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【ファンベース事例① 三菱地所株式会社編】丸の内エリアで働く人に、街をもっと好きになってもらうために。三菱地所とファンベースカンパニーが取り組む街づくり

こんにちは!ファンベースカンパニーのウェブサイトで紹介している「ファンベース事例」をnoteでもご紹介します。
初回は三菱地所株式会社による丸の内エリアでのファンベースの取り組みをご紹介します。ぜひご覧ください。


丸の内で働き、丸の内を愛するファンの声を聞きながら、丸の内の未来をつくっていきたい。日本有数のオフィス街である東京・丸の内エリア(丸の内、大手町、有楽町)の開発を長年にわたってリードしてきた三菱地所では、2021年よりファンベースプロジェクトを立ち上げ、ファンからより愛される街づくりに取り組んでいます。

ファンベースカンパニーではプロジェクトの立ち上げから伴走し、ファンベース診断を用いたファンの実態調査、ファンミーティングの実施支援、ファンのツボに基づく施策の提案など、様々な伴走支援を行ってきました。

なぜ三菱地所はファンベースに力を入れて取り組んでいるのか。取り組みを続けるなかで、どのような発見や学びがあったのか。活動の推進を担っている三菱地所エリアマネジメント企画部の川村優乃さんに話をうかがいました。聞き手はファンベースカンパニーの宮下菜穂子です。

※所属・肩書は取材当時のものです

三菱地所エリアマネジメント企画部の川村優乃さん

強い危機感を覚えた、コロナ禍による街の変化

FBC宮下:丸の内エリアにおけるファンベースの取り組みをはじめて3年目を迎えました。これまでの活動を振り返っていきたいのですが、そもそも川村さんたちがファンベースに関心をもたれたキッカケは何だったのでしょうか?

川村さん:三菱地所は創業以来100年以上に渡って丸の内の街づくりに取り組み、オフィスビルを中心とした開発を行ってきました。現在、丸の内エリアで就業する人は約28万人のうち、約17万人の方が三菱地所の所有・管理する建物で勤務されています(22年12月末時点)。

魅力的な街づくりに取り組むなかで、丸の内で勤務される方々に対して、丸の内をより愛していただけるような仕組みづくりにも注力してきました。特に近年注力しているのが、18年11月に立ち上げた三菱地所グループが運営管理等を行う丸の内エリアのビルにお勤めの方限定の会員制サイト『update! MARUNOUCHI for workers』です。

丸の内エリア内にある400店舗近い飲食店様や小売店様に協力を仰ぎ、会員向けにランチタイムのドリンクサービスや割引クーポンなどを提供しています。また、丸の内エリアの魅力を伝えるジャーナル記事やイベント情報など様々なコンテンツもご用意しています。丸の内で勤務されている方限定の会員制サイトにも関わらず、会員数は2万7000人を超えました。

update! MARUNOUCHI for workersのサイト

川村さん:こうした施策を進める一方、コロナ禍を受けた20年春の緊急事態宣言によってリモートワークの導入が広がり、オフィスワーカーにとって丸の内エリアは「週5日通う街」から「必要な時にだけ通う街」へと変化しました。今では以前のにぎわいを取り戻しつつありますが、当時は相当な危機感を覚えました。

そこで、update! MARUNOUCHI for workersをプラットフォームとして活用し、丸の内で勤務されている方々のお声を聞きながら、丸の内を「出社したくなる街」に変えるための取り組みができないかと考えたんです。

同時に、以前からファンベースの取り組みに興味を持っていて、ファンの方々と一緒に街づくりをしていきたいと考えていました。
丁寧かつ誠実にファンの方々と向き合っていきたいと考えるなかで、その領域のプロフェッショナルな会社に支援を依頼すべきと考え、ファンベースカンパニーに声がけをさせてもらいました。

ファンステージが高いファンの多さに驚き

FBC宮下:最初の取り組みとして、丸の内で働く人たちが街にどれほどの思い入れがあるかを調べるために、update! MARUNOUCHI for workers会員を対象にした「ファンベース診断」を行いました。診断結果をご覧になってみて、いかがでしたか?

