい奴

けれど嫌でも想像してしてしまうの
もしも片時でもB面を聴いてくれていたのなら
それがわたしの幸福論
あなたの哲学や言葉がすべて守られますように

モノクロームな写真さえ撮らないで
わたしたちはさようならするけれど

忘れられたなら
その時はまた会える

東へ還る三月の旅人よ

今日は雨のウェンズデーだもの














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