見出し画像

柴犬ロケット

やあ、今朝は涼しすぎたな。
可哀想だったので温めてやろうとアルジのベッドに飛び乗ろうとしたら、足でエイヤと落とされてしまった。俺は換毛期真っ盛りにあるとはいえ、傷ついたぜ。

さて、アルジは大学時代・国研時代いろんなプロジェクトに首を突っ込んできた。写真は組み立て中のロケットのどっかだ(公開許可済)、このうちアルジが関係するユニットが写っているらしいのだがどうもよくわからない。

ちなみにこの機体は打ち上げに成功し、切り離されてあっという間に燃えつきてしまった。カウント5時間から動作して、打ち上げ後50分のわずか6時間の寿命だったが、開発に6年、製造に2年かかったらしい。

この数百万個の部品が、いろんなアイディアや商業的期待を背負い、気の遠くなるような手作業でつくられ、それがまた特許と研究開発に支えられているなんて、まるで俺だ(意味不明)。

要は、全体も大事だが、一つ一つがきちんと機能して初めて全体が動く。まるで俺と俺の家族のようだぜ(さらに意味不明)。こっそり、部品に名前でも書きたい会社の社長や技術者もいるかもしれないが、しかし、そんな余計なことをする(考える)ヤツは一人もいない。皆、成功を目指して一生懸命考え、交渉し、打合の上組み上がったのがこの機体だ。

とはいえ、実は俺の家族とモノクロイメージはこのロケットに搭載され、現在地球を楕円軌道(近:3百km、遠:3万km)を9時間かけてまわっている。(2016年打ち上げ)

えっ、余計なことして失敗したらどうするんだって? 実は誰でもOKだ。メッセージはJAXAが募集していてデジタル化されて、アルミ板に刻まれてあと数十年は地球の周りをぐるぐる回るはずだ。(残念ながら少しづつ高度を落とし、そのうち燃え尽きてしまう)

強引にまとめてしまおう。俺の柴犬ロケットはアルジの全体の数億分の1の努力もあって成功して、燃え尽きた。その夜、アルジは発射台に戻って「ありがと」繰り返しながら、床コンクリを撫でていたが、冬にも関わらずエンジン噴射熱でまだほんのり暖かかったらしい。

俺のメッセージを搭載した衛星が落下する2100年頃、まだ南極に氷はあるだろうか?、東京の自宅はまだ海面の上にあるだろうか?そして、ワンコが駆け回る野山はまだ青々しているだろうか?

ではでは、この辺で失礼する。最近、俺は食欲が無くて、散歩も短くて寝てばかりいる。そのうち点滴でもされるんではないかとヒヤヒヤだぜ。

打ち上げ時のアルジは、固唾飲むどころか呼吸が止まってた
ブースターを切り離し、さらに加速しながら種子島の空を駆け上がるH2ロケット
国境を超えて自然に湧き上がる『go!go!』の大合唱
一仕事終わったアルジとロケットが空に残した足跡




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?