川村さん:印象的だったのは、約500名の回答者のうち約半数が、「丸の内エリアについてどのように感じていますか」という質問に対して、「好き」「大好き」「『愛がある』と言えるほど大好き」と答えてくださったことです。

自分が生まれ育った街や自分が住んでいる街に愛着を抱くのはイメージできますが、仕事で訪れるオフィス街にどれほどの思い入れがあるのかは未知数でした。そのため、調査結果が出た時は、想像よりも遥かに多くて驚きました。

また、ファンの感情を測るファンステージの診断結果においても、街づくりに積極的に関わりたいという「参加」が8.9%、ともに未来をつくっていきたいという「共創」が15.2%という結果となり、街づくりに関わることに前向きであるファンの多さにも驚きました

丸の内エリアに対するファンステージの調査結果。「参加」と「共創」ステージを合わせると約25%となり、回答者の4分の1が丸の内エリアに対して高い熱量を持っていることが判明。

FBC宮下:会員組織内でのアンケートとはいえ、一番上のステージである『共創』の割合がこれほど高い調査結果は珍しいと感じました。フリーコメントもたくさん届きましたが、特に印象に残っているものはありますか?

川村さん:調査実施のタイミングが21年の夏ごろとリモートワークを推奨されていた時期だったこともあり、「はやく丸の内に行きたい」という声が多くあったのが印象的です。「出社できるようになったら、いつものレストランでランチをして、馴染みの店員さんに声かけるのを楽しみにしている」とか。
こんな風に街への想いを抱いてくださる方々が多く存在することに喜びを感じると同時に、「出社したくなる街づくりという方向性は間違っていない」と、自分たちの考えに自信を持つことができました

FBC宮下:診断後、熱量の高いファンの方々をお招きしたファンミーティングを実施しました。ファンとダイレクトに接するはじめての場だったと思いますが、いかがでしたか?

川村さん:ファンミーティングの前半では、丸の内エリアの街歩きをファンの皆さまと行い、土地や建物にまつわる様々な話をさせてもらいました。そのなかで印象的だったのが、「毎日この街に通っていて、丸の内のファンだと思って過ごしてきたけれども、知らないことがまだまだいっぱいあった。今日知ったことを職場の友人にも早速伝えたい」というコメントです。

街について学ぶことを純粋に楽しんでいただいている。そして、自分が楽しむだけでなく、学びを他の人にも共有したいと思う。ファンベース診断でも、そうしたパーソナリティをファンの方々が持っていることが傾向として表れていましたが、生の声を聞くことで実感することができました

ファンミーティングで行った、まち歩きガイドツアー

新鮮なアイデアが飛び交った共創ワークショップ

FBC宮下:その後、ファンベース診断などの結果をもとに、丸の内ファンの分析を行い、丸の内ファンに丸の内の魅力を再発見してもらう『MARUNOUCHI FAN WEEK』の企画が立ち上がりました。このイベントはファンの皆さんとワークショップを実施し、一緒にアイデアを共創するところから始まりましたね。

川村さん:そうですね。ファンベース診断において、参加や共創といったファンステージにいる方が多かったため、実際にファンの方々が活躍できる場をつくりたいと考えました。update! MARUNOUCHI for workersにて企画を一緒に考えるイベント実行委員を募集したところ、多くの方が応募してくださって本当にありがたかったです

とはいえ、ワークショップを開催するのは初だったため、ファンベースカンパニーの皆さんと模擬ワークショップを実施させていただき、リハーサルをさせていただきましたね。そうした準備のおかげで、本番はスムーズに進行することができたと思います。

FBC宮下:ワークショップでは様々なアイデアが生まれましたが、特に印象的だったことは何ですか?

川村さん:まず、参加いただいたファンの方々の熱量の高さに驚きましたね。アイデア出しの時間は、時間いっぱいアイデアを考えてくださり、その内容もバラエティに富んだもので驚きました。私たち社員と同じくらい丸の内エリアについて考えてくださっていると思ったほどです。

川村さん:特にありがたさを感じたのが、「丸の内でこんなことができたら素敵だよね」と遠慮なく提案いただいたことです。自分たちがイベントを企画する際は、どちらかといえば「できること」から考えてしまうことが多く、発想が狭まってしまいます。ファン目線の新鮮なアイデアをたくさん聞かせてもらい、とても刺激になりました。

また、「丸の内についてもっと学びたい」「丸の内を愛するファン同士で交流したい」という声が一貫して上がっていたことも印象的でした。ワークショップでいただいたアイデアを参考にしながら、MARUNOUCHI FAN WEEKの具体的な企画を立てていきましたが、学びと交流という要素は絶対に外さないように心がけていきました。

ファン自らがイベントの盛り上がりを牽引してくれた

FBC宮下:2023年2月にMARUNOUCHI FAN WEEKを5日間に渡って開催しました。どのイベントも満員御礼で盛り上がりを見せていましたが、開催してみていかがでしたか?

