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2023年11月のロシア渡航レポート

★はじめに

2023年11月にロシアに入国して、2週間ほど滞在してから日本に帰国しました。
今回滞在したのはサンクトペテルブルクとモスクワの2都市のみ、ロシアに入国したのは2021年以来2年ぶりです。

日ロの往来が難しい状況下、短期滞在の人間だからこその視点があると思いますので、私の体験した現状を書き残しておきます。

 現在の世界は、どこで何が起こってもおかしくない状況です。
ゆえに、このレポートは決して気軽な渡航をおすすめするものではありません!!(本当に、何があってもおかしくないですよ!)

ただ、ネットにあふれているロシア関連の情報は出所が不確かなものばかりで、どれが信頼に足るのかまったくわからないので、私自身が現地で見聞きした状況をまとめておく必要があると思いました。

できる限り、事実だけを淡々とまとめたつもりです。

 2023年11月現在、最新の情報を必要としている方に届きますように。

 

 

1.治安はどうなのか?

 

モスクワやサンクトペテルブルクに関しては、2019年頃に滞在した時の治安についての印象と特に変わりません。

政治情勢の急激な変化やテロなどの可能性を抜かせば、コロナ禍前も最中も、都市部の治安はさほど悪くなかったと思っています。

もちろん地域によるとは思いますが、私がホテルを取るようなエリアでは暗くなってから一人歩きしている女性を見かけることも珍しくなく、それは2023年11月も変わりませんでした。

ただ、私が直接被害にあっていないだけで、置き引きやひったくりなどの犯罪の話は耳に入ってきます。

ニセ警官らしき人は何度か見たことがありますし、こんなところに差別が・・・と感じたこともあります。

でも、「ここは本当にヤバい」という空気は2023年11月も感じなかったので、2年前も今も、治安としてはそれほど悪くないと思います。

(私は1990年代の激動の東欧で「本当にヤバい」レベルの空気を肌で感じた経験がありまして、どうしてもその時と比較してしまうので、もしかしたら評価が甘いかもしれません。)

 

 

2.日本のパスポートで入国できるのか?

 

そもそも渡航前にヴィザを取得しなければならないので、ヴィザが取得できているなら、入国を断られることはまずないと聞きました。

ただし、日本での出国前に別室でヒアリングを受ける、ロシア入国時に係官から詰問される、持ち込み品のチェックがある、など、以前と比べると格段に厳しくなっているそうです。

運よく(?)私は今回一度も止められずに出入国しましたが、同時期に同じタイプのヴィザで入国した日本国籍者は出国時も入国時も大変だったと耳にしたので、数10分~場合によっては数時間、止められることも珍しくない状況だと思います。

 

 

3.日本のスマホやPCを持参して、ロシアでインターネットは使えるか?

 

個人的には一番これが、出発前に気になっていた点でした。

結論として、電波が場所や日によって不安定だったり、多少の不自由はあったりするものの、ひと通り使えます。

 まず、日本で契約した海外旅行用のWi-Fiルーターが使えるか?

これは、以前同様に使えます。
むしろ、昔より圏外になることが少なくなって、快適になったと感じるほどです。

今回私は安全策を取って、日本からWI-FIルーターを持参しましたが、SIMフリーを利用したい場合もあると思います。

日本でもロシア用のSIMカードが販売されていて、私も2021年以前に日本で購入していったことがありましたが、たまたまなのか、不具合の発生率が高かったんですよね。
SIMについては不具合を出発前に確認する術がないので、現地到着後にSIM販売店(大抵は空港に店舗あり)でSIMを買って、その場で接続できるか確認してもらうほうが確実だと思います。

 インターネットは以前通り使えます。
ただし、通常のインターネット接続でアクセスできないサイトは少なくありません。
そういったサイトにアクセスするには、VPNを利用して接続します。
VPN接続を使うこと自体は違法ではないそうなので、VPN接続の準備は必須と言えます。
(ちなみに、VPN接続することによって、見られなくなるサイトも存在します。使い分けが必要になってくるため、これが最初に書いた「多少の不自由」です。)

また日によっては、VPN接続しなければならないはずのサイトが、通常のインターネット接続で閲覧できたりもします。素人の外国人にはどういった基準でコントロールされているのか全くわからないので、臨機応変な対応が必須だと思います。

 以下、アプリやサイトごとの接続状況です。
あくまでも私のケースで、地域や時期によって異なる可能性は大きいので、参考までにご覧ください。

 <通常のネットでOK>

※ただし、日によってWifiの電波が悪くなるので、アクセスに長時間かかることがある。

・Whatsapp

・Gmail

・Yandex

・VK

・Discord

・Youtube (※ただし、接続までに時間がかかる)

・Workchat

・Telegram

・Duolingo(語学アプリ)

・Google検索

・Googleマップ(※公共交通機関の検索以外)

