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チンチリレンの替え歌

チンチリレンといえば、長唄「京鹿子娘道成寺」や「吉原雀」で使われる、支度のためのツナギの合方です。
合方というのは、歌がない、伴奏だけの部分、現代曲でいうところの、「間奏」にあたります。

そのチンチリレンの合方には、唄があるというのを昔聞いたことがありましたので,改めて調べてみました。

すると、チンチリレンの替え歌は、東明流の創始者・平岡吟舟が座興で作ったそうで、これを杵屋栄蔵が手元に保管していたことがわかりました。
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ここでは、その歌詞を紹介いたします。

つんつるてんの着物を着て、帯は、胸の上にしめ、手に土産包み持ち、ゆうべ、寝ずの今朝、目やに。首は前にソォ、突き出してぞ急ぎ来る。正月・藪入り息子、母あわてて、「まあ、よう来た、ササ、こちらへ上がらんせ。飯ゃどうじゃ、茶どうじゃ、菓子どうじゃ、湯どうじゃ。いやか、そうか。坊や、麻裏草履、脱いでくれ。せっかく拭いた板の間が汚れる。」
父(とと)はニコニコしながら、財布の中を調べて、「あるとも、あるとも。これだけあれば今日一日はたりそうだ。やれこい息子。早うせんと間に合わぬ。天金をば食わせ。十二ヶ月を済ませ。そばァ(は)月勝、すしは与兵衛。みつまめ一杯、粟餅一本。これから浅草仲見世みたら、奥山辺りで江川の玉乗り、続いて入る源氏筋。屋台の団子もまたよかろ。炒りたてエンド(ウ)を袂(たもと)に入れて、食べたり飲んだり、飲んだり食べたり、よってたかって聞く蓄音機。いきのためしのくだをば吹いて、珍世界から水族館、帰りはちょっとお手の筋、易者、見まして申すには「ケンガケンショウ、どうやらこの子は、出世します」と、親バカな、チャンコロリン、ベラボー
 大喜びで電車に飛び乗る、五時三十分、往復切符のありかを忘れて、まごまごするとスリに取られたカラ財布、どうこうする間に、やっとの事で、親子二人は帰りくる、たちまち、もよおすさし込みに、続く厠の通いずめ、「これさおっ母(かあ)、どうしようか」「サー、マ、大変ですよ、これさ、こちの人。医者呼んで来ましょうか。西洋漢方なんでもよろしい、針医に、あんまに、とりあげ婆さん。早く治してご主人に、帰さにゃならぬこの息子。向こう横丁の車にのせて、ハイハイハイハイハイ帰しゃるので、ほっと息をつきました。
くたびれた。

「チンチリレンの合方に唄ひこむ唄とカツコ合方へはめこむ唄」杵屋栄蔵 1951年6月(日本音楽社 6(6))

さいごの「くたびれた」に、「トチチン トン シャン」と,ルビが打たれてありました。

考えるに,2杯(同じ旋律を2回繰り返す)するのではないかと思いますが,実際、メロディに歌詞をあてはめていくと、ハマりがわからない部分もあり、判然としません。

歌詞のハマりはのちの課題としまして、今回は、珍しい、チンチリレンの替え歌の全貌をお送りしました。

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