三菱ビルにある『Have a Nice TOKYO!』をメイン会場に、丸の内の歴史や文化などに触れる特別展示と、日替わりでセミナーやワークショップなどを実施。

川村さん:まず驚いたのが、イベントの予約の埋まりが圧倒的に早かったことです。ワークショップに参加した方々が、職場の同僚の皆さんに声をかけてくださって、イベントを盛り上げてくださりました。「自分が関わったイベントだから、最後まで見守りたい」とおっしゃってくださった方もいて、そういう気持ちが純粋に嬉しかったです。

また、イベントでは参加者同士の交流の時間を多めに設けていましたが、どのテーブルも話が盛り上がっていたことが印象的でした。丸の内ファン同士で交流したいというニーズの高さを改めて実感することができました。

FBC宮下:ファンベースカンパニーでは、MARUNOUCHI FAN WEEK全体のディレクションに加えて、最終日に行われた「丸の内をもっと楽しむためのFAN NIGHT」の運営を手伝わせていただきました。丸の内手土産を楽しみながら、丸の内の楽しみ方を語り合っていただきましたが、どのテーブルも話が盛り上がっていましたね。

川村さん:本当にそうでしたね。また、私たち自身の変化で言うと、これまでに開催した丸の内で働く人に向けたイベントでは、三菱地所は黒子的な存在として参加者の前に立たないようにしていました。

ですが、MARUNOUCHI FAN WEEKでは、三菱地所の社員がイベントの司会をつとめたり、企画者としてパネルに写真と名前を掲示したり、テーブルに入って参加者と交流したりと、参加者としてファンの前に立たせてもらいました。

自分たちの存在を表に出すことには勇気が必要でしたが、参加者の皆さんが温かく迎えて入れてくれて、本当にありがたかったです。丸の内エリアを一緒に盛り上げていく仲間として、自分たちのこともファンに知ってもらう大切さを改めて感じることができました。

街の人たちの想いを胸に、丸の内の未来を想い描く

FBC宮下:ご一緒させていただいた活動を振り返ってきましたが、ファンベースの取り組みを続けるなかで、ご自身のなかで変化が生まれたことがあれば教えていただけますか?

川村さん:ファンの方々との接し方について、自分の中での考え方は随分と変わったように感じます。当初は、丸の内を好きでいてくださる方々を「丸の内ファン」と呼んでいいものか躊躇う気持ちがありました。スポーツチームやアイドルを応援する人であれば、自分がファンであることを自覚されていると思いますが、街を対象とする場合にはどうなんだろうかと。

ですが、ファンベースカンパニーさんの皆さんから「ファンという言葉を使いましょう」「丸の内を愛している皆さんも、丸の内ファンと呼ばれると嬉しいと思いますよ」と背中を押してもらったことで、決断することができました。実際、ファンの方々とお会いすると、丸の内ファンという呼称を好意的に受け止めてくださっていると感じます。

ファンの方々と丁寧に接していきたいと思うあまり、硬くなりすぎるのも良くないですよね。コミュニケーションのひとつひとつを、ファンベースカンパニーの皆さんが細かく提案をしてくださったのは、本当にありがたかったです。

FBC宮下:ありがとうございます。最後に、ファンベースへの取り組みを今後も継続していくなかで、活動の展望や大切にしたい想いを聞かせていただけますか?

川村さん:活動の根底にあるのは、丸の内エリアで勤務される方々に「出社が楽しみ」と思ってもらえるような素敵な街を育てていきたいという想いです。これからも、丸の内の魅力を再発見していただけるような企画を実施していきたいし、丸の内という土地に根づく歴史や文化を伝えていくことも自分たちの重要な使命だと感じています。

同時に、丸の内を愛する方々の声に耳を傾けながら、街づくりをしていきたいと考えています。どうすれば一人ひとりに喜んでいただくことができるか。この街で働くことに幸せを感じていただけるか。それをしっかりと考えていきながら、丸の内の街づくりをリードしていきたいです。

今後、新たな価値創造をするために、街全体として大きく進化していかないといけない局面もあるはずです。そうした際に、街の人たちの想いを知った上で、丸の内の未来を考えていける会社でありたいです。

結局、私たちが「こういう街にしたい」と願っても、自分たちの力だけでは成し遂げることはできません。丸の内で働く方々、丸の内を一緒に盛り上げてくれる方々と手を取り合って、丸の内の未来をともに築いていきたいです。

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