・Yahoo Japan (意外に快適)

・日本のソシャゲ(登録してあるカードで課金もOK)

 <見られたり見られなかったり。見られない場合はVPN接続すればOK>

・LINE

・Zoom

・Amazon

・X(旧Twitter)

・Googleドライブ

・TikTok

 <常にVPNを通さなければ見られない>

・Facebook(Messenger含む)

・Instagram

・Workspace

 <接続できないサイト(VPN接続した場合にどうかは未確認)>

・WeTransfer

 <VPN接続(私の場合のサーバーはドイツ)しても見られなかったもの>

・Googleマップの公共交通機関検索

・Tver

 WeTransferにアクセスできないことは、盲点でした。
ロシア在住者に対してファイルを送る時は、Googleドライブにアップロードするなど、別の手段を取るほうがよさそうです。
現地のビジネスパーソンいわく、通常はDropmefilesというファイル転送サービスを使っているとのことでした。

 

 

4.本当にロシアと海外の間のカード決済サービスは停止されているのか

 

これは本当です。(当たり前ですが)

ロシアのホテルや列車を予約する際、一応私の持っている日本のクレジットカード(VISA)での決済を試してみましたが全て使えず、結局はロシアのクレジットカードを持っている日本在住の友人に予約を頼まざるを得ませんでした。
日本で働いているロシア出身の友人も、以前は使えていたロシアの銀行で作ったクレジットカードが、今は一切使えないと言っています。

ただ、ロシアの銀行発行のクレジットカードを持っている友人が2023年10月にトルコに行った際、イスタンブールの一部の店舗ではなぜか決済ができたという話があります。
なぜか一部のサブスクだけは、国境を越えてカードからの自動引き落としが継続されている話を複数友人からも聞きました。
私が使っている某ロシア関連のサブスクも、登録してあるカードが使えなくなるということは自動的にサブスク消滅か・・・と思いきや、しっかり年会費が引き落としされました。
決済サービスが停止されているにもかかわらず、不思議な話です。

 

 

5.頼れるのは現金のみ

 

決済サービスが停止されている場合は一切カードが使えません。したがって、常に現金を持って行動する必要があります。

現金はロシア入国直後から必要になるので、入国前のどこかの空港であらかじめルーブルを入手しておくか、到着直後にロシアの空港でルーブルに換金するしかありません。

日ロの往来が少ない状況下では、円⇒ルーブルへの換金が突然受付停止!という状況も考えられるので、到着空港での円⇒ルーブルへの両替は期待せず、所持金をドルかユーロで持って行く、もしくは出発前に日本円から直接ルーブルに両替しておくほうがよいと思います。(少なくとも成田空港には、円からルーブルへの両替が可能な銀行があることを確認しました。)

今回の私は過去に両替したルーブルの残りが多少あったので、そのルーブルで空港から市内に移動してから、ユーロの現金を(空港よりレートがいい)両替所でルーブルに両替しました。

 あと現金といえば気になるのは、持ち込み&持ち出し限度額です。

入国時には私は特に何も訊かれませんでしたが、同時期にモスクワの空港から入国した人から、1000ドル以上の現金を持っていないかと税関で質問された話も聞きました。

今回のロシア滞在は、ホテル代や移動費の支払いを日本で済ませていたので、たとえ呼び止められたとしても問題ない金額しか私は所持していませんでしたが、カードが使えないなら、現金で持っていておかしくない金額だと思います。

持ち出しも低い基準を言われる可能性があるので、要注意ですね。
公式には持ち出し限度額は1万ドルとなっていたと記憶していますが、いつ違う数字を言われても不思議ではありません。

ちなみに私、VKO空港からの出国時には呼び止められまして、所持金を訊かれました。前述のとおり、呼び止められても困らない金額しか持っていなかったので訊かれて答えただけで終わりましたが、3000ドルくらいの数字を答えていたらどうなるのか、気になるところです。

 更に、現金を準備したとしても、困るのがおつりです。

前述のとおりロシアは電子決済が発達しているので、相手が釣銭を持っていないケースも大いにありえます。特に、レジが一つしかない小さなお店や公共施設では、おつりは無いと思っておくほうがいいです。
地下鉄の券売機など、100ルーブル以下しか使えない場所も多いです。
常に100ルーブル紙幣を多めに持っておいて、間違いないです。

また、少なくともモスクワやサンクトペテルブルクでは、スマホによる電子決済が当たり前になっています。
現金をまったく持たずに外出するという若者も多いです。(ここから察するに、日本ではまだまだこれからと言われているオフライン決済が、既に発達しているのではと思います。)
自動販売機では現金が使えず電子決済のみというパターンも多いので、現金の場合は窓口に並ぶしかありません。

 

 

6.物価は上がったのか?

 

定点観測していないので具体的な数字は出せませんが、ざっくりとした体感的には、2021年と比べて1~2割上がったように感じました。(少なくとも、下がっていることはないです。)
短期滞在者が一番感じる部分だと、確実に外食費は上がったなと。

ふと検索してみたロシア中銀のホームページによると、「年間インフレ率は2022年が12.0~13.0%、2023年は5.0~7.0%に減速」らしいです。

 ちなみに、2021年にモスクワの地下鉄にトロイカカード(SUICAのようなプリペイドカード)を使って1回乗ったら、42ルーブル(70円)だった記録があります。今回は54ルーブル(90円)。元が安いとはいえ、2割以上の値上げなので、結構インパクトがある金額ですね。1回券は55ルーブル⇒65ルーブルになっていました。

 ところで、Yandexタクシー(Uberのようなサービス)についてだけは、相場の値上がりを特に感じませんでした。
2021年10月のサンクトペテルブルク市内~空港ルートの支払い金額は1059ルーブル。今回は1106ルーブルで、宿泊場所が少し遠かったことを考えると同じと言ってよいレベルです。

 

 

7.モノは市場にあるのか?

 

私が食品関係の仕事なので、どうしてもそちらに目が向いてしまうのですが、少なくとも食品については、豊富にあります。

スーパーの品ぞろえは、ぱっと見は以前と変わりません。
けれどよく見ると、生産国が変わったなという商品がちらほら目に付きました。

加えて、昔はEUからの輸入に頼っていたグルメ食材を、ロシア国内で製造する会社が出てきたりしている印象です。
しかも、単なるコピー商品ではなく商材として確立されていて、なかなかのレベルのものもあります。原材料から自国で生産できる強みだと感じました。
お値段については、類似の輸入品と同等か、むしろ高いものもありました。その辺は、あえてのブランディングなのか、それとも生産効率が追い付かないのか。

 なお、制裁対象に入っていないカテゴリーのEU商品は、取引を続けている会社と撤退している会社がはっきり分かれている形でした。(いまだに棚にある商品は第三国経由の輸入?と思わなくもなかったのですが、製造日や価格設定を見た限り、直接取引している可能性が高そうです。)

 

 

8.観光客はいるのか?

 

コロナ前の2019年と比べると、激減していると思います。

モスクワもサンクトペテルブルクも、ロシア国内からの観光客は多いと聞きましたが、中国を除けば、海外からの観光客は少なそうです。

それでも、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館は相変わらず長蛇の列で、中国はもちろん東南アジアやインド、アラブからと思われるグループを多数目にしました。

 海外観光客の減少に関係して感じたのは、サービス業の現場での英語を話すスタッフ率が低くなっていることでしょうか。モスクワはまだしも、ホテル・美術館・列車を含め、今回のサンクトペテルブルクでは英語が通じるシーンがほぼありませんでした。(以前はもう少し、英語で何とかなるシーンがありました。)

 ちなみにサンクトペテルブルクの街では、日本人らしき人はまったく見ませんでした・・・と打って、2021年に一週間滞在した時も同じ感想を書いたことを思い出しました。

それくらい、日本人に会う確率は低いです。

 

 

9.非友好国となっている日本に対する風当たりはどうなのか?

 

私の行動範囲では、特に以前と変わっていないです。

わざわざ国籍を訊かれることもないですし、日本人とわかったからといって、態度を変えられたこともありません。

もともと日本人に対していい印象を持っていない人、特になんとも思っていない人、日本に興味がある人・・・・・異なった感情をもつ各人がそれぞれ、そのままのスタンスを続けていると考えてよいのではないでしょうか。

 

 ★経験談のシェア会ご案内 (12/3・東京某所にて)

以上、私自身が渡航前に知りたいと思っていた事項を、項目ごとにまとめました。

 文章だけではお伝えしにくい点もありますので、12月3日(日)14:30~16:30、東京都内にて、主に私の友人知人の地域研究者やビジネスパーソンに向けて、今回のロシア滞在経験のシェア会を実施します。当日は、現地で撮影した写真を交えて体験談をお伝えする予定です。

トーク相手にはモスクワ駐在経験をもつ国際物流業界の方をお招きしております。私の主観だけではない視点をいただけると思います。

私のロシア滞在記にご興味をお持ちの方、ご質問がある方がいらっしゃいましたら、こちらのシェア会にご参加いただけますよう、お願い申し上げます。こちらのフォームから「12月3日のシェア会参加希望」と記載してメッセージいただけましたら、折り返し、概要とお申込案内をお送りいたします。

(年末に向けて多忙なため、シェア会の参加リクエスト以外についてのメッセージには基本的には回答を控えさせていただきますが、ご容赦ください。)

 

 

★最後にひとこと


世界の人々が笑顔で暮らせる日が一日も早く訪れることを、強く願ってやみません。平和な世界が、現実に訪れますように。

(2023.11.22 - FRAN NAOKO)


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