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【新たな概念】Scope4とは何か?

最近、我々の業界では"Scope4"や"削減貢献量"という言葉を目にしたり、耳にしたりする機会が増えてきました。
私自身もまだまだ勉強中のため、
それって結局なに?どうやって評価するの?
という疑問がモクモクと湧いてきたため、国内外の情報をリサーチしてみました(現在進行形ですが、、、)。
調べる中で、個人的に分かりやすくまとめてくれているなぁと思うサイト(https://eco-act.com/emissions/avoided-emissions-target-setting/)がありましたので、私自身の理解を深める意味も込めてその内容をご紹介したいと思います。


Scope4とは何か?どうして重要なのか?

前提の部分になりますが、ここ数年、一部の企業ではScope1~3までのCO2排出量算定及び報告、情報開示が求められるようになり、各社がそれに対応するという流れがありました。
この流れのそもそもの始まりとしては、COP26の直前にSBTiがネットゼロ目標を設定するための世界基準を発表したことだと言われています。
地球の気温上昇を1.5℃に抑えるには事業活動およびバリューチェーンの排出量を迅速かつ大胆に削減することが不可欠です。記事を執筆している団体が2021年に上場企業を対象に行った調査では、ほぼ2/3(65%)がネットゼロに取り組んでいることが分かりました。
ですが、気候変動による最悪の影響を回避するには、更なる対策が必要であるということも同時に判明しています。
脱炭素社会への移行を加速させる上でScope4も加味した評価をしていく必要があるよね、という流れになってきたようです。
( Scope4と同義で使われるキーワードとして、削減貢献量、排出回避量、カーボンハンドプリント、クライメイトポジティブなどが挙げられます)

各Scopeの整理

Scope4ってなに?そもそもScope1~3もなんだっけ?
という方もいらっしゃると思いますので、ここで一度各Scopeの意味合いについて簡単に整理をしておきたいと思います。

Scope1:直接排出量(発電や車・船・飛行機などを動かすための化石燃料の燃焼、セメントや鉄など製品の製造過程で起きる化学反応によるものなど)
Scope2:間接排出量(他社から供給される電気や熱の利用など)
Scope3:その他の間接排出量(従業員の通勤や出張、サプライチェーンの排出など)
(NEW!!) Scope4:企業がビジネスを通じてGHG排出削減に貢献した量(削減貢献量:Avoided emissions)

Scope1~3が排出量なのに対して、削減貢献量を算定するのがScope4の特徴と言えます。

Scope4の算定方法について

Scope4の算定は、製造者と消費者のダブルカウントの問題、ベースライン(旧製品)との比較の難しさなどからグリーンウォッシュの懸念も指摘され、なかなか取り組みが進んでいない状況でした。
しかしその必要性・注目が高まってきたこともあり、様々な団体が削減貢献量の算定の範囲や方法等について検討を始めているようです。
いまのところ算定に関して特定の基準はないものの、ガイダンスはいくつか出てきているようで、記事ではそのうちの1つとして下記のフレームワークが紹介されていました。

1. The Avoided Emissions Framework – Mission Innovation

Mission Innovation が開発したScope4算定のためのフレームワークになります。
計算式は、CO2排出量を求める際に使用する計算式と同じなようです。

        Scope4 = 活動量 × 回避係数

Source: The Avoided Emissions Framework, 2019

回避係数の計算は複雑であり、既存の学術研究や業界研究、あるいは関連データと合理的な仮定に基づいて算出する必要があります。
AEFは、削減貢献量を定量化するために8つのステップを設けています。
下の図では直線的に示されていますが、実際には反復的なプロセスになる可能性もあります。

Source: The Avoided Emissions Framework (AEF)

算定を行う際には、AEF は削減貢献量の評価がGHG プロトコルの会計および報告の関連性、正確性、完全性、一貫性、透明性の原則に従うことを期待しています。
これは、ISO 14040およびISO 14044に規定されているライフ サイクルアセスメント (LCA) の原則にも従うこととなります。

また正味回避排出係数は、以下で示す2つの効果によって決定されます。

Source: The Avoided Emissions Framework (AEF)


記事では、World Resources Institute (WRI)が出している算定手順も紹介をしていました。
気になる方は是非チェックしてみて下さい。

実際に算定を行っている企業

以下、独自に算定を行いその結果を開示している企業になります。
● 帝人
● コニカミノルタ
● Walmart
● Trane Technologies
● Neste
● BT
● Linde

まだ算定は行っていないが今後算定・開示に取り組んでいく、としている企業も出てきており、算定のための基準策定に関する議論は急速に進んでいくかもしれません。

今後ガイドラインがどのように固まっていくのか、各企業がどのように対応をしていくのか、引き続き注目をしていきたいと思います。

上記のようなリサーチはもちろん、LCA算定やScope3評価、生物多様性評価などもやっておりますのでご相談があればお気軽にお問い合わせください。

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