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【おうちで発酵・漬物】#9 「青菜」と書いて「せいさい」と読む、分厚く長〜い北国の菜っ葉:山形の「青菜(せいさい)漬」

「せいさい」という菜っ葉をご存知だろうか。「青菜」と書いて「せいさい」と読む。主に山形で生産される漬物用の菜っ葉だ。
葉が分厚くて固いので生食には適さず、干してしんなりさせてから塩漬けや醤油漬けにする。長い冬には欠かせない保存食のひとつで、かつて秋田の実家ではせいさい漬と、せいさいを刻んで大根や人参と合わせて漬けた「おみ漬け」がよく食卓に並んだ。山形の食べ物ではあるが、お隣秋田でも売られていたのだと思う。

そんな青菜をこの秋、ひょんなことから入手した。
昨春突如として梅にはまった私は、全国の様々な品種の梅をメルカリを使って入手する術を覚えた。
メルカリは個人取引なので、流通ラインに乗らない小規模売買に実に都合が良い。買い手が了承してさえいれば、個人宅の庭で採れたみかんや梅(実は稀少品種だったりもする)を譲ってもらうこともできる。おかげで現地へ行っても買えないかも知れない稀少な梅を、昨年は随分手に入れることができた。ありがたい限りである。

そのメルカリを、梅の季節後も時折見ていた。ひょっとしたら新たな出会いがあるかも知れない。そうして首都圏では買えない沖縄のへちまや四国~九州のへべす、秋には山形のあけびを数十年ぶりに食べた。美味しかった。
そんなある日、目に飛び込んで来た青菜(せいさい)。商品ページには「今年最後の出品になると思います」と書かれていた。
迷った。まさか生せいさいが手に入るとは。幾分割高ではあったが、青果物の収穫期は短い。今を逃すと一年待たなくてはならず、来年また同じように買えるとも限らない。数分間迷った末に、えい!と購入ボタンを押した。

そうして届いた青菜2kg。
まず箱の大きさに驚く。もともとの箱の長さでは足りず、切り開いて継がれていた。漬ける前の青菜を見たのは初めてだが、遠方に出回らないことに瞬時に納得した。大きい。長さ70~80cmはある。それに分厚い。傷付けずに輸送するのは難しそう。だからこれまで見なかったのね…

厚くて長~いせいさいの葉っぱ。計ったら長いのは80cm近くあった

その日のうちに早速天日干しした。
山形の漬け方を調べたところ、短くとも3~4日、長い場合は10日程度干すと書かれていたが、それは日照時間の短い北国(それも昔の気候)のお話。横浜の強い日差しの下では2日も干すとこの通り。

干すといくらか縮むので扱いやすくなります

複数の漬け方を参照した上で、今回はまず4%の塩で下漬けし、その後べっこう色にするため醤油ベースで本漬けすることにした。
私は古漬けっぽい色と酸味が好きなのでやや長めに漬けたが、鮮やかな緑色を残す場合は塩漬け後、早めに冷蔵庫へ移すのが良いと思う。

《山形のせいさい漬(醤油漬)の漬け方》

①青菜は干した後丁寧に洗い(特に根元は土がたまりやすいので念入りに)、薄い葉先が内側、厚い茎の部分が外側に来るようひと株ずつくるくると4~5つ折りに巻き、隙間なく漬物樽に詰めて行く。一段ごとに塩を振り、なくなるまで繰り返す。今回青菜2kgなので塩は80g。

②できるだけ早く水を上げるため、内蓋の上に重石(手持ちは3.5kg)をのせ、更に酢や酒の瓶をのせて材料の3倍程度の負荷をかけ、蓋をして漬ける。今回は翌日に内蓋の少し下、2日後にはしっかり蓋を覆う水位に水が上がったが、翌日に水が出ていない場合は呼び水をする。

11/20に届き、11/22に塩漬け

③塩漬けして3日ほど経ったら本漬けに移行。
青菜は出て来た水分をしっかり絞ってざるに取り、漬物樽も一旦綺麗に洗って乾かしてから再度詰め直す。
乾かす間に漬け汁を用意。6kgの漬け方を2kg用に計算し直したので少々半端だが、今回はこの分量で漬けた。

《本漬けの漬け汁材料》せいさい2kg分
・醤油:120cc
・ざらめ:20g
・みりん:23cc
・焼酎:23cc
・昆布、鷹の爪:お好みでそれぞれ適量

よく混ぜて青菜の上から回しかけ、再度内蓋⇒重石⇒蓋をして漬ける。
この時点ではこの色と見た目。今回の漬け汁は材料に対してかなり少なめだが、それでも翌日には水が上がって内蓋を覆う水位となった。葉が厚い分、含んでいる水分も多いのかも知れない。

11/25に本漬け開始

④本漬けから数日で食べられる(塩漬け段階でも浅漬けとして食べられる。これも美味しいのでお好みで)。好みの色と味まで常温で漬け、以後冷蔵庫へ。今回は本漬けから10日程で冷蔵庫へ移した。

12/8の様子。良い感じのべっこう色。酸味もいい感じ

初めてでも割と美味しくできて満足。夫も「酸味がいいね」と喜び、義母にも食べさせたいと帰省時手土産にした。秋田市の義実家でもやはりよくせいさい漬を食べていたそうだ。いつも買うのは緑色の浅漬けだったので、私の古漬け風も良いねと義母も喜んでくれたそう。よかった。

いずれの漬け方でも、葉が厚くてシャキシャキしているのがせいさいの魅力。厚みがあるので長く漬ければ味が深まり、様々な味わいを楽しめる。
この厚みは他では見ないのでてっきり独自のものかと思っていたら、先日帰省した際、父がせいさいを「高菜」と呼んだので驚いた。どうも父の実家近く(寒河江付近)では「高菜」と呼ばれているらしい。
調べたところ、九州の高菜も山形の青菜も同じ明治期に中国南部(四川〜重慶の辺り)から伝わった種に各々の在来種を掛け合わせてできたものらしい。掛け合わせた在来種の違いからか、或いは九州と東北の気候の違いか、両者を食べた感じは割と違うので今まで全く気付かずにいた。菜っ葉の世界は深い・・・。

さて、せいさい漬けができたら是非つくりたいものがあったが、長くなったので別投稿に。冒頭写真でバレバレですが、もう1品あるので別に書こうと思います。

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