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叶い石と消えた夢

島根県の松江市には三方山に囲まれた玉造温泉がある。
この温泉地には宍道湖に注ぐ玉湯川が温泉街の中心を流れている。
川を挟んだ左右には宿、お土産屋、飲食店が立ち並び、温泉地ならではの風情がある。
春休みで広島から遊びに来ていた息子の11歳の子供と、川岸に咲く桜を見ながら時々は玉湯川に湧き出る温泉で足湯しながら温泉街を散策する。

玉湯川の足湯

温泉街から外れた所に神社の鳥居を見つける。玉作湯神社と書いてある。鳥居をくぐると、二つ目の鳥居があり、そこをくぐって階段を上がると拝殿があるようだ。階段の下に立てられた板には「叶い石(お守りづくり)」と書かれている。
赤い矢印も書かれていてその下に「階段を上られる前に社務所でお授かりください。」と書いてある。
矢印にしたがって社務所に行くと、お守りセットが30セット位用意されていた。お金を払うと「お好きなお守り袋をお取りください。」と言われ、子供と私と一つづつ選んで取る。
お守りセットの中身はお守り袋、叶い石、願い札の3点が同梱されていた。
お守りの作り方の書いてある「願い石、叶い石参拝手順」も渡された。

鳥居をくぐり、苔っぽい階段を滑らないように慎重に登って行く。
手順に従って手水舎でお清めをし、拝殿をお参りした。
ここで叶い石を袋から出して御神水で清める。子供の選んだ叶い石は透明感のある淡いピンク色だった。
私の選んだ叶い石はなんと真っ黒。
手順書の中に「叶い石は色や形が様々で、選んだ石は実は石の方があなたを選んでくださっている。」と書いてある。
益々石の黒は気になるが、オニキスと思えば「成功、厄除け、夫婦の幸せ」の石言葉になる。とりようでは違ってくる。
次に御神水で清めた叶い石を、長径30センチ位の球体の願い石に直接触れさせ、心の中でお願い事を唱える。そうする事で願い石から叶い石に御力が吹き込まれるらしい。
その後、拝殿にもどり複写になってる願い札にさっきのお願い事と、住所、氏名を書いて、一枚は願い札入れの木箱に投函する。後で宮司さんが御祭神へお取り継ぎをしてくださるそうだ。
一枚は叶い石ともどもお守り袋に入れて、お守りの完成だ。

さて、子供は何のお願いをしたの聞いてみた。「世界一のバスケット選手になる。」と書いたようだ。
私に何を書いたのか聞かれたがなぜか言葉が出てこなかった。
子供は「世界平和って書いた?」と聞いてきた。益々言いづらくなった。
実は身近な幸せを細々お願いしたので、子供の世界規模のお願い内容に恥ずかしくて言えなかった。
10年前までは仕事でも、物欲でもそれなりの夢があったのに、いつの間にか平穏無事な日常のお願い事をするようになっている。
人の人生には必ず終わりが訪れる。
ついつい先が見えてくると守りに入ってしまい、叶えられそうでない事は無責任に言えなくなた。
若い頃は目的、夢に向かって倒れ込むまでやり続けると思ってたのに、いつのまにかこじんまりとした目的に変わってしまっていた。
家に帰って過去抱いていた夢のおさらいをしてみよう。
まだまだ叶えられる夢があるかもしれない。体力さえあればまだまだ諦めずにきっと向かっていける。
11歳の子供から活力をもらった気がした。


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