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note#4 : 馬鹿は死ぬまでには治るだろう


小説を読むことをやめてはいけないと、
小さい自分がよく言っている。


今、電車の出発を待っていて、マスクからの蒸気で眠気が姿を現し始めた。


今日は8ヶ月ぶりに会う友達とご飯に行った。


だから朝からウキウキで、いつもよりメイクに気合いが入る。


その友達とは高校からの関係で、未だに自分のおすすめの本を貸し借りして、語り合うことができる素敵な関係。


家を出る直前に借りていた本を持っていかないと!と気がついて、一本遅い電車に乗ることを決意した。


会っていない間に読んだ本で、何を貸していないっけな?どれが好きそうかな?と吟味する時間がとても好きだ。


自分の好きを共有できる相手。


1年前に貸してもらって、本棚に並んでいる河野裕さんの「さよならの言い方なんて知らない」シリーズ。
おもしろすぎてページを捲る手が全く止まらなかった。ちなみに私も友達も白猫好き。


高校生のときはこの「さよなら」が「いなくなれ群青」であった。


七草の思考を読み解くのに頭をフル回転させながら、この比喩が意味がわからなかった、誰のこの行動は好きじゃなかった。とか、読んでは感想を言い合って、最終巻が出た時には嘆きあった。


河野さんの本も好きな私たちだけど、小説で最初に盛り上がったのは三秋縋さんの「三日間の幸福」だったんじゃないかと思う。


これは私の愛読書で、読書感想文に書いたり、人に貸しまくっていたせいで、もう本がくたくたに柔らかくなっている。


なかなか、三秋縋さんを知っている人には出会えなくて、その友達は貴重だった。



「いたいのいたいのとんでゆけ」
「君が電話をかけていた場所」
「僕が電話をかけていた場所」
「恋する寄生虫」
「君の話」


三秋さんが出版している本はあまり多くない。
「あおぞらとくもりぞら」とか大好きなのだが、本にはなっていないし、「1969」とか、webでしか読めない物にも手を触れている。


高校生の頃に出版された「君の話」。
私たちが共通の時間を過ごしている間に出版されたのはこれだけで、そこからもう4.5年本が出ていない。


とてつもなく恋しい。三秋さんの訳あり女とダメ男の話が読みたい。読んでいる間はたとえ風にも邪魔されたくない。


今日久しぶりに友達と会って、近況報告。


そして、本を返して、本を貸して、本をプレゼントした。


誕生日に本をプレゼントできることがとても嬉しい。文字を渡すことは、自分の心を伝えているみたいでとてもドキドキする。


本を渡してからはまた小説の話で口が止まらなくなる。


どうしても内容が思い出せない本とか、この作家さんの本はすごく読みやすいとか、この主人公の性格が好きだとか。今気になっているのはこの本だとか。


この関係はもう5年?くらい続いていて、話していると高校生に戻ったみたいな感覚。


彼女とは手紙を送り合ったりもする。


私が気まぐれに出すと、いつもお返事をくれて、手紙がポストに入っていた時は、家に入るまで我慢できなくて扉を開ける前に封を切ることもある。


SNSでの会話はあまりなくて、アナログな関係が続いている。


「大学生は自由だけど、高校生のあの輝きには勝れないね。」


20を過ぎた私達は何か変わってしまっただろうか。


大学が違うから年に何回かしか会えなくて、話題はたくさんあるはずなのに、結局小説の話ばかりしてしまう。


そんな時間が私は好きで。


大学生になって、本を読む時間は「本を読む時間」を作らないと、得られなくなってしまった。


なんだか一癖ある物語に心が惹かれてしまう私達は、何かが欠けているのだろうか。


彼女といる時間は、「今」に振り回されない時間だ。


流行も、焦りもそこにはなくて、ただ互いの好きな話をする。




「馬鹿は死ぬまで治らない」という言葉がありますが、僕はこれについてもう少し楽観的な見方をしておりまして、「馬鹿は死ぬまでには治るだろう」くらいに考えています。

「三日間の幸福」三秋縋/あとがきより






彼女はあとがきから読む派らしい。


今回貸した本はあとがきに詳細なあらすじが書いてあるから先に読むなと釘を刺した。


時代に逆行する私達は馬鹿だろうか。


馬鹿だとしても、馬鹿でいいから、デジタルから逆行して、現実から離れた世界の話を、私は彼女と、ずっと、していたいと思っている。


川村元気の「四月になれば彼女は」を貸しそびれてしまったので、できるだけ早く、また彼女に会いたい。


でも、合わない時間が、私たちの共通の好きを強くするような気もする。


最近まともに取れていなかった、"小説を"読む時間。


彼女と会うと、寝る時間、食べる時間を惜しんででも、また小説を読まなければという気持ちが駆り立てられるのです。

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