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満ちる月に

その亀裂はとても多く細かく、蜘蛛の糸のように張り巡らされたように感じていた。仕事と家の往復であってもつまらないなど感じることなく生活出来る瞬間があることを知っていて、それであればこそこなせることも多くなる。常日頃から些細なことに気付いては変化を慈しむ心の余裕が保てていれば、そこそこの生活さえ営めていれば問題なく人生は良きものになると思える日々も確かにあるのだ。

けれど私が今まで生活してきた中で安寧も安定も平穏もなかった。眼を瞑って大人になった成長したと思って過ごしてきたように思えても、細胞は忘れてはおらず古傷は痛み亀裂はより深くなっていく。結果手放せていなかったものをないがしろにして文字通り忘れていただけ。皮膚にフィットして身体の一部になっている指輪のようになくなれば気味が悪く感じるようなものを纏っているだけだ。

深淵を視る、そこにはとても大きな眼がひとつ。色のない深淵に眼だけは爛々とあって、こちらを視ている。

大人になるとか。
傷の有無とか。
成長がとか。
安定とか。

その日によってどちらにも流れてゆく、どれもその時には正しい。周りがどうであれ変わりたいと思って過ごした事も間違いではなかった。夜更けに微睡みの淵で視たものは沈殿していた何かの残滓、あるいはこれからも引き継ぐものの欠片。糸の先にも多分カルマ